5.ミッション決行です!
私は、しっかりローブを羽織りながら、目的地へと向かった。
ジャイアントボアに前回出会った場所まで行き、木の上に登りジャイアントボアを待った。
普段木の上にある果物を採るために鍛えた木登りの技術が、こんな所で役に立つとは。
私は自画自賛しながら、多めに持ってきた、早めのお昼ご飯を食べながら、ジャイアントボアが罠にかかるのを待った。
日が暮れると、魔物が活発化してしまう、出来ればその前には、仕留めたい。
ご飯を食べた後、少しウトウトしていると、ガサッと葉を踏む音が聞こえた。
来た!!
下を見るといつの間に来たのか、ジャイアントボアが罠の毒入り餌を食べている。
前と同じ個体かは、わからないが大好きなマッシュミツ茸も入れているので、匂いに釣られて来たのだろう。
私は、息をひそめつつ、ナァンナス貝の毒がぬられた、弓矢をジャイアントボアへ向けた。ジャイアントボアは頭部がもっとも硬く、頭突きで木を倒すほど強力だ。背中もぶ厚く毛や皮に守られているが、臀部や腹などは弱い。細いこの弓矢で倒せるとは、思わないが毒が効けば、倒せるかもしれない。
残念ながら、今は頭がこちらを向いているので、矢を放つわけにはいかない。
もし、万が一倒せなくても、木の上にいれば安全だ。いなくなるまで待っていればいい、完璧な計画だ。
餌(毒入り)を夢中で食べていた、ジャイアントボアの動きが止まった。
毒が効いてきたのだろうか、観察していると。
「ブオォォォッ!!」
毒が効いて苦しいのか、大きな咆哮を放った。私は驚いた拍子に、弓矢を落としてしまった。
「あっ!」
手を伸ばしたが、間に合わず、弓矢が下に落ちた。ジャイアントボアは雄叫びをあげながら、近くの木に突進を繰り返している。
私に気づいたわけではなさそうだったが、暴れまわっているジャイアントボアが運悪く、私のいる木に突進してきた。
「きゃあっ!」
私は木にしがみついたが、振動がすごくて、振り落とされてしまった。何とか、途中の枝につかまり、転落せずに地上へ着地することが出来たが、ジャイアントボアは相変わらず暴れ回っている。
ローブのおかげか、どうやらまだ、私に気づいていない。マジックバックからおじい様からもらった剣を出したが、真正面から戦って勝てる相手ではない。
私はここからすぐに逃げようとしたが、足がもつれて後ろ向きに倒れてしまった。
「あっ!」ドサッ
尻餅をついた私にジャイアントボアが迫ってくる!
もうダメだ!!私は衝撃を覚悟し、強く目をつぶった。
「?」
いつまで経っても、衝撃がやってこない事を不思議に思い、私はそっと目を開けた。
ドゴッッン!!
丁度ジャイアントボアが横向きに倒れた所だった。何が起こったのかわからず、ボーっとしていたが、自分の手や身体が真っ赤に染まっているのに、気づいた。
どうやら、私の姿が見えず、覆いかぶさるようにして、倒れてきたようだ。その時偶然にも剣先がジャイアントボアの心臓を刺したのだ。
先程まで、死をも覚悟していたが、助かった。ジャイアントボアは外皮は硬いが、お腹周りなどの皮膚が柔らかいため、そこが弱点となっている。
自分では、お腹の下に入ることは出来ないから、毒で倒そうと思っていたが、偶然にも腹下に入れたようだ。
いつまでも、ボーっとはしていられない。匂いで他の魔物が来るかもしれない。
早くジャイアントボアを解体して、マジックバックに入れなければ。
私は気持ちを切り替え、手足が震えるままに、解体作業にうつった。
大きくて、さっきまで自分を襲っていた、魔物がだと思うと、手が止まるが。
「これは、豚さん・・・・・・、豚さん」
以前、豚の解体を教えてもらい、その後、美味しく頂いたいい記憶を思い返しながら、手を進めていった。