第6話
「蠅ですか…。確かに、大公である閣下との結びつきを強めようという方々は多いでしょうね……」
「さよう。黄泉君は地位や名誉はほしいと思うかね?」
「自分は、地位や名誉等堅苦しいものは要りません……」
「そうかい。おっと、時間が推しているみたいだ。失礼するよ。皇都を楽しみ給え。統夜君にもよろしく伝えておくれたまえ」
「はい、ありがとうございます。それでは失礼いたします」
僕達は礼をしてその場を後にした。その後、方々に挨拶回りをして、皇城を後にした。
「さあ、この後はどうしようかしら?」
皇都の中心スポットの一つとされている時計台を見ると3時を示している。因みに、この世界は一日24時間、七日で1週間、一月は30日で十二月あり、1年は360日である。
「予定通り、甘味処に行きましょう。最近、外国のお菓子、フランドル王国のワッフルというのが流行らしいです。ぜひ頂きましょう?」
兄上が提案する。
「そうね。ぜひ頂きましょう♪」
僕達は甘味処巡りと相成った。
「いらっしゃいませ」
店員の女性が挨拶する。
「ワッフルというのが流行っていると聞いたのだけど?」
母が尋ねる。
「はい。こちらでお召し上がりですか?」
「こちらで頂くわ。三つお願いね」
「かしこまりました。では、お持ちいたしますので、席についてお待ちください」
僕達は注文を終えて席についた。
「美味しかったら、執事さんやメイドさんにお土産で持って帰りましょう?」
「そうね。そうしましょう」
「ところで、明日は一日空きますがいかがいたしましょうか、母上?」
僕は尋ねる。
「明日は皇都観光と買い物に参りましょう。問題ないかしら?」
母は答える。
「はい。問題ないです」
話している間にワッフルが来た。
「お待たせしました。蜂蜜をかけて頂き、こちらのアイスと一緒に召し上がりくださいませ」
「ありがとう。それでは早速頂きましょう」
「「いただきます」」
僕達は早速頂く。
「美味しいですね、母上」
「そうですね、偉智弥。世界には美味しいものがまだまだありそうですね♪」
「そうですね、母上」
早々と平らげてしまった。
「申し訳ないけど、よろしいかしら?」
母が近くを通った店員に声をかける。
「はい」
「ワッフルを持ち帰りたいで5個頂きたいのだけどよろしいかしら?」
「かしこまりました。アイスが溶けない様にアイスパック付けさせて頂きますね」
お土産を持ち帰り、領館に戻った。
「お帰りなさいませ」
執事さんとメイドさんが揃って出迎えた。
「ただいま」
僕達も挨拶する。
「これ、お土産です。皆さんで召し上がってくださいね」
母がお土産のワッフルを渡す。
「わざわざありがとうございます」
執事さんとメイドさんが礼をする。
「いえいえ、いつも皆さんにお世話になってますし、これからもお世話になりますから」
母が答える。
「ありがとうございます」
執事さんとメイドさん、再び礼をする。
「皆様、ちょうど夕食が出来ております」
執事さんがいう。
「それでは、頂きましょう」
僕達は部屋着に着替えて、食堂に向かった。
「それでは、皆さん、いただきます!」
母が食事の音頭をとる。ここは、大きな貴族ではないし、人数も多くない。みんな家族みたいな感じなので、食事は皆で頂く。他のところだと、執事さんやメイドさんは別々で食べるという家が多いらしい。夜神家領家でもこんな感じなので、別に不思議でもない。
「ごちそうさまでした」
食事を終え、居間で寛ぐ。
「明日は皇都観光の予定ですが、どこ行きましょう?」
僕は母や兄上に尋ねる。
「そうね…。一日ではとても回れないからね。やはり、皇都タワーや清泉寺、金朔寺、銀朔寺が有名処よね。後は、旧皇城、まあ、切りがないわね」
皇都タワーは、その名の通り、皇都で一番高い建物で、最上階には展望台があり、皇都を一望することができる。金朔寺・銀朔寺は金箔が貼られていることで有名で、砂利の庭園、屋内が畳張りになっていることで有名な寺で、芦山氏が将軍として治めていた時代に建立されたらしい。清泉寺は切り立った高い崖が有名らしい。旧皇城は、芦山氏が将軍を治めていた時代末期のお城らしい。
「ここから近いのは皇都タワーと旧皇城ですね。それでは、そちらを観光して、後は買い物等しましょう」
兄上が提案する。
「そうしましょう」
僕も母も異議がないということで明日の予定は決まった。
「それでは、明日に備えて早く休みましょう?」
「そうですね」
僕達は早めに休むことにした。
「それでは、皆さんお休みなさい」
僕達は執事さんやメイドさんに挨拶して部屋に向かった。執事さんやメイドさんは泊まり込みである。
「奥様、偉智弥様、黄泉様お休みなさい」
因みに、僕は母に手を引っ張られていった……。