第二十三話 格好いい大人
ルームスの冒険者仲間にいた頃世話になった女剣士ポルポラが、アルクスとウィンクトゥーラの元にやってきました。
しかしその顔には痛々しい包帯が巻かれていて……。
どうぞお楽しみください。
「あの、お茶どうぞ……」
「ありがとうアルクスちゃん……」
「……ありがとな」
「すみません、私まで……」
とりあえず救護院の休憩室で、ウィンクトゥーラさん、ポルポラさん、カルクルムさんとの四人で話す事にした。
私が出したお茶を一口すすると、ウィンクトゥーラさんが口を開いた。
「……その、ポルポラ……。その顔の包帯はどうしたの……?」
「これか? 酸蜥蜴にやられてさー。法術で治してもらったんだけど痕が残ったから、一応巻いてるんだー」
「酸蜥蜴……!」
絶句するウィンクトゥーラさんとは対照的に、ポルポラさんは楽しそうな声をかける。
「で、トゥーラ姉、その人を紹介してくれよー」
「えっ? あ、えっと、この人はカルクルム・ロギスモスさん。会計士をされていて、この救護院のお金関係を全部賄っていて」
「そういう事じゃなくってー、トゥーラ姉との関係を聞きたいんだってばー」
「……え、その、わ、私の……、だ、大事な人、よ……」
「ウィンクトゥーラさん……!」
「ひゅー! トゥーラ姉にも春が来たー!」
照れるウィンクトゥーラさんとカルクルムさん。
喜ぶポルポラさん。
良かった……。
最初は包帯姿に驚いたけど、いつもの明るいポルポラさんだ。
私はルームスに追放されただけで絶望していたのに、ポルポラさんは強いなぁ……。
「……カルクルムさん……」
「……えぇ……」
ん? 何か二人が頷き合った。
真剣な顔だったけど、すぐに普通の顔に戻った。
「そうだアルクスさん。ちょっと買い物に付き合ってもらえないかな? 救護院で必要なものを買い足したいんだ」
「え? あ、はい、わかりました……」
頷きながら、心の中では首をひねる。
そんなのあったかな?
まぁ役に立てるなら何でもいいかな。
「……では」
「……えぇ、ありがとう……」
「じゃーなアルクスー!」
「はい! また是非!」
「カルクルムさーん! トゥーラ姉奥手だから、がんがん行っちゃってなー!」
「な、何を言うのポルポラ!」
「あはは……。努力するよ……」
別れの挨拶を済ませると、カルクルムさんに続いて部屋を出た。
「で、カルクルムさん、何を買うんです?」
「しっ……」
人差し指を口に当てるカルクルムさん。
え、何?
じっと黙って、扉を見つめてる……?
……!
「ポルポラさん……!」
泣いてる……!
押し殺すように、そのうち大声で……!
まるで子どものように、声を上げて泣くポルポラさん……!
……何が『いつもの明るいポルポラさん』だよ……!
傷付いて、辛くて、でも我慢して、お姉さんみたいに思ってるウィンクトゥーラさんを頼りにここまで来たんだ……!
そして私達がいたら泣けないのをわかって、カルクルムさんは……!
許せない……!
ポルポラさんを傷付けた酸蜥蜴とルームス……!
何よりポルポラさんの辛さに気付けない、自分の馬鹿さ加減が……!
「!」
頭に手が置かれる!
見上げるとカルクルムさんが、優しい、でも悲しい笑顔を浮かべていた。
「……アルクスさん。あなたの怒りは正しい。でも今は怒りではなく、優しさと思いやりを胸に、ポルポラさんに接してあげてください」
「カルクルムさん……」
「私は察する事しかできません。ですがアルクスさんなら、ポルポラさんの心に寄り添えるんじゃないかと思うんです」
「……心に……」
うん! そうだ!
怒るのはいつでもできる!
今はポルポラさんの元気のために頑張る時だ!
先生に相談したら、何かいい方法考えてくれないかな!?
「ありがとうございます、カルクルムさん。私、ポルポラさんのためにできる事探してみます」
小さい声で、でも強くそう言うと、カルクルムさんの笑顔から悲しさが消えた。
「やはりアルクスさんに聞いてもらって良かった。でもウィンクトゥーラさんもポルポラさんも、アルクスさんに知られる事は望んでないと思うので、それとなくお願いします」
「わかりました」
カルクルムさんの人差し指を当てた小声に、同じく人差し指でこっそり答えると、私達は救護院から出た。
ポルポラさんの辛さを一人で受け止めたウィンクトゥーラさん。
それをわかっていながら私に教えてくれたカルクルムさん。
私もこの人達みたいな格好いい大人になりたいな……。
そうだ! それにはまず頼まれた事をばっちりこなしていく事から頑張ろう!
「で、カルクルムさん、何を買うんですか!? 荷物持ち頑張りますよ!」
「……アルクスさん、あれはあの部屋から出るための方便です……」
「ぴっ……!」
「ふふっ……。その純粋さがきっとポルポラさんの助けになりますよ」
やだまた恥ずかしい……!
格好いい大人って難しいなぁ……。
読了ありがとうございます。
さ ぁ 修 行 の 時 間 だ 。
次回もよろしくお願いいたします。




