第百十三話 二人の約束
虹の聖女の称号を与えられたアルクス。
混乱も冷めやらぬアルクスの元に、今度はアーテルがやってきて……?
どうぞお楽しみください。
「おい、アルクス」
「せ、先生……!」
国王様の部屋を出たら、ちっちゃくなった先生が腕組みしてた……!
「そろそろ俺を元に戻せ。急成長の付与は前に教えたよな?」
い、今それどころじゃないんですけど……!
押しかけられるのを避けるためとはいえ、国王様から虹の聖女なんてめちゃくちゃ高位な称号もらっちゃって、気持ちの整理がつかないんですよ!
「お前の失敗でこうなったんだから、責任を取るべきだろ?」
「そんな言い方……」
た、確かに私が白の初級回復魔法を制御できなかったせいでこうなったけど、でもあの時の先生の言い方がまぎらわしかったせいでもあるし……!
「あ、言っておくけど、やりすぎて爺さんにするなよ?」
「し、しませんって!」
もう! 先生はそうやっていつもからかって!
しっかり寝て、元気になった今なら余裕で……!
……ん?
「先生、何でそんなに早く元に戻りたいんですか?」
「は? そんなの当たり前だろ。いつまでも子どもの姿でなんかいられるか」
「でもこのお城の中で、子どもだからって困る事ありませんよね? 国王様がお城中に言ってますから、子ども扱いされる事もないですし」
「扱いがどうこうじゃないんだよ。誇りとか尊厳とか、そういう部分に問題があってだな」
……仮面がなくなったからかな。
先生が言葉と違う事を考えてるって感じがわかる。
多分元の身体に戻れたら……。
「先生、どこに行く気なんですか?」
「どこって、決まってるだろう。この後は食堂に行って飯を食って」
……こうやってごまかそうとする。
仮面をつけていた時、過去を聞いた時と同じだ……。
「その後は風呂に入って、俺のご立派がご立派である事を確認してだな」
「……?」
お腹の下を指さして、何がご立派なんだろう……?
でもこれでわかった!
先生は……!
「元の姿に戻ったら、ここから旅に出るつもりですよね?」
「……そりゃいつかはな。いつまでもここにいる訳にはいかないし」
「国王様はいつまでもいていいって言ってましたけど?」
「いや、俺の気分的にさ、こう、一箇所にい続けるってのわっ!?」
最後まで言わせない!
言わせたら駄目だ!
ぎゅっと抱きしめたまま、先生に叫ぶ!
「先生がどっかに行っちゃうなら、私絶対元に戻しませんから!」
「……アルクス、お前甘えるのも程々に」
「先生、アドウェルサをやっつけるって使命を果たしたら死ぬ気だったんですよね!? そしたらこの後何をするつもりですか!?」
「……そりゃあ、こう、世界を旅して、あっちこっちを見て回って」
「その後は!?」
「……『後払いの仮面』はなくなったんだ。旅先の空で、いずれは死ぬさ」
「嫌です!」
「……いやお前、生き物が死ぬのは自然の摂理で」
「する事ないから死ぬ、みたいなのは駄目です! もっといっぱい楽しい事をして、美味しいものを食べて、死ぬのがもったいないって思ってからです!」
「いや、だからそれは十分味わって……」
「私と一緒ってのはまだちょっとしか体験してないですよね!? ならまだ旅に出ちゃ駄目です!」
「……お前無茶苦茶言うなぁ」
無茶苦茶でもいい!
先生がこのまま燃え尽きたみたいにひっそり死んじゃうくらいなら……!
「……って事は、お前と一緒にいるって言わないと、俺はこの姿のままか?」
「はい!」
「だが子どもの姿のままじゃ旅には出られないから、結局側にいなきゃいけない、と」
「はい!」
「それって、お前……」
親離れできない子どもとか言いたいんでしょ!?
先生を一人にしないためなら、子ども扱いされるくらい何て事ないし!
「恋人を束縛する重たい女みたいだな」
……こ、
こここ、
恋人!?
誰が!?
私と先生が!?
ウィンクトゥーラさんとカルクルムさんみたいに!?
ポルポラさんとロセウスさんみたいに!?
「お、おいアルクス? どうした? おーい?」
「いいですね!」
「何が!?」
「それで行きましょう!」
「だから何が!?」
そうだ!
私が恋人になれば、先生も終わった使命の他に生きる意味を見つけられるはず!
そうと決まれば……!
「先生! 私と恋人になりましょう!」
「はぁ!? お前正気か!?」
「もちろんです!」
「……お前、恋人が何するか知ってるのか?」
「はい! 手を繋いで町を歩いたり、美味しいものを一緒に食べたり、一緒にお買い物とかするんです!」
「あー、何か安心したわ」
な、何その馬鹿にした顔!
「俺と恋人になりたきゃ惚れさせてみな。その時は俺から恋人になってくれって頭下げてやる」
「言いましたね!? 絶対惚れさせてあげますから!」
「いやー、俺が自然に大人になるまでかけても無理じゃないか? その子どもにしか見えない程度の色気じゃなー」
「ま、まだ育ちますもん! きっとこう、ぼよんって!」
「へー、全く想像できないけど楽しみにしてるわー。かけらも想像できないけどー」
「むきー!」
先生はいつもこうだ。
私をからかって、おちょくって……。
でも他の人にしてるのを見たことがない……。
だからきっと私には勝ち目があるはず……!
「俺を生き延びさせた責任なんか感じなくていいからな。もらった命は大事に生きるからさ」
「……そんなんじゃないですよ」
本当に好きだから。
先生の事が心から大好きだから。
「絶対私を好きにならせてみせますから!」
「楽しみにしてるよ、アルクス」
私は新たな目標を見つけて、頑張る事を決めたのだった……!
読了ありがとうございます。
頑張れアルクス。
女の子の魅力は胸だけじゃない。
多分、恐らく、メイビー。
次回最終回です。
最後までよろしくお願いいたします。




