第十七話 教育的指導
橙の初級回復魔法でカルクルムを元気にしたアルクス。
その勢いでカルクルムが誘ったウィンクトゥーラへの食事の誘いに、乞われるまま承諾してしまいましたが……?
どうぞお楽しみください。
「先生、どうしたんですか?」
「いいから早くこっちに来い」
救護院から足早に出た先生は、私を急かすように言いながら先を急ぐ。
どうしたんだろう?
あ、止まった。
……空を仰いで何かを考えてる……。
「あー、その、何と言うか……、お前、さっきの会計士の人が誘った院長さんの食事……、そこに一緒に行くって事を、その、どう思ってる?」
「……? すごく嬉しいなって思ってます!」
「……はぁ……」
すごくがっかりした感じの溜息をつかれた!
私何かした!?
「お前もうちょっと人の心の機微を……。いや、今回に関してはそれが良かったのかもしれないけど……」
? ? ?
何だかよくわからない。
わからないけど勝手にがっかりされるのは嫌だ!
さっきの修行の時もそう!
先生は変な隠し事をするところがあるの、よくないと思う!
修行の目的があるならこう!
私が何か間違っているならこう!
そうやってちゃんと言ってほしい!
「先生!」
「な、何だ? 急にでかい声出して……」
「修行の時もそうですけど、一人だけ知ってる感じで誤魔化されるの嫌です! 私が何か間違ってるなら、ちゃんと話してください!」
「……」
あれ、黙っちゃった。
そんなに私の間違いって深刻なのかな……。
「あー、えっと、院長さんとさっき出て行った会計士の男の関係をどう思う?」
「どう思う……?」
……何を聞かれてるのかわからない。
ウィンクトゥーラさんは、この町の救護院をまとめていて、骨折とかを治せる中級回復魔法を使えるすごい人。
カルクルムさんは、幾つもの救護院がお金が足りなくて閉鎖しそうになるのを、無駄をなくしたり治療費をちゃんと設定したりして助けてきたすごい人。
どっちも尊敬してる人だけど……。
「……俺の聞き方が悪かった。……いや、悪くないと思うんだけど……」
「何なんですか? はっきり言ってください!」
「……じゃあ言うけど……」
いつも飄々としている先生が、やけに歯切れが悪い。
何をそんなに言いにくいと思っているのかは知らないけど、ちゃんと話してほしい。
「院長さんと会計士が、お互い好きってわかってるか?」
「……え?」
ウィンクトゥーラさんとカルクルムさんが、お互いを、好き!?
それって恋人って事!?
「え!? あ、あのお二人って恋人だったんですか!?」
「だー! 違う違う! ただ今からの流れによっては、そうなるかも知れないって話だよ!」
「えぇー!?」
驚いたけど嬉しい!
二人とも素敵な人だから、幸せになってほしいし!
「わー、そうだったんですね……。お二人とも仕事命って感じだったから嬉しいです!」
「……で、話は戻るんだが、その二人の食事の場にお前がいる事に何か思うところはないか?」
「え? ……あ! 私もしかしてお邪魔でした!?」
「良かった……。伝わった……」
わ、わ、わ! どうしよう!
二人の邪魔なんかしたくないのに!
「あの、今からでも都合が悪くなったって言って、お断りしてきましょうか!?」
「いや、院長さんとしては、男と二人きりの食事という場面に慣れていないようでな。あのままだとお誘い自体を断りかねない」
「え、それじゃどうしたら……」
どうしていいかわからない私の頭を、先生がぽんぽんと叩く。
「だから俺も同席する事にしたんだよ。必要な時は手助けしつつ、二人の会話が軌道に乗ってきたらうまく二人だけにできるようにな」
「お、おおー! 先生すごい! 頼りになります!」
「……あんまりこういうのに首突っ込みたくはないんだけどな……」
溜息をつく先生。
まだ何か心配な事でもあるのかな?
でも私に気付けない事を色々気付いて教えてくれる先生なら、きっと大丈夫だよね!
「先生! 私頑張ります!」
「頑張るな頑張るな。二人のタイミングがあるから、基本見守るだけだ。本当に余計な事をするなよ? 何かしたいと思ったら俺に相談しろよ? いいな?」
むー! また私を子ども扱いしてー!
私だって故郷で好きになった男の子くらいいるんですからねー!
先生こそそんな仮面してて、女心がわかるとは思えないんですけど!
よーし! 先生に私が大人の女ってところを見せてあげましょう!
読了ありがとうございます。
ポンコツとチョロイン。
これには先生も苦笑い。
さて、完全にフラグにしか思えないアルクスの決意がどんな結果をもたらすのか?
次回もよろしくお願いいたします。




