7.実食します
深夜2時-----
みんなが寝静まった後、私はベッドから起きだした。
うちは貧乏子爵家なので、基本的に使用人は通いだ。もちろん見回りの夜勤勤務の人もいるが、 最後の見回りが深夜1時で、その次は朝の5時までは、誰も来ないはずだ。
私は、ローブを羽織り、マジックバックを持つと、忍び足で誰もいない厨房へと向かった。
厨房へ入ることは、禁止されているが、どうしても美味しくいただきたいので、バレないように静かに、下処理をしようと思う。私は明日に向けて、準備を行った。
◆◇◆
「お嬢様、お起きになってください」
「う~ん・・・・・・、今何時?」
「めずらしいですね、いつもお腹が空いたと、朝ご飯の前に食べ物を探しに行くのに。
今は、10時ですよ。そろそろ、お部屋をお掃除するので、起きてください」
朝方ギリギリまで、下処理をしていたので、ついつい寝過ごしてしまった。
いつもは、侍女が来る前に、自分で朝の準備を終えたら、すぐに外や厨房へ行くので、私が部屋にいることに驚いたのだろう。
世のご令嬢の皆様は、支度を侍女にしてもらうのが普通だが、待ってる間にお腹は空かないのだろうか、じっとして人に任せるのは、私には耐えられない。すごい忍耐力だと思う。うちが緩い子爵家で本当に良かった。
ちゃんと私の分の朝食は残してくれていたので、朝食を食べ終えた後、私はある場所へと向かった。
そこは、私がお父様にどうしても自分用の厨房が欲しいと、ねだって作ってもらった、小さな小屋だ。火は外でしか起こせないけど、簡単な調理器具はそろっている。
私の秘密の場所だ。ここで、私は採った魚や食材を調理して食べている。
昨日は大きな肉の下処理が必要だったので、うちの厨房を使ったが、ちょっとした調理ならここで十分だ。
さっそく、外の火起こし場に火をつけ、大きな鉄板を火の上に置いた。
まず、10kg以上もあるバラ肉を取り出した。乾燥したセージやローズマリーのハーブを入れて、塩コショウしておいた、肉だ。
それを鉄板を上にのせると、『ジューーーーッ』と肉が焼ける音が聞こえる。
バラの部分は、脂身が多いのであぶらが鉄板に溶け出し、『パチッパチッ』と美味しそうな音を響かせている。
「ずっと、聞いていたい音だわ」
私は、口の中に唾液がたまっていくのを感じながら、厨房から、くすねてきたキャベツを千切りにし皿に大盛にもった。
焼けたバラ肉を食べやすい大きさに切り、器に盛り、私は、ドキドキしながら、ジャイアントボアの肉を口に入れた。
「んん--------っ!!」
口の中に入れた肉は、脂身が多い部分なのに、油っぽさが無く、とても美味しい!
少し獣臭さはあるが、ハーブと胡椒がきいていて、気にならない。
「これは、いくらでもいけるわ!」
私は、千切りしたキャベツと一緒に夢中になって食べた。
◆◇◆
「あ--------っ、美味しかった!」
私は、10kgのバラ肉と20kgの生姜焼きにしたロース肉を食べ終え、満足して芝生の上に倒れ込んだ。
こんなに食べたのは、久しぶりだ。みんなが私の大食いに理解はあっても、この量を家で食べることは、中々難しい。それを、気にせず食べたい分を食べれるとは、ジャイアントボアに感謝しかない。
「もも肉は、燻製にしてハムにするから、あと2、3日では食べれるわね、楽しみだわ」
ジャイアントボアの肉もまだ残っている。当分は、食事に困る事はないだろう。
私は、上機嫌で後片付けを終えた後、家へと帰った。