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初級回復魔法しか使えないようにされた上に追放された法術士の私が、虹の聖女と呼ばれるまでの物語  作者: 衣谷強
橙の章

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第十三話 温もりを絶やさずに

新章開幕!

と言っても翌日の話ですが。

新たな修行。

アルクスを待ち受けるものとは……?


どうぞお楽しみください。

「おはようアルクス。早かったな」

「……おはようございます……」

「じゃあこれから修行を始めるぞ」

「……よろしくお願いいたします……」

「どうした? 元気ないな。具合悪いなら次の休みでもいいぞ?」

「……いえ、頑張ります……」


 そう言いながら、私の目は先生の横の焚き火と、その上の鍋から目が離せない。

 前の時はなかったのに!

 今度は「全身で川に浸かれ」とか言われるのかな!?

 それとも逆に熱湯責め!?

 「火傷した身体を川で冷やせ」とか!?

 怖いよー!


「ちょっと待ってろよ……。うん、いい温度だ」


 え、先生が鍋に手を入れてる?

 熱湯じゃないのかな……。

 ちょっと安心……。


「じゃあこれ持っててくれ」

「は、はい」


 ……皮袋?

 枕くらいの大きさだ。

 これ何の修行……?


「今からそこにこのお湯を注ぐから、しっかり持っておけよ」

「は、はい!」


 ますますわからない。

 お湯を入れた皮袋って、ただあったかいだけの気が……。

 いや、先生の事だからきっと意味がある修行なんだ!

 しっかりと皮袋を持って、落とさないように構える。

 ……う、結構重い。

 だけどあったかい……。


「……よーし。じゃあ口を縛って、それを抱えておけよ。座ってる方がやりやすいかもな」

「わ、わかりました」


 ……。

 あったかーい……。

 え、普通に気持ちいいんだけど!?

 これ本当に修行……?


「あの、先生」

「皮袋に集中しろー」

「は、はい……」


 ……よくわからない。

 あったかいのと、柔らかいのと、ちゃぽちゃぽしてる事……?

 集中と言われても、それくらいしかわからないけど……。


「……」

「……」


 何か言ってくれるかと先生に目をやるけど、座ったまま微動だにしない。

 ……あれ寝てない?

 仮面を被ってるからよくわからないけど、起きてたらちょっとくらい動かない?

 むー! 私は真面目にやっているのにー!


「……!」


 先生は昨日「準備があるからあまり早くなくていい」って言ってたよね。

 って事は、朝早くから色々準備してくれていたって事じゃないかな?

 なら眠くなっても仕方ないよね。

 それに見てなくても私がちゃんとやるって信頼の証なのかもしれないし!

 よーし、集中集中!

 ……って、あ、お湯が冷めてきてるなぁ。

 段々と皮袋がぬるくなってきた。

 ……うーん、お湯を入れ直したい……。

 少しずつ私の体温より冷たくなって、今までのぽかぽかが取られていく……!

 もー! 本当にこの修行何なのよー!


「どうだ?」

「ふぇっ!?」

「身体から温度が流れ出ていく感覚、感じられたか?」

「え、は、はい!」


 やっぱりこれが修行だったんだ!

 でも何の修行なんだろう……。


「その感覚で初級回復魔法を使ってみろ」

「は、はい!」


 身体から温度が出る感覚……?

 あったかいものが流れていく……。

 あ、何かじんわり魔力があったかいような……?


「!」


 また何か金属が打ち合うような響き!

 ……『橙』?

 また色が頭の中に広がる!


「お、成功だな。やっぱり熟練度が高いと覚えが早い」

「え、あの、これは……?」

「橙は身体に温度と力を与える。つまり体力回復の効果だ」

「……はぁ」


 それってよくある飲み薬の効果……。

 私も疲れた顔すると、ルームスによく飲まされたなぁ……。

 うぅ、嫌な思い出が……。


「あ、その顔、この付与の効果が分かってないな? よーし、解説してやろう」

「は、はい、お願いします……」


 な、何か効果が違うのかな?

 私は冷えた皮袋を横に置いて、座り直した。

読了ありがとうございます。


ぬくむべき湯たんぽが次第に熱を失っていくのは、とてもとても悲しいものだ。


次話もよろしくお願いいたします。

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[一言] 押すなよ、押すなよ! 押せよ〜! ポヨポヨ こ、これは… いや、ちょっとはあるから…(´;ω;`)
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