第二十七話 緑の初級回復魔法
顔の傷痕の治療をポルポラに提案したアルクス。
果たして提案は受け入れられるのでしょうか?
どうぞお楽しみください。
「……アルクス、本気か?」
「……はい」
治療を申し出た途端に、ポルポラさんの声が低くなった……!
……怒ってるのかな……。
でももう怯えない……!
真っ直ぐにポルポラさんの顔を見つめる!
「……見ろ」
ポルポラさんが包帯を解き始めた。
少しずつポルポラさんの顔が見えてきて……。
「っ……!」
ひどい……!
赤黒くただれた皮膚が、顔の半分以上を覆っている……!
「これを治せるって言うのか?」
「……はい」
「冒険者組合の専属法術士が無理って言ったんだぞ?」
「……治します……!」
「……正直あたしはもうこの顔で生きていく覚悟は決めてる」
「……!」
そんな……!
もしポルポラさんが治療を拒否したら、私にできる事はもう……!
「でもま、あんたの成長ぶりを確かめるのも先輩の役目だよなー」
「えっ……!」
「お試しでやってみてくれ。できなかったって文句は言わないからよー」
「……はい!」
ここで期待して駄目だったら……。
ポルポラさんはそう考えたんだろう……。
それでも私の顔を立てて、駄目で元々と受け入れてくれたんだ……!
その優しさを無駄にはしない!
何が何でも治してみせる!
「じゃあ、その、そこに座ってください」
「おう! 頼むぜアルクス先生!」
「はい! ……行きます!」
ポルポラさんのただれた顔に手を当てる。
緑の初級回復魔法を使うと、ポルポラさんの身体の本来持つ姿が頭の中に流れ込んでくる。
その中で顔の部分に集中して、魔力を注ぎ続ける。
……!
手が触れてるポルポラさんの皮膚の感触が変わってきた……!
まるでかさぶたみたいに固く乾いて、あ、剥がれ落ちていく……!
「お、おい、アルクス……! 何か顔がめちゃくちゃかゆいんだが!?」
新しい皮膚が、乾いた部分を押し上げてるのを感じる!
かさぶたのところってかゆくなるから、ポルポラさんの今感じてるかゆさは相当のものだろう。
でも今できてる新しい皮膚はすごく柔らかいから、下手にかいたりしたらまた傷付いちゃうかも……!
「も、もうちょっとそのままで……! かいちゃ駄目ですよ!」
「うぅ……! か、かゆい……!」
ポルポラさんに耐えてもらっている間にも、ただれた皮膚はどんどん剥がれていく。
そして、ついに……。
「お、終わりました……」
全ての乾いた皮膚が、剥がれ落ちた……!
「お、おい、アルクス、どうなった……!? あたしの顔、どうなった……!?」
「……!」
「お、教えてくれよ!」
「……! ……!」
ポルポラさんの言葉に応えたいのに、胸が詰まって声が出ない……!
「か、鏡、なんて色気のあるもん持ってないし、あ! そうだ!」
ポルポラさんは自分の剣を手に取って、鞘から半分抜いた。
それを覗き込んだポルポラさんが絶句する……!
「あ、アルクス、お前、これ……!」
「……! ……!」
ポルポラさんの顔は、殻を剥いたゆで卵のようにつるんとしていた……!
酸でただれたところなんて、一つもない……!
「……う、うあああぁぁぁん!」
ポルポラさんが治った嬉しさと、張り詰めていた緊張が崩れた事とで、私は堪らず泣き出した。
良かった……! 本当に良かった……!
「……アルクス」
「!」
ポルポラさんが私を抱きしめる!
「あたしな、子どもが大好きなんだ……」
「……あい……!」
「いつかは結婚して自分の子どもを、なんて思ってもいたんだ……」
「……あい……」
「でもこの怪我で、そんなの無理かなって、諦め、かけてたん、だけど……!」
ポルポラさんが震えてる……!
私はその背中に手を回して、思いっきり抱きしめる……!
「あぢがどう……! あるぐず……! あだじ、あだじ……!」
「ぽるぼらざーん!」
私達は嬉し泣きをしながら、ずっとずっと抱きしめ合い続けた……。
読了ありがとうございます。
剥き立て卵肌。
次回もよろしくお願いいたします。




