表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
初級回復魔法しか使えないようにされた上に追放された法術士の私が、虹の聖女と呼ばれるまでの物語  作者: 衣谷強
青の章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

11/113

第十一話 お金をもらうという事

運ばれて来た鶏の一枚焼き定食。

初めて口にする味に、アルクスは、そしてアーテルは何を思うのか?


どうぞお楽しみください。

「こ、これは……!」


 私は目を見張った!

 鶏肉の一枚焼き……!

 匂いからして美味しいものだという事はわかっていたけど……!


「へぇ、これはなかなか美味い……、っておいアルクス、お前、……泣いているのか……?」

「あ、あはは……。美味しすぎて、つい……」


 あぁ、いつか法術士として一人前になったら、沢山ご馳走を食べようと心に決めていた……!

 なのにこの鶏肉ときたら!

 皮は固くてぱりっとしてるのに、お肉は柔らかくて、噛むと口の中にじゅわって甘じょっぱい味が広がって……!

 飲み込むと香ばしい匂いと味が一気に広がる!

 まだ半人前なのに、こんなご馳走……!

 ……幸せ……!


「あ、アルクス……?」

「……先生、天国はここにありました……!」

「あー、うん。満足そうで何よりだ……」


 一口一口を楽しむために、小さく切って口に入れる。

 ……噛み締める度に、これまでの大変さや辛さが報われていくみたい……!

 いつものパンやサラダ、スープも特別に感じる……!

 私はこの味と出会うために、これまで頑張って来たのかもしれない……!


「……ご馳走、様でした……!」


 最後の一口を飲み込んだ時、私は天を仰いで涙した……。




 お金を払うと、女将さんはにこにこと笑って、私の背中をぽんぽんと叩いた。


「いやー、作った甲斐があるよ! あんなに美味しそうに食べてくれてさ!」

「美味しそうじゃないんです! 本当に、本っ当に! 美味しかったです!」

「そりゃあ良かった! 先生はご満足いただけたかね?」

「あぁ、美味かった。焼き加減も味付けも素晴らしかったと」

「ですよね! 先生もそう思いますよね!」

「……あぁ……」


 先生が頷いてくれるのを見て、私は満足感が更に深まるのを感じた。

 次のお給料の日には、また先生と一緒に食べよう!

 楽しみだなぁ。


「それにしてもアルクスちゃん、どうして急に給料が上がったんだい?」

「あ、それはですね、先生に教わって『解毒』と『病気治癒』ができるようになったからなんです!」

「へぇ! すごいじゃないか! あたしが具合悪くなったら、アルクスちゃんに治してもらおうかねぇ」


 ! それは素敵だ!

 女将さんは勿論、今の下宿に住まわせてくれている大家さん、野菜売りのおじさんおばさんとか、お世話になってる皆さんに恩返しできる!


「そしたら女将さん! 今度のお休みにやってみませんか!?」

「え? いや、今は身体の調子も悪くないし、必要になったら救護院に行くから大丈夫さ!」

「いえいえ! 病気以外にも身体の毒素とかを出せて、すっきりできますから! とばっと汗をかきますけど、お風呂場とかお借りできればばっちりです!」

「いや、でも悪いよ……。その気持ちだけで嬉しいからさ……」

「え……」


 ……何で断るの……?

 これまでいっぱい助けてもらったから、少しでも恩返ししたいのに……。


「アルクス、落ち着け」

「先生……?」

「気持ちは分かるがそういうのは駄目だ。お前は法術士なんだからな」

「え……?」


 法術士だから、駄目……?

 どういう事……?


「そうだな……。お前は今日のこの料理、女将さんからただでご馳走してもらったらどう思う?」

「そんなのもらえません! こんな美味しいものにお金を払わないなんて……!」

「そうだな。そしてそれはお前の初級回復魔法にも言える事だ。救護院でなら、お金を払って受ける法術なんだから」

「……あ」


 そう、か……。

 私は自分の力に価値があんまりないって思ってた……。

 でも今日もらったお給料が感謝の証であるなら、私はそれを受け取る価値があるって認めてもらえてたんだ……。

 なのに私はそれを否定するような事を……!

 それは教えてくれた先生や、法術を使える身体に産んでくれた両親にも失礼な事だ……!


「まぁ人の役に立ちたい気持ちで法術士になったお前が、新しい力を手に入れてそうなるのも無理はないし、その気持ちを否定する必要もない。出し方の問題だ」

「……はい。わかりました……」

「後は、そうだな……。もし次に女将さんの具合が悪くなった時に、優先してあげたり、訪問診療をしてあげたりってのが、まぁ落とし所じゃないか?」

「……! ありがとうございます!」


 淡々と、でも次にどうしたらいいのかをちゃんと教えてくれる……!

 反省しなきゃいけない事はあるけど、私の心は先生のお陰で落ち込まずに前を向けていた。


「流石は先生! 最初は胡散臭いと思ってたけど、あたしが言いたい事をちゃんと言ってくれた! ありがとよ!」

「いや、当然の事を言ったまでで痛い痛い」


 女将さんが先生に満面の笑みを向けて肩を叩いているのを見て、私は今日の嬉しさがまた一つ増えたのを感じたのだった……。

読了ありがとうございます。


アルクスは感動に打ち震えていましたが、鶏の一枚焼き定食は一般的なご飯です。

……毎日でも食べられるようになるといいね……。


次話もよろしくお願いいたします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ