第百十一話 失敗の果て
二日間アーテルに白の初級回復魔法をかけ続け、限界を迎えたアルクス。
意識を取り戻したアルクスが見たものは……?
どうぞお楽しみください。
「……う」
「アルクスちゃん!? 大丈夫!? 私が誰だかわかる!?」
目を開くと、目に涙を溜めたウィンクトゥーラさんの顔が映った。
「……ウィンク、トゥーラ、さん……?」
「あぁ、良かったあああぁぁぁ!」
うえ、抱きしめられた。
ちょっと強くて少し苦しいけど、とてもとても嬉しい感じがする……。
「ま、丸一日ぃ、目をさ、覚さないから、わ、私、心配でえええぇぇぇ……!」
「ご、ごめんなさい……!」
あちゃー……。
こんなに泣くウィンクトゥーラさん、初めて見た……。
すごく心配かけちゃったな……。
!
「あ、あの! ごめんなさい! 先生は!?」
「え、あ、その……」
……え?
口ごもるウィンクトゥーラさんの身体を離して、慌てて部屋を見渡す。
クーラーティオさん、ロセウスさん、ポルポラさん、知らない男の子、国王様!? ブルブスさん、サーニタースさん……。
……先生は……?
「あ、ああ、ああああああ……!」
胸の中が真っ黒に塗りつぶされる……!
駄目だったんだ……!
私、失敗しちゃったんだ……!
あれだけ偉そうに言ったのに……!
こんなに助けてもらったのに……!
最後の最後で、私は……!
先生、先生、先生……!
「先生……! ごめんなさい……!」
「そう思うならとっとと元に戻せよアルクス」
「!?」
泣き声の中聞こえた言葉に顔を上げる!
声は全然違うけど、でも先生だ!
……どこ!? どこにいるの先生!
涙で見えない……!
必死に涙をぬぐって見回すけど、いない……!
……幻……?
「どこ見てるんだ。ここだここ」
「……?」
そう言ったのはちっちゃい男の子。
黒髪黒目で可愛い……。
……あれ?
……も、もしかして……!?
「……先、生……?」
「おう。お前がやらかしたお陰で、五百年を中和するどころか余分に若返らせられて、子どもになったうおわ!?」
「先生……! よかった……! 生きてる……!」
寝台を飛び降りて抱きつく!
小さい身体だけど、あったかい……!
先生が生きてる事が実感できる……!
嬉しい……!
「……よくやったな」
「!」
小さい手が頭をなでてくれる……!
「先生……! 先生……! ありがとう、先生……!」
「俺の方こそありがとな、アルクス」
「……はい!」
子どもみたいにびえびえ泣きながら、私は先生が生きている喜びを噛み締めたのだっ
「それはそれとして、だ」
「うぇっ!? ポルポラさん!?」
何急に!?
せっかく先生が助かった喜びを噛み締めているのに!
「お前さー、あたしが『もういいんだ!』って言ったのに、何で止めなかった?」
「へっ!?」
「そのせいでアーテルさん、子どもになっちまったんだぞ?」
え、ポルポラさん、応援で「いい!」って言ってくれてたんじゃ……!?
「ご、ごめんなさい! あの時は何か頭がぐわんぐわんしてて……!」
「私も『頑張ったわ! もう十分よ!』って言ったの、聞いてもらえなかったわ」
「ご、ごめんなさい、ウィンクトゥーラさん! 『頑張って! もう少しよ!』って励ましてくれてるものだと……」
「私も『手を止めてください!』って言いましたけど」
「クーラーティオさんごめんなさい! 何か『手を止めちゃ駄目です!』って聞こえて……」
「……はは、じゃあ僕の『もう既に時間は経ちました!』も聞こえてなかったんですね……」
「あ、はい……。ごめんなさいロセウスさん……」
「つまり私の『このままじゃ子どもにまで戻りますよ!』の警告も無駄だった訳ですね」
「……サーニタースさん、ごめんなさい……」
うぅ、みんなに支えてもらって助けてもらったのに、こんな失敗しちゃって……!
恥ずかしい……。
「よしっ! 文句終わりっ!」
「!?」
ぽ、ポルポラさんが、ぎゅっと抱きしめてくる!?
「おめでとうアルクス! お前は五百年に勝ったんだ! やったな!」
「ポルポラさん……! ありがとうございます!」
「おめでとうアルクスちゃん!」
「ウィンクトゥーラさん! ありがとうございます!」
「お見事ですアルクスさん」
「ありがとうございますクーラーティオさん!」
「お疲れ様ですアルクスさん。魔力は問題なさそうですか?」
「ロセウスさん、ありがとうございます! 大丈夫そうです!」
「おめでとうございますアルクスさん」
「お世話になりましたサーニタースさん! ありがとうございます!」
「良かったですねアルクスさん」
「ブルブスさんのおかげです! ありがとうございます!」
「救国の大恩人の命をよくぞ救ってくれた! 礼を言うぞアルクス!」
「国王様……! ありがとうございます! みんなのおかげです!」
私はみんなからお祝いされて、またまた大泣きしてしまった。
でもこんなに嬉しい日なら、子どもみたいに泣いてもいいよね?
「……おーいアルクスー。俺の身体を元に戻せよなー」
先生の遠慮がちな声も、今はちょっとだけ聞こえなかったふりしちゃお。
読了ありがとうございます。
最後の無理な一押しさえなければ、アーテルはイケショタになんかならなかったものを……。
よくやったアルクス!
後二、三話で完結となります。
次回もよろしくお願いいたします。




