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初級回復魔法しか使えないようにされた上に追放された法術士の私が、虹の聖女と呼ばれるまでの物語  作者: 衣谷強
橙の章

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第二十話 決戦のアウラン食堂

いよいよカルクルムとウィンクトゥーラの食事会当日。

微妙な関係に気を遣いながら同席するアルクスとアーテル。

二人には何やら秘策があるようですが……?


どうぞお楽しみください。

「いらっしゃい! 席ご用意できてますよ!」

「……あの、本日はよろしくお願いいたします……」

「あいよ! ウィンクトゥーラさんには町の皆が世話になってますからね! 今日は腕によりをかけますよ!」

「……ありがとうございます」


 いよいよウィンクトゥーラさんとカルクルムさんのお食事会だ!

 ウィンクトゥーラさんは来る道すがらずっと無言だったけど、女将さんの言葉でちょっと笑顔になった!

 流石女将さん!

 私も頑張らないと!


「ウィンクトゥーラさん! どんなご飯が出てくるか楽しみですね!」

「え? えぇ、そうね」

「アルクス。女将さんの本気料理がどんなに素敵に見えても、持って帰って家宝にしようとするなよ?」

「もう! そんな訳ないじゃないですか!」

「うふふ、仲が良いのね」


 よし! ウィンクトゥーラさんが笑った!

 先生との打ち合わせ通り!


『いいか? 院長さんは今回の食事会に不安を抱いてる。お前や俺を誘ったり、馴染みの店を希望したのはその現れだ。だから俺達は普通の食事会を装う』

『ど、どういう事ですか?』

『会計士はこの食事会で院長さんとお近づきになりたいと思っている。しかし院長さんはそこまでの心の準備はない』

『……そうなんですか? ウィンクトゥーラさんもカルクルムさんの事、嫌いじゃないと思いますけど』

『正にそれだ。嫌いじゃない。だが恋人になるまでの覚悟はない。……そうだな。例えるなら急坂のそり滑り。楽しそうだが、怖さが先に立つ感じだ』

『あー、何かわかる気がします』

『だから、「仲のいい四人での楽しいお食事会」という雰囲気を演出する。そうすれば、院長さんと会計士の間はゆっくり、だが確実に縮まるだろう』

『わかりました! で、どんな感じにしたらいいんですか?』

『そうだな……』


 と検討を重ねた結果、先生と私の他愛のない話で場を和ませようという事になった。

 幸いカルクルムさんはまだ来てない。

 仕事が忙しいのだろう。

 今のうちにウィンクトゥーラさんに、緊張を解いてもらわないと。


「院長さん、知ってます? こいつ鶏肉の一枚焼きを食べ終わった後に、天を仰いで涙流してたの」


 せ、先生! 何でそんな話を!

 ……わ、わかってます! 和ませるためですね!


「しょ、しょうがないじゃないですか! 美味しかったんですから!」

「ふふふ、そこまで喜んでもらえたら、鶏もきっと本望ね」

「こいつにいつかいい肉を食べさせてみようと思ってるんですよー。どんな反応するかなー」

「先生! 人をおもちゃみたいに言うのやめてください!」

「ふふっ、きっと幸せそうな顔をするんでしょうね」


 私の扱いに若干の不満はあるものの、ウィンクトゥーラさんはいつもの笑顔になっている。

 これならカルクルムさんが来ても、楽しい食事会になるはず……!


「そうだ。アルクスちゃんはどうやって『病気治癒』や『体力回復』の法術を使えるようになったの?」

「あ、それは先生に、初級回復魔法に色をつける感覚で効果付与を教わったからです」

「魔法に色……?」

「はい! 『解毒』と『病気治癒』は水の青、『体力回復』は暖かさの橙って感じです」

「……」


 あれ? 何かウィンクトゥーラさんの雰囲気が真面目な感じに……。


「……あの、アーテルさん。アルクスちゃんのように、私も回復魔法に別の効果を付与する事はできるのでしょうか?」

「いやー、付与自体はできると思いますが、『専魔の腕輪』なしでは十分な効果は得られないでしょうねー」

「そうなのですね……。もし覚えられたら、もっと人の役に立てると思ったのですけれど……」


 む! 何か真面目な空気!

 これは何とかしないと!


「やめた方がいいですよ! 冷たい川にずっと手を浸したり、冷たくなっていく皮袋を持たせられたりで大変ですから!」

「……アルクスお前、教えてもらってその態度はどうなんだ?」

「大変だったのは事実ですぅー」

「うふふ、本当にアーテルさんが来てくれて良かったです。こんな元気なアルクスちゃんが見られるなんて……」

「お前元気ない時とかあるのか? 想像できないな」

「先生ひどーい!」

「うふふ……」


 よし、いい感じ!

 先生も小さく頷いてる!


「いらっしゃいませ! あ、カルクルムさん!」

「!」


 ……あ、ウィンクトゥーラさんの顔が強張った……。


「いやぁどうも遅くなって申し訳ない! 仕事の引き継ぎが長引いてしまって……!」

「お、お疲れ様です! 待ってたんですよ! ね! ウィンクトゥーラさん!」

「……はい……」

「……あ、その、すみません……」


 しまった間違えた!

 楽しみにしてました感を出すつもりが、ウィンクトゥーラさんの表情が硬いから責めてるみたいになっちゃった!


「ま、とりあえずこちらに座ってくださーい」

「あ、えっとあなたがアーテルさん……?」

「はい。よろしくお願いしまーす」


 流石先生!

 さらっとウィンクトゥーラさんの前の席を勧める!

 おずおずと座るカルクルムさん。


「……」

「……」


 流れる沈黙!

 あ! 先生が立ち上がった!


「女将さーん。全員揃ったのでお料理始めてくださーい」

「あいよー!」

「ではでは今日は楽しくまいりましょー」

「はーい!」

「……はい」

「……よろしくお願いいたします……」


 ど、どうしようこの空気!

 さっきまでの和やかさ、帰って来て!

 いや! まだ慌てる必要はない!

 先生ならきっと何とかしてくれる!

 ? 先生が唇だけ動かしてる……?

 ……!


『む・り』


 いやぁ! 諦めないで先生ー!

読了ありがとうございます。


まだあわわわわわわわわわわ


次回もよろしくお願いいたします。

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