第3話
兄や父親、家臣、領民の人達には生暖かい視線を送られ、兄には、
「親バカされるのも今の内だ。存分に親バカされて来い。仕官したらほとんど会えなくなるしな……。俺達の家業は特に、な!」
とよく言われる。僕達夜神家の家業は皇国内某報、暗殺、破壊任務であり、一カ所に留まるということは少なく、また任務に随時応えられる様に皇都の屋敷に待機していることも多く、領家にいることは当然少ない。依頼主は皇族関係が多い。僕達夜神家は極力貴族間の利害関係に関わらない為に私怨からの依頼と思われるものは受けない。今でこそ、灌漑整備を行い、適地適作・二毛作を取り入れ、食糧事情の改善、農業収入の向上の為依頼を選定する余地が出来たが、それまでは家業による報酬で領地経営を補っていた。
「(僕はまだまだ家業に参加し始めたばかりで、魔物退治はしたことはあるけれど、人を殺めるということはしたことがない。これからは、その覚悟をしなければならないな。地球の日本とは違う。ここでは誰かを守るということになれば殺人もやむを得ないということは多いし、甘い感情を持てば人を守ることができないし、自分も守ることができない)」
そんなことを考えながら準備をする。
「(何かあっては大変だ。魔障壁・雷神・水流・明光・腐食・解錠・硬化の札を余分に持って行こう・・・。後は、一応護身の為の特殊警棒持って行こう。剣は城の中に持ち込みできないからね)」
皇都であっても、やはり貧富の差が激しく平民の商店街から外れると奴隷商の店やスラムがあり、治安が悪くなる。。奴隷・・・、借金の肩として連れて来られた子供や亜人(この世界には、確認されているところで、エルフ、ドワーフ、人狼、兎人、狐人がいるらしい。ここでは特にエルフと人間の混血。)が売買されているという現実がある。特にここ大和皇国内では亜人に対する差別といったものがひどく残っている。後は、貴族の子息が身代金目的で誘拐されるということもある。