第百十話 最後の輝き
必死に白の初級回復魔法でアーテルの命を繋ごうとするアルクス。
しかし限界は確実に迫って……?
どうぞお楽しみください。
「……う……、く……」
……頭が痛い……。
目の前が、ぐにゃぐにゃしてる……。
顔が腫れてるみたいにぼやぼやする……。
耳に何か詰まってるみたいで、音もよく聞こえない……。
……でも、後少しなんだ……!
さっき日が沈んで夜になった……。
一昨日の真夜中にかけ始めた白の初級回復魔法……。
先生の五百年を中和するには、後何時間かで終わるはず……!
絶対、止めるもんか……!
「アルクスち……! 頑張っ……! もう……よ」
……ウィンクトゥーラさんが応援してくれてる……。
……頑張ります。
もう少し、ですね……!
「アル……さん! 手を止め………………」
……クーラーティオさん……。
はい、手を止めちゃ駄目ですよね……!
「……クスさん! もう既に…………
ロセウスさん……!
わかってます……!
もうすでに残り時間はわずかですよね……!
「ア……ス! ……いい……!」
ポルポラさん……!
力強い応援、ありがとうございます……!
「アルクスさ…… このままじゃ…………
サーニタースさん……!
大丈夫です……!
まだこのまま頑張ります……!
「……アル、クス……」
「! 先生!?」
目の前がぼんやりしてよく見えないけど、先生の声だ!
意識が戻った!
これなら助けられる……!?
最後の頑張り……!
「……もう、いい……。充分、だ……」
「……え」
な、何で……?
何でそんな事言うの……?
後ちょっとで助かるのに……!
何でそんな諦めたような事を言うの!?
私はまだ大丈夫……!
大丈夫
だ
から
「……ぅ、ぁ……」
目が、でんぐり返ししたような、気持ち悪い感覚……!
何これ……!
私、限界なの……!?
やだ……!
後ちょっとなのに……!
「……いい、んだ、アルクス……。お前は、よく、やった……」
「……!」
先生に褒められたかった。
白の初級回復魔法で先生を助けて、「よくやった」って言ってもらいたかった。
……でもそれは、そんな今にも消えそうな声でじゃない……!
元気に笑って、明るい声で、頭をなでながら言ってほしかった!
まだ私は終われない! 終わらせない!
「……よせ、アルクス……。これ以上、したら……」
「私は、大丈夫、です……! 先生は、黙って、治されて、ください……!」
声も、手も、身体も、景色も、全部が震えてる……!
白の初級回復魔法が、今にも崩れそう……!
駄目……!
私は目を閉じて、消えそうな初級回復魔法の感覚だけに集中する……!
……これで法術が使えなくなってもいい……!
……誰も助けられなくなってもいい……!
……今、ここで、先生を助けられたら、もう他に何もいらない……!
「……お願い……! 先生……! 生きて……! そのためなら、私、私の全部をあげるから……!」
「……よせ、やめろ、アル、クス……!」
「うわあああぁぁぁ!」
絞り出すように注ぐ白の初級回復魔法……!
もうこれ以上持ちそうにない、から……!
ありったけ、全部を……!
「先生ー!」
叫びと一緒に白い光が包み込む。
その白さに、私の意識も染まっていった……。
読了ありがとうございます。
アーテルの、そしてアルクスの運命やいかに。
次回もよろしくお願いいたします。




