百七話 決戦前々夜
二日間アーテルに白の初級回復魔法をかけ続けるため、様々な手を講じたアルクス。
そして決戦の日は明後日に迫り……。
どうぞお楽しみください。
「先生!」
「おうアルクス。いよいよだな」
「はい! いよいよです!」
先生が言っていたアドウェルサの復活は明後日。
……大丈夫。
ここまでできるだけの準備はしてきた。
力を貸してくれる心強い仲間もいる。
大丈夫!
「いやー、院長さんに解毒の姉ちゃん、魔術士少年に女剣士ちゃん、それに宮廷法術士まで揃えて、やる気満々って感じだなー」
「はい!」
私のお願いに、ウィンクトゥーラさんにクーラーティオさん、ロセウスさんにポルポラさんまで来てくれた。
そして宮廷法術士のサーニタースさんを入れて、五人とも橙の初級回復魔法を覚えてくれた。
……ポルポラさんが紫の初級回復魔法を使って、魔力持ちになってくれたのには驚いたけど……。
国王様に頼んで、今まで通りの仕事ができるよう、お願いしとかないと……。
「んで? どうするつもりだー? そいつら全員に白の初級回復魔法を教えたわけじゃないだろー?」
「はい! 無理でした!」
「って事は、初級回復魔法と緑か橙の付与を教えて、お前が二日間白の初級回復魔法をかけ続けるための補給部隊に仕立てた訳だ」
「はい!」
「はー。あんた達、よくまぁ俺なんかの為にそこまでするもんだなー。ただの仮面の怪しい人だろ? 俺ってさー」
……自分で言っちゃうんだそれ……。
でも先生が今まで軽い感じで話とかをして、怪しさを否定しなかった理由がきっとこれだ。
自分が死ぬ時に悲しむ人が少なくなるように。
でも先生の優しさは、この通りみんなにちゃんと伝わって……!
「アーテルさんの為と言うより、アルクスちゃんが泣かない為ですから」
「私も院長と同じです。アルクスさんには笑顔でいてほしいです」
「アーテルさんには付与を教えてもらった恩はありますけど、やっぱりアルクスさんへの恩返しの方が大きいですね……」
「あたしはアルクスとロセウスの為なら何だってするからな!」
「貴方には何の感情もありませんが、陛下がアルクス様に恩を返せと仰せになられましたので」
「あれ?」
え、わ、私のため……?
ま、まぁいいや。
紫の魔吸石もいっぱい用意した。
後は明日一日しっかり用意をして、先生を助ける!
「くくっ……。これだけ良い仲間に恵まれてるなら、もう俺なんかにこだわる必要ないだろー」
「そんな事ないです!」
「何だー? そんなに俺の事が好きなのかー?」
「なっ……!」
くぅ、また先生はそうやって私をからかう!
でもここで「違う」って言ったら、「じゃあ助けなくていいだろ?」とか言うんだ!
そうはいかない!
「……先生」
「何だー? 告白かー?」
「先生は私の先生ですよね?」
「あぁそうだぞー。何を今更……」
「なら私の修行に付き合ってください! 白の初級回復魔法が五百年の時間を中和できるって証明のために!」
「……」
これなら先生は断れないでしょ!?
……断らない、よね?
「……お前、俺を練習台にするつもりか?」
「……そう、です……!」
……うぅ、こんな事言いたくない!
でもこうでも言わないと、先生は私が見えないところでアドウェルサをやっつけちゃいそうなんだもん……。
「五百年の中和って、俺以外で使う事あるのかー?」
「……白の初級回復魔法の宣伝には役立ちます!」
「成程成程。その後の商売まで考えてるとはなー」
「……」
そんなわけない……。
でも先生は自分のためにされる事を喜ばない。
私のためっていう事にすれば、きっと……!
お願い! 嫌な弟子って思われてもいいから、先生を助けさせて……!
「……くくっ。そこまで言われちゃー、先生としては一肌脱がないとなー」
「え、せ、先生……?」
「なってやるよ、練習台。だが練習台である以上は、失敗も覚悟しとけよー」
「……はい!」
やった!
やったやったやった!
これで全部の準備が整った!
明日一日みんなでしっかり身体を整えて、決戦は明後日!
寝坊なんかしないよう、しっかり寝ておかないとね!
「そうそう、アルクスを引っ掛けるつもりだったから言ってなかったが、アドウェルサの復活は日付の切り替わる真夜中だからなー」
「えっ」
あ、明後日って言うから、すっかり朝になってからだと思ってた!
危なかった……!
知らなかったら起きた時には先生が死んでた……!
もう! 最後の最後まで先生は……!
「先生……!」
「怒るな怒るな。時間までちゃんと聞かないお前にも問題あるからな」
「う……」
そ、そうかな……。
いや、そんな事ない!
「覚えててくださいよ……!」
「はいはい、助かったらな」
よーし、言いましたね先生……!
アドウェルサをやっつけて先生を助けた後に、じっくり仕返ししてやるんだ……!
読了ありがとうございます。
アルクス「ニヤ!! とった!!」
アーテル「残像だ」
アルクス「はい?」
アーテルの心理を読めたようでいて、まだまだ手のひらの上なアルクス。
それでも勝負の土俵には立てました。
次回もよろしくお願いいたします。




