レイ視点
レイ視点です。彼だけはスズエではなくランに焦点を当てています。
まぁ、彼が気付いていないわけないんですよねー。
キナが眠れないと言って、スズエとランの部屋まで来た。さすがに時間が時間だから寝ているだろうと思いながらドアをノックすると、
「……はい、誰でしょうか」
小さく開いたかと思うと、スズエが顔をのぞかせた。
「えっと、実は……」
まさか起きているとは思っていなかったので驚きながらも説明すると、スズエは部屋に入れてくれた。
「キナ、おいで」
スズエがベッドに座ってキナを呼び寄せると、キナは頷いて隣に座った。俺は椅子に座ってランを見る。
「……ランは寝ているんだね」
「疲れていたんでしょう。休める時に休んでいた方がいいですよ」
スズエの意見ももっともだ。そういう彼女はパソコンをかかっているけど。
そこで、違和感に気付いた。
「……ねぇ、ランは充電しなくていいの?」
そう、人形なのに充電していないのだ。この部屋にも備え付けられているので出来ないことはないだろうに。
スズエは動きを止めた。どうしたのだろう。
「……レイさん。誰にも言わないでいてくれますか?」
真剣な声で聞かれ、ただ事ではないと分かった。頷くと、彼女は衝撃的なことを告げた。
「……ランは、「生きているんです」」
「……は?」
生きているって……。
「信じられないでしょう?だったら、思い出してください。
ランのほかに、飲食をしていた人形は、「寒い」と言っていた人形はいましたか?」
その質問に、思い出した。そう、彼女の言う通りラン以外の人形達は飲食もしていないし、寒いとも言っていないのだ。
「…………そんな……」
じゃあランは、生きているのに死んでいると思い込まされているのか?そんなの、酷すぎる。
「まだ、ユウヤさんしか知らないんです。だから、まだ言わないでください」
スズエは寂しげな瞳をランに向ける。もしかしたら、シルヤと重ねているのかもしれない。
「……私ね、夢を見るんです」
不意に、スズエはかすれた、小さな声で呟いた。
「みんなが笑っている夢。私にとってとても嬉しくて幸福で、それでいてつらくて残酷な夢なんです。
シルヤがいて、兄さんもいて、アイトもいて。その空間に私はいちゃいけないんだって立ち去ろうとするんだけど、シルヤが「スズ姉も混ざれよ」って笑ってて……」
少女の瞳から、涙が流れてくる。
「私、あの子さえ生きてたらそれでいいって思ってた。あの子が生き残るんだったら皆を犠牲にしちゃってもいいかもって、どこかで思ってたの。でも結局、あの子を守れなかった……。また私だけが、生き残っちゃった……」
俺は彼女の兄であるエレンと同い年だ。だから重ねているのだろう。
「ねぇ、明日を迎えることが許されていたのなら……私、救われていたのかな?」
ずっと皆を導いてきた少女の吐いた初めての弱音は、とても儚かった。
脱出した後、俺はユウヤにすべてを話す。
「……あー。レイさんは知っていたんですね」
ユウヤは頭を掻きながら、小さく呟く。そして、
「……スズエなりの気遣いだったんですよ。あの子はいつも、他人のことばかり考える子だったから」
珍しく、スズエのことを呼び捨てにした。
「ねぇ、君達の関係って、聞いていいの?」
踏み込んだ質問だっただろうかと思ったが、彼は簡単に答えた。
「いとこですよ。スズエとシルヤは知らないだろうけどね」
いとこ……。じゃあ、彼は……。
「気にしなくていいですよ。だって、スズエは傍にいてくれますから」
その言葉とともに、一瞬だけスズエの姿が見えた気がした。




