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初級回復魔法しか使えないようにされた上に追放された法術士の私が、虹の聖女と呼ばれるまでの物語  作者: 衣谷強
橙の章

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第十六話 高まる力は未来を示す

いよいよカルクルムに注がれる橙の初級回復魔法。

果たしてその結果は……?


どうぞお楽しみください。

「行きます!」


 橙の初級回復魔法をゆっくりと注ぎ込む。

 わ、こうして触れると、カルクルムさんの身体に体力がほとんどないのがわかる。

 こんなんじゃ倒れちゃうよ……。

 よーし! どんどん注いじゃおう!


「おぉ、暖かい力が満ちていきます……!」


 修行の時とは違って、『専魔の腕輪』がどんどん集めてくれるので、遠慮なく魔力を使える。

 でもやり過ぎも良くなさそうだから、八分目くらいにしておこうかな。


「……ふぅ、どうですか?」

「こんなに身体が充実しているのは何年振りでしょう……。眠気も倦怠感もすっかりなくなっています……!」


 良かった! 元気になった!

 顔色も良くなって肌もつやつや!

 目の下の隈もばっちり消えた!


「ありがとうございますアルクスさん! これで仕事がはかどります!」

「え……」


 げ、元気になったのはいいけど、まだ働くの?

 確かに結構送り込んだけど、これじゃあいつまで経ってもカルクルムさんは働き続けないといけなくなるんじゃ……。

 むしろウィンクトゥーラさんみたいに、少し休ませてあげる方が優しかったのかも……。


「これまでは仕事を終えたら何もできず、ただ眠るだけでした。しかし今の体力なら、仕事後に後輩への引き継ぎができます!」

「え、引き継ぎ?」

「えぇ! それが完了すれば、今まで一人でこなさなければならなかった仕事を分担できます! 何年かぶりにまとめて休暇を取って、旅行にでも行きましょうか!」

「……!」


 良かった……。

 ただ働くためじゃなくて、より幸せになる助けができた……!

 橙の初級回復魔法、すごい!


「カルクルムさん、もし疲れたらまた来てくださいね!」

「えぇ! 勿論ですアルクスさん! あ、もし後輩や同業者で疲れた者がいたらお願いしてもよろしいですか?」

「はい! 是非!」


 青と橙。

 この初級回復魔法で、沢山の人を幸せにできる未来が見えた気がした。

 さぁ、明日からも頑張ろう!

 ん? カルクルムさんがウィンクトゥーラさんの手を握った。


「ウィンクトゥーラさん、ありがとうございます!」

「え、わ、私は何も……。頑張ったのはアルクスちゃんで……」

「いえ、私がここに立ち寄るたびに、食事や休憩を勧めてくださいました。それがなければ私はこの奇跡に出会えるまで、立っている事はできなかったでしょう!」

「い、いえ、そんな、カルクルムさんにはいつもお世話になっていますし……」

「後輩への引き継ぎがひと段落しましたら、必ずお礼に伺います! よろしければお食事でも!」

「え、あ、はぁ……!」

「それでは失礼します!」

「お、お気を付けて……」


 ウィンクトゥーラさんが目を白黒させている間に、まるで十歳は若返ったようなカルクルムさんは、元気よく救護院を出て行った。

 ふえー、すごいなぁ橙の初級回復魔法の効果……。


「ね、ねぇ、アルクスちゃん……」

「はい?」


 どうしたんだろうウィンクトゥーラさん。

 顔が真っ赤。


「あ、あのね? カルクルムさんが言っていたお礼のお食事なのだけど、一緒に来てくれないかしら……」

「え、いいんですか!?」

「も、勿論よ……。だってアルクスちゃんの法術で元気になったわけだし……」


 嬉しい!

 ご飯代が一回浮く!

 しかも普段食べられないようなご馳走が出るかも!

 何て言ったってお礼だもんね!


「あぁ、どうしましょう……。生涯を神に捧げると誓ったのに……。しかし神は『人が愛する者を得て愛を与え合う事は我が喜びである』と仰っていますし……」

「……?」


 ウィンクトゥーラさんが頬っぺたを押さえておろおろしてる……。

 こんなウィンクトゥーラさん、初めて見るなぁ……。


「よう。随分元気な眼鏡の人が出て行ったけど、橙の初級回復魔法は上手く行ったみたいだな」

「あ、先生! はい! ばっちりです!」


 んもう! 患者さんがびっくりするから外で待っててくださいって言ったのに!

 でもいいや! 今は橙の初級回復魔法の成功とご馳走への期待で嬉しいから!


「カルクルムさんっていう会計士の方がすごくお疲れだったので、ウィンクトゥーラさんの勧めで使ってみました!」

「ほう、それが今出て行った人か」

「はい! 元気になったから後輩の人に引き継ぎをして、負担が減らせるって大喜びでした!」

「そりゃ良かった」

「それで、今まで食事とか休憩とかをさせてくれていたウィンクトゥーラさんに、お礼の食事をご馳走したいって言って!」

「ひゅう! いいねいいね! そういう話大好きだぞ!」

「で! 私も一緒に行く事になりました!」

「えっ」


 あれ? 何か急に先生の盛り上がりが消えた。


「え、いや、お前、それは駄目だろ……」

「え? 何でですか? ウィンクトゥーラさんは私の法術で元気になったんだから、一緒に行こうって言ってくれたんですよ?」

「いやだから……」

「あ、あの!」


 わ! ウィンクトゥーラさんが聞いた事のない大きな声を出した!


「……あの、よろしければ……、アーテルさんも、どうぞ……」

「え、いや、しかし俺こそお邪魔で……」

「お願いします……!」

「……」


 先生、何を悩んでいるんだろう……。

 あ、溜息ついた。


「……わかりました。ただ俺とアルクスの分は俺が出しますから……」

「……すみません……」


 え? え? え?

 何が何だかわからないけど、先生も入れて四人でご飯に行く事になった!

 楽しみだなぁ!

読了ありがとうございます。


最初は服もちぎれるほどのムキムキにしてしまおうかとも思ったのですが、多分皆さん想像されているだろうなぁと思ってやめました。

結果としてアルクスがポンコツになったけど、オチのためだからね。仕方ないね。


次話もよろしくお願いいたします。

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― 新着の感想 ―
[一言] ふたりは神職者 <i708344|34709> ウサギ年のバニーガールは違和感ない場所で <i708345|34709>
[一言] 実はちょろいんウィンクトゥーラさん <i708332|34709>
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