第十九話 反抗と反省と
ウィンクトゥーラとカルクルムがうまく行くようにと暗躍するアルクス。
それを咎めるアーテルの真意は?
どうぞお楽しみください。
「な、何ですか先生!?」
頭を掴まれ抗議の声を上げる私に、先生は押し殺したような声で詰め寄る!
「俺は言ったよな? 院長さんと会計士の事で余計な事はするなと」
「し、してませんよー」
「目を逸らすのは自白も同じだぞ? ……まぁ、院長さんの様子からして、そこまで攻めた事はしていないとは思うが……」
「そ、そうですよ! 好きなお料理とか、嬉しい贈り物とかを聞いたくらいで……!」
「……やっぱり余計な事してるんじゃないか」
「しまった!」
誘導尋問なんてずるい!
「……で、それを会計士の男に教えたらうまく行く、とか思ってるんだろ?」
「先生すごい! 何でわかったんですか!?」
私の驚きに、先生は深く溜息をついて、私の頭から手を離した。
「あのなぁ、人間ってのは面倒くさいもんでな、『やれ』と言われるとやりたくなくなるもんだ」
「えっ!?」
「子どもの頃を思い返してみろ。家の手伝いとかを自分からするのはいいけど、命令されてだと嫌だったりしなかったか?」
「た、確かに……」
「お前が院長さんを応援したい気持ちはわかるが、それを『恋人になれ』という圧力だと感じたら、この話自体が駄目になるかもしれないんだぞ?」
「あ……!」
「ただでさえ院長さんは迷ってるはずだ。立場とか色々あるからな。だから普段通りにしておけ。何か相談されたりしたら、その時に親身に聞いてやれば良い」
「……すみません……」
……恥ずかしい。
勝手に『先生に女心はわからないだろう』なんて思い込んで、余計な事をしようとしていたなんて……。
先生が止めてくれなかったら、ウィンクトゥーラさんとカルクルムさんの関係を駄目にするところだった……。
「……ま、俺も久々に関わる事になった恋愛話に冷静さを失ってた。だからお前に頭ごなしに『余計な事をするな』と言ってしまった。すまない」
「え……」
「理由を言われず禁止されたら、むしろしたくなる心理に思い至らなかった。だから今回はどっちにも落ち度があったって事で勘弁してくれ」
「……そんな……。私こそ言われた事に逆らっちゃってすみません……」
「ま、とりあえず今のところ院長さんに変な感じはなかったから、これから気を付ければいいさ。それより好きな料理とか嬉しい贈り物って何だった?」
やっぱり先生は先生だ。
反省しなきゃいけない事や、次はこうしたらいいって教えてくれる。
そしていつもの明るい感じに戻ってくれる。
落ち込んでる場合じゃないよね!
「えっと、好きな食べ物は野菜を煮込んだスープで、贈り物は私からもらえるものなら何でも嬉しいから、手巾でいいって言われました!」
「……そっかぁ……。良い人だな、院長さん……」
「はい!」
「……じゃあ会計士の人が来たら、それとなく教えてあげるといいかもな……。お店選びの参考に、いや、うーん……、いや、知らないよりは良いだろうから……」
「わかりました!」
その後日課の魔力と腕輪の確認をして、先生は帰って行った。
私も反省を胸に、明日からも頑張ろう!
数日後に生き生きした様子でやって来たカルクルムさんに、ウィンクトゥーラさんから聞いた情報を伝えた。
お食事にはウィンクトゥーラさんのお願いで、私と先生も一緒に行く事も話した。
そうしたら、
「……あぁ、そうですか……。わかりました……。よろしくお願いいたします……」
と何だか落ち込んだ感じになった。
……やっぱり二人で行きたかったよね……。
ごめんなさい……。
でもその後カルクルムさんは気を取り直して、ウィンクトゥーラさんと相談して、お食事会の日にちは決まった。
お店はウィンクトゥーラさんがアウラン食堂にしたいと言った。
カルクルムさんが少し考えた後に了承したら、何だかほっとした顔をしていた。
高級なスープを食べてみたかったけど、ウィンクトゥーラさんとカルクルムさんのためのお食事会だから、これでいいよね。
カルクルムさんが暗い顔で、
「……いや、二人きりでなくても、大衆食堂でも、ご一緒してもらえるだけありがたいと思わないと……」
と独り言を言いながら帰って行ったけど、大丈夫かな……?
私はその日の帰りに先生に日にちと場所を伝えて、下宿に戻ってから久しぶりにお祈りをした。
どうかウィンクトゥーラさんとカルクルムさんがうまく行きますように……。
読了ありがとうございます。
やれと言われるとやりたくなくなるのが人の常。
あぁ、「お前ら付き合っちゃえよ」に砕かれた恋心はいくつあるのでしょうね……。
次回もよろしくお願いいたします。




