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初級回復魔法しか使えないようにされた上に追放された法術士の私が、虹の聖女と呼ばれるまでの物語  作者: 衣谷強
緑の章

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第二十六話 揺れ動く覚悟

ポルポラの治療への焦りをアーテルに諌めてもらったアルクス。

気持ちも新たにポルポラの泊まる宿の部屋に向かいますが……?


どうぞお楽しみください。

「ポルポラさん……。あの、アルクスです……」

「アルクス? 開いてるから入っていいぞー」


 花の宴亭の一室。

 言われるままに扉を開くと、寛いだ格好のポルポラさんが胸当て鎧の手入れをしているのが見えた。

 部屋の中なのにまだ包帯を巻いてるのは、きっと私みたいに訪ねてきた人のためなんだろうな……。

 きゅうっとなる胸を押さえて、そのまま中に入って扉を閉める。


「どうした? 晩飯の誘いかー? 悪いけどもう食べちゃったぞー?」

「あ、それなら良かったです……」

「……?」


 手入れの手を止めて、私を見つめるポルポラさん。

 ……何て切り出したら良いんだろう……。


『顔の傷、治したくないですか?』


 ……これじゃ「いや別に?」って言われたら何も言えないな……。


『私、傷痕を治す法術を覚えたんで、試しにやってみませんか?』


 ……駄目駄目! こんな言い方したら、ポルポラさんの傷痕を実験台にするみたいじゃない!


『いやー、今日のお仕事で肩凝ってないかと思って……。今だ! 緑の初級回復魔法!』


 何考えてるの私! 不意打ちなんて最低じゃん!

 あー、何をどう言えばいいんだろう!?


「本当にどうしたー? 何か困った事があるなら相談に乗るぞー?」

「あ、えっと、その……」


 私はポルポラさんを治したい。

 冒険者仲間にいた時に何かと気にかけてくれたポルポラさん。

 ルームスに追放されて途方に暮れている私に、地図と紹介状、それに移動の馬車代まで渡してくれたポルポラさん。

 そしてウィンクトゥーラさんの前でだけ、子どものように泣いたポルポラさん。

 ……でもそれは私の気持ちだ。

 ポルポラさんの気持ちはわからない。

 もし昨日泣いた事で傷痕の事を吹っ切っていたら?

 逆に今平気な顔をしていても、本当はすごく傷付いていて、話題にされるだけでも辛かったとしたら?

 ……救護院での治療は、お願いされてするものだから考えた事もなかった……、

 自分から人を治療しようとするって、すごく難しい……!


「アルクス」

「は、はいっ!?」


 肩に手を置かれて顔を上げると、包帯の間から微笑みかけてくれるポルポラさんの顔が見えた。


「何か変わったなー」

「え……?」

「うまく言えないけど、あの馬鹿のところで言われるまま法術を使ってた頃とは何か違う」

「……」

「アルクスは優しいから、冒険者としてよりトゥーラねぇのところの方が頑張れると思ってたけど、あたしの勘は間違ってなかったなー」

「……ポルポラさん……!」


 にかっと笑うポルポラさん。

 ……何を疑っていたんだろう……。

 わざと傷付けるつもりでもなければ、ポルポラさんは受け止めてくれる。

 私が何を言おうとしてるかわからないはずなのに、口ごもる私が話しやすいように、優しい言葉をかけてくれるんだから……。


「……あの、私、ここに来たおかげで、初級回復魔法に別の効果を付与する事ができるようになりました……」

「へぇ! 凄いじゃないか! どんな効果なんだ?」

「『解毒』と『病気治癒』と『体力回復』と……」

「おいおい凄いな! 法術ってそんな事もできるんだな!」

「それと、傷痕の治療……」

「……あ……?」

「……ポルポラさん、私にその顔の傷痕、治させてもらえませんか……?」

読了ありがとうございます。


ポルポラの返事や如何に。


次回もよろしくお願いいたします。

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