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初級回復魔法しか使えないようにされた上に追放された法術士の私が、虹の聖女と呼ばれるまでの物語  作者: 衣谷強
白の章

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最終話 幸せに包まれて

お待たせしました。

アーテルに想いを伝え、共に生きる道を選んだアルクス。

そして時は流れて……。


どうぞお楽しみください。

「……こうして虹の聖女様は、若返った国王様の元で今も人々を癒やし続けているのです。……おしまい」

「はあぁ〜!」


 アウローラが大きな目を更に広げて輝かせる。

 何度読んで聞かせても、この表情を浮かべる。

 可愛らしいと思うのと同時に、少し居心地が悪くもある……。


「せいじょさまってすごい! わたしもおおきくなったらせいじょさまみたいになる!」

「……そう、そのためにはお外で元気に遊ばないとね」

「うん!」


 言うなりアウローラは椅子からぴょこんと飛び降りると、玄関に駆け出して行った。


「……教えてあげないのか? 憧れの聖女が身近にいるって事を……」


 最愛の夫の言葉に、私は力なく首を振る。


「そんな事できないわ……。きっとがっかりさせちゃうもの」


 子ども向けの本にまでなった虹の聖女の物語。

 国中に広がった美しい偶像。

 その主人公が……。


「あー! 先生! 私のりんご勝手に食べましたね!?」

「何言ってんだアルクス。あれはこの孤児院の食べ物だろ? 俺が食べちゃいけない道理はないな」

「先生は今朝食べたでしょ!? 私はお昼の楽しみに取っておいたのに!」

「はっはっは。食われるのが嫌なら名前でも書いておくんだなー」

「むー!」


 こんなだなんて……。


「あ! ウィンクトゥーラさん! 聞いてくださいよ先生ったらひどいんですよ! 私のりんご勝手に食べて!」

「あの、アルクスちゃん……? あなた国王様に言えば、りんごなんてお店ごと買えるくらいのお金もらえるでしょ……? そんなに怒らなくても……」

「そ、そうですけど、それは何か悪い気がして……。それにちゃんと自分で稼いだお金じゃないと、使うのが怖くて……」

「……その心意気は素晴らしいと思うけど、それなら喧嘩はしないでほしいわ」

「……はい、すみません……」

「やーい、怒られてやんのー」

「先生も悪いんですよ! 子どもみたいな事して!」

「俺今子どもだもんなー。誰かさんのせいで」

「ぐぎぎ……!」

「はぁ……」


 変わらないやり取りに溜息をつきつつも、嬉しい気持ちが胸に広がる。

 半年前の悪夢。

 世界を滅ぼしかねないアドウェルサの復活とその討伐。

 それで命を落としかけたアーテルさんの治癒。

 絶望に近い状況を乗り越えて、掴み取った平穏。

 そう考えると、少しくらいの騒がしさもいいものなのかもしれない。


「まーたやってんのかお前ら……。飽きないな……」

「あ、タベッラさん!」

「ようアルクス。国王陛下の元に納品する魔吸石まきゅうせき、受け取りに来たぜ」

「はい、裏の倉庫に置いてあります!」

「おう。しかしまさか国王陛下と商売をする事になるとはなぁ。毎回身が縮む思い出ぜ。お前に関わって良かったのか悪かったのか……」

「ご、ごめんなさい! どうしてもお城での生活に慣れなくて……!」

「だろうなぁ」

「毎月魔吸石を届けてくれるタベッラさんにも、私の代わりに聖女役をしてくれてるサーニタースさんにも悪いとは思ってるんですけど……」

「冗談だよ。魔吸石以外にうちの製薬組合の薬も納品を許されてな。俺を組合長にしようって話まで出てきてる。なれたら最年少組合長の誕生だ」

「そうなんですね! すごい!」

「何言ってんだ。アルクスのお陰だよ。そんじゃアーテルさんと仲良くな」

「はい!」

「結婚式には呼んでくれ」

「んなっ!?」


 あらあら。

 立ち去るタベッラさんの言葉に、顔を真っ赤にするアルクスちゃん。

 初々しくて可愛い。


「結婚ねぇ……。今の所これっぽっちもお前に惚れる気配がないんだが?」

「こ、これからです! 先生に私を絶対好きにさせてみせますからね!」

「ま、頑張れー。お前よりもここの子達の方が早く結婚できそうだがなー」

「またそうやって馬鹿にしてー!」


 女性法術士の最高位である、虹の聖女の称号を得たアルクスちゃん。

 でも今まで通りのアルクスちゃんでいてくれる事に、どこかほっとしている私がいる。


「あれー? またアーテルくんとアルクスねぇちゃんけんかしてるー」

「なかよくしないといけないのにねー」

「おねえちゃん、おとなげないねー」

「ねー」


 ……うーん、孤児院の子達の教育のためには、もうちょっと成長してもらいたいかな……。

 子ども達に呆れられるアルクスちゃんを見ながら、私は小さく溜息をつくのだった……。

最後までお付き合いいただき、ありがとうございます。


思えば昨年、「来年は一つくらい十万文字越えの作品を書きたい」と思い立ったのが始まりでした。

毎日更新、一話千文字以上と定め、書いてまいりました。

筆が乗る日も乗らない日も、お酒飲んでへべれけな日も、二日酔いでだるい日も……。

そんな駄目人間の私が、無事完結まで漕ぎ着けられたのは読んでくださった皆様のお陰です。

ありがとうございます!


明日『パロディ昔話』を更新して、また月曜から新連載を始めます。

『本当は勘違いされたい五階さんと、言葉通りに受け取る楽面君』

よろしくお願いいたします。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 完結お疲れ様でした! 途中、リアルが忙しくなって読めずにおりましたが、今日ようやくまとめて読む事ができました。 温かくて幸せになれる、気持ちの良いお話でした。 なのにいつもふざけた感…
[良い点] どれだけ凄いことをなしとげても、アルクスちゃんはアルクスちゃんで変わらないのがとても素敵です。 そしてまだまだアーテルさんにからかわれてはいますが、もしかしたら好きな子ほどからかいたくな…
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