第二話 仮面の人との出会い
続けて第二話です。
追放された法術士アルクス。
希望は絶たれたかに見えましたが……?
どうぞお楽しみください。
「はぁ……」
思わず溜息が溢れる。
ルームス様に仲間から外されてから一ヶ月。
出際にポルポラさんから渡された救護院での仕事で何とか食い繋いではいるけど、それも長くは続きそうにない。
そりゃ擦り傷や切り傷、ちょっとした打ち身なんて、救護院に来るまでもないもんね……。
結果として私の仕事は、子どもやお年寄りのちょっとした怪我くらい。
他の仕事も考えないと駄目かなぁ……。
「お、おい君!」
「はい?」
男の人の声に振り返ると、
「!?」
真っ黒い人がいた。
髪も目も黒。
服も外套も黒。
そして顔には口元以外を覆う白い仮面。
……怪しい人かな……。
「その腕輪、『専魔の腕輪』だよな!」
「え? あ、はい……」
ぐぅっと気持ちが重くなる。
ルームス様に騙されてつけさせられた腕輪。
初級回復魔法しか使えなくさせられた上に、外すと魔法が一切使えなくなるという呪いの魔道具。
この人、一目でわかったって事は魔道具士なのかな。
呪いの解き方とか知ってたら……。
「いやー! 今時こんな修行をしてる子がいるとはな! うん、素晴らしい!」
「は?」
修行って何?
つけてれば初級回復魔法だけ。
外せば魔法を使えなくなる。
こんな終わってる状況で何が修行だって言うの?
やっぱりちゃんとは知らないのかな……。
「……あの、修行って何の事ですか……?」
「え? だって初級魔法をきちんと習得するためにつけてるんだろ? ともすれば若い人って基礎を疎かにしがちだけど、一つをじっくり覚えるのは大切で」
「そうじゃなくて! 呪いの魔道具で何が修行だって言うんですか!」
「呪いの魔道具!? 何の事だ!?」
「この『専魔の腕輪』ですよ! 初級魔法しか使えない上に、外したら魔法そのものが使えなくなるんですよ!? 呪い以外の何だって言うんですか!」
「はぁ!? 何!? そんな風に伝わってるの!? えぇ……、がっかりだわ……」
しゅんとなる男の人。
仮面で表情は見えないけど、落ち込んでいるのはわかる。
でも、そんな事より!
「あ、あの、この腕輪の事、知ってるんですか?」
「あぁ、まぁな。それは呪いの魔道具なんかじゃなくて、魔法初心者が魔法を使う感覚に慣れるための、いわば矯正具なんだ」
「じゃ、じゃあ外せるんですか!?」
「勿論だ。ただそいつは外から魔力を取り込む能力もあるから、外した直後は多少感覚が混乱するとは思うけどね」
「……!」
外せるんだ!
そうしたら私、他にも法術を学んで、人の役に立てる人になれる……!
「今度は俺から質問。呪いの魔道具と思ってた物、何でつけてるの?」
「あの、それは……」
少し恥ずかしい気持ちがあったけれど、私はこれまでの事を話す事にした。
「えっと、話せば長いんですけど……」
「長くなる? じゃあそこらの喫茶店にでも入ろうか」
「え、あ、はい……」
こうして私は、仮面を被った黒ずくめの男の人と、人生初めての喫茶店に入る事になったのだった……。
読了ありがとうございます。
ここはもう一話ないとすっきりしませんね。
わかりました。
もう一話いっておきましょう。
どうぞお楽しみください。