第百十二話 虹の聖女
アーテルの無事を知り、泣きながら喜んだアルクス。
それが落ち着くと、向き合わなければならない幾多の功績があるわけで……。
どうぞお楽しみください。
「さてアルクスよ」
「は、はい!」
お風呂に入って着替えて、国王様のお部屋に入った。
あ、改めて向き合うと緊張する……!
隣にいるブルブスさんを見て、少し気持ちを落ち着けよう……。
「アドウェルサの脅威も去った。改めてお主には礼を言いたい。儂の病を癒してくれた事、アーテル様の命を救ってくれた事、心より感謝する」
「い、いえ、そんな……! あ、頭下げないでください!」
国王様に頭を下げられるなんて!
ど、どうしたらいいのこれ!?
一緒に頭下げてないで、助けてブルブスさん!
「そこでお主には褒美を取らせたい。何か望むものはあるか?」
「え、えーっと……」
と、とりあえずは……。
「あの、ポルポラさんっていう冒険者の人なんですけど、私のために魔力持ちになっちゃったんです。でも冒険者としてすごい人で、その、お仕事も好きで」
「うむ、それについては話をしておってな。魔力を持つものでも職業は自由に選べる事するつもりだ」
「え、あ、ありがとうございます……」
そ、そうなんだ……。
それはよかったけど、何で急に……?
「アーテル様からお話を伺いましたところ、この魔力持ちを国が管理する制度は、第二のアドウェルサを生み出さない為のものだったそうです」
「あ、なるほど……」
魔力を持ってる人がどこかで勝手に作っちゃったら、それこそ世界の終わりだもんね……。
「今の技術ではどうやっても再現できぬという事であれば、魔力持ちを縛る意味はない。故に魔力持ちの職業制限は撤廃する事とした。登録は義務付けるがな」
「よかったです!」
そうすると、後は……。
「あの、今回協力してくれた人達にごほうびを……」
「当然である。キュープラム救護院院長ウィンクトゥーラ、法術士クーラーティオには、法術士増員の予算と薬や機材の充実を頼まれたので、既に手配をしてある」
「ありがとうございます!」
これで救護院でもっとたくさんの人が助けられる!
それにウィンクトゥーラさんがカルクルムさんと結婚した後、救護院に人が足りなくなるから子どもを産めない、とかもないもんね!
「魔術士ロセウスと冒険者ポルポラは今後も冒険者としての活動を続けたいと申したので、王家で所蔵していた魔道具を与えた。喜んでおったぞ」
「魔道具!? あ、ありがとうございます!」
あの二人に魔道具まで備わったら、もう無敵なんじゃないかな!?
また美味しいお肉をごちそうしてもらえるかも……!
「サーニタースとブルブスには特別賞与を与えた。他には何かないか?」
「えっと、えっと……」
改めてそう言われると全然思いつかない!
……あ、そうだ!
「あの、ルームスの事なんですけど……」
「……」
……こ、国王様、恐い……。
めちゃくちゃ怒ってる……!
やっぱり先生を刺したの、許してないよね……。
でも死刑はやだなぁ……。
「陛下」
「……すまぬアルクス。申して良いぞ」
「……えっと、その、せ、先生にしっかり注意されたので、その、ひどい罰はないように、してほしいとか、そんな事を、思っていまして……」
「……はぁ……」
め、めちゃくちゃ重くため息つかれた!
頭を抑えた国王様に代わって、ブルブスさんが口を開く。
「……アーテル様からもルームスへの厳罰は避けるよう言われているのですが……」
おぉ、さすが先生!
……でも、駄目、なのかな……?
「たとえアーテル様が被害者でなくとも、貴族が己が地位を濫用し背後から剣で刺すなど、許される行いではないのです」
「……ですよね」
「更に追加調査をしたところ、冒険者組合や各町の商会からも暴挙と呼べる行為の証言が次々と上がってきました。それをルトゥム侯爵家が黙らせた事実もです」
「わぁ……」
これは駄目かな……。
でも死刑は……。
国王様……。
「……本来ならルームスは死刑、ルトゥム侯爵家は取り潰しの上主だった者は投獄、となるところではあるが……」
……あるが?
「アーテル様から『アルクスに負う必要のない重荷を背負わさないでくれ』とも言われているのでな。一家まとめて貴族位を剥奪するに止めようと思う」
「……先生が……」
……また子ども扱いして、という悔しい気持ちと、優しさが嬉しい気持ちとで、胸の中がもやもやぽかぽかする……。
「いささか甘い気もするが、貴族位にあぐらをかいておった連中には、かなり効くであろうな」
「それは、はい……」
「加えてルトゥム領に住み、働き、領民全員から認められれば、元の地位に戻すと言い含めるつもりだ。見下していた領民に許しを乞う、これは良い罰と思わんか?」
「……それ、領民の人達に袋叩きにされません……?」
私の不安に、ブルブスさんがにっこりと笑う。
「私が領主代行としてルトゥム領に参ります。私の騎士が罪人ではなく一領民として扱い、法の元に平等に守ります。貴族特権に浸かり続けた身には罰も同然ですが」
「確かに……」
頷いた私に、国王様が真剣な目を向ける。
「ルームス・ルトゥムへの処罰として、国王として妥協できるのはこのようなところだ。これで飲み込んではくれぬか?」
「……ありがとうございます」
死刑じゃなければどうでもいいと思っていたルームスだけど、事あるごとに「平民のくせに」と言っていたあいつは、どんな顔をするんだろ……?
……ちょっと気分がよくなるのは意地悪かな?
「……お主は他人の事ばかりであるな。自分への褒美の望みはないのか?」
「え、えっと……。すぐには思いつかなくて……」
「そうか。ではひとまずお主に『虹の聖女』の称号を授ける」
「え」
えええぇぇぇ!?
せ、聖女って女性法術士の最高位じゃないですか!
わ、私なんかがもらうわけには……!
「アルクスさん、どうぞお受けください。さもないと陛下の若返りを知った貴族や富豪が、アルクスさんに若返らせてもらおうと殺到する事でしょう」
「ひっ……!」
緑の初級回復魔法を覚えた時の大混雑を思い出す!
あれがもっとひどくなるって事だよね!?
そんなの絶対無理!
「だが聖女の称号は『王家の盾』同様、領地を持たぬ公爵扱いである。露払いにはもってこいであろう?」
「こ、公爵……!?」
もう何が何だかわからない!
「悪いようにはせん。とにかく頷いておけ」
「わからない事がありましたら、私か私の部下がお教えしますから」
「わ、わかり、ました……?」
……こうして私は半ば強引に『虹の聖女』の称号をもらいました……。
……夢なら覚めて!
読了ありがとうございます。
ルトゥム侯爵家はしめやかに爆発四散!
ルームス「アイエエエ! ヘイミン!? ヘイミンナンデ!?」
リョウミンに包まれてあれ。
タイトルも回収しましたので、残り二話で完結予定です。
次回もよろしくお願いいたします。




