第一話 追放された法術士
新しい年を迎えました。
今年もよろしくお願いいたします。
早速ですが新連載です。
追放からの成り上がり、ざまぁもあるよ!
よろしくお願いいたします。
「アルクス。君を仲間から外させてもらう」
「えっ!? ど、どうして、ですか……!?」
ルームス様の言葉が理解できない……!
私は法術士として、これまでルームス様のために頑張ってきたのに……!
「理由は簡単だ。君の代わりが見つかったからさ」
「代わり……?」
「それがこの魔道具だ!」
ルームス様が身につけた鎧を指差す。
年代物の魔道具のようで、くすんだ銀色の軽装鎧。
胸の中心には緑色の宝石が鈍く光っている。
「これは装備しているものの傷を自動で回復する! 我がルトゥム家に代々伝わる『身護りの剣』との相性は最高だ!」
「そんな……!」
見習い法術士の私がルームス様の仲間に入れてもらえていたのは、『身護りの剣』が『持ち主が無傷に近いほど威力を増す剣』だから……。
些細な傷もすぐに治す事でルームス様は高い攻撃力を振るい、魔物を退治する冒険者として私達は頭角を現していた。
それが自動的に傷を治す魔道具が手に入ってしまったら、私の存在意義は……!
でも私は他では働けない理由がある……!
「あ、あの、お願いします! 仲間から外さないでください!」
「しつこいなぁ。初級回復魔法しか使えない君に、この鎧以上の仕事ができるとでも言うのかい?」
「そ、それは……、あの、これを外してもらえましたら……」
私は右腕につけられた腕輪を差し出す。
『専魔の腕輪』。
設定した初級魔法を素早く、かつ魔力消費を抑えて使えるようになる腕輪。
その代わり他の魔法は一切使えなくなる魔道具。
仲間になった時には初級回復魔法しか使えなかったから勧められるままつけたけど、一年経ってるし他の魔法が使えるようになっているかも……。
「……ふふっ、あぁ、その腕輪か……」
な、何?
ルームス様の目が、にたりと歪む……!
「それはねぇ、呪いの魔道具なのさ! 外す事はできないんだよぉ!」
「そ、そんな……!」
それをわかって私につけさせたんだ……!
回復するためだけの道具にするために……!
「あぁ、正確じゃないな。外す事自体はできる。しかしそうすると、そいつは魔法が一切使えなくなるのさ!」
「……!」
「ひゃははは! いい顔をするなぁ! お前にもっと胸があれば、夜の奴隷として飼ってやっても良かったが、いやー、残念だ! ひゃはは!」
「っ……!」
ルームス様の哄笑に、私は奥歯を噛み締める。
騙しておいて、散々利用して、いらなくなったら物のように捨てる……!
他の仲間に目をやるけれど、皆目を逸らした。
……仕方ないよね。
この冒険者一団は、ルトゥム侯爵家の三男であるルームス様の財力と人脈なしには成り立たない。
だからこそこんな暴君のような振る舞いを当たり前に行うんだ……。
「さ、理解したかアルクス。とっとと荷物をまとめて出て行くんだな」
「あ、あの! 他にできる事があれば何でもします! 荷物持ちでも雑用でも何でもやりますから!」
擦り傷や切り傷を治す程度の初級回復魔法しか使えない法術士に、この街で仕事なんか多分ない……!
何とかここに置いてもらって……!
「必死だねぇ! いいよぉ! そういう顔を見るの最高! ぞくぞくするねぇ!」
「っ……」
気持ちの悪い笑い声に、背筋に悪寒が走る。
でもこれだけ上機嫌なら、もしかして……!
「でも、だぁめぇ」
「……へ……」
「どうせそんな絶望も、二、三日見てたら飽きるからねぇ。そんな半端に希望を持たせるような残酷な真似、僕にはできないよぉ」
「……」
「と、いうわけで、さようなら。間抜けな法術士」
頭が真っ白になったまま、私は一年間共にした仲間達から追放されたのだった……。
読了ありがとうございます。
これだけだと胸糞なので、続いて二話も投稿いたします。
よろしくお願いいたします。