ケイ視点
ケイ視点です。
ここのスズエちゃんは比較的女の子らしいです。
ある部屋に入ると、突然警告音が響いた。
『今から、タマリ フウを人質に取ります。制限時間内に罠を解除しなければ死ぬことになります』
その放送とともに、フウ君が壁にはりつけにされた。その目の前には、矢のようなものが四本ぐらい。あれを小学生が食らったら死ぬだろう。
スズちゃんは率先して罠を解除しようと周囲を見渡した。ほかの人達も見てまわるが、何も見つからなかった。
制限時間が三分を切った時、
「……ケイさん」
不意にスズちゃんが俺の名前を呼んだ。彼女の方を見ると、
「ここ、私がフウに当たらないようにしておくので、てがかりを見つけてください」
スズちゃんは自分の右腕で、その矢があるところをふさいでいた。
「スズちゃん!そこからはなれ……!」
こういう探索は彼女の方が適任だ。しかし、
「私じゃ無理なんです。きっと、ケイさんしか出来ない。大丈夫、もし罠が発動したとしても右腕が使い物にならなくなるぐらいですから」
スズちゃんの顔は青くなっていた。わずかに震えていて、恐怖を覚えていることが分かる。それでも……彼女は、目の前の小さな命を守るために、捨てる覚悟だった。
「俺しか、出来ない……?」
「えぇ。この中での適任者は、ケイさんだけです」
どういう意味だろうか。
「スズエさん、ボクが……」
ユウヤが代わろうとするが、スズちゃんは「いいんです」と首を横に振った。
「だって、私……カナクニ先生と約束したんです。何があっても、子供達だけは絶対に守るって」
青い顔のまま、スズちゃんは笑った。彼女はその約束を守ろうとしている。
その勇気に応えられなくて、どうする。
俺は周囲を見渡す。刻々と時間が迫ってくる。しかし、何も見つからないまま一分を切ってしまった。
残り数十秒というところで、俺は気付いた。
「…………っ!」
タイムリミットの迫る音に、スズちゃんは目をぎゅっとつぶった。来るであろう衝撃に耐えようとしているのが分かる。
大丈夫、すぐ助けるから。
俺はスズちゃんの隣を近くにあった刃物で突き刺す。すると、時間が止まった。
確かに、これは俺じゃないと出来なかった。天井にヒントがあったのだ。
「スズ姉ちゃん……」
解放されたフウ君がスズちゃんに泣きつく。スズちゃんは抱きしめて、
「よかった……無事で……」
涙を流していた。彼女自身も怖かっただろうに、フウ君のことを心配している。
ユウヤが、彼女を守りたいって思う理由が分かる気がする。ここまで美しい心を持つ子をこれ以上傷つけたくない。
フウ君がレントのところに駆け寄ったのを見て、俺はスズちゃんに声をかける。
「スズちゃん、大丈夫だったー?」
その質問に最初はキョトンとしていたスズちゃんだったけど、不意にダバーと涙を流しだした。
「こわ、かった……!」
カタカタと震えているスズちゃんを抱きしめる。
「本当は、すでに解いていたんだよね?」
俺が尋ねると、スズちゃんは頷く。
「で、も私じゃ、なにもできなくて……あぁするしか、フウをまもれ、なくてぇ……」
腕を犠牲にするのは、彼女にとってどれほどのことだっただろう。でも、それでも彼女は幼い命を守るために失う覚悟をした。俺には、そんなこと出来ない。
「大丈夫、もう怖くないからね」
泣き続けるスズちゃんの頭を、俺は撫で続ける。
……本当に、ただの女の子なんだなぁ……。
今まで頼りにしてきたけど、自分より幼いんだ、この子も。




