3.おじいさまの夢をみました
家に帰ると、侍女が私の姿をみて驚いていたが、ケガがない事がわかると、
すぐに風呂へ連れて行かれた。
「先に、ご飯を食べたいのだけれど・・・・・・」
「いけません!こんなに汚れてしまって、はいこれを食べながらでいいので、お風呂に行きますよ」
私は、侍女から渡された、リンゴとスナックにんじんをかじりながら、お風呂へと向かった。
お風呂に入り、私には少な過ぎるお昼ご飯を食べ終えると、自分の部屋へと戻った。
午後は、川に行く予定だったけど、そんな気力も体力も残っていない。
疲れた身体をベッドに横たえながら、先程のことを思い返していた。
人と魔物が住む場所は、明確な境界線はないが、昔から、一定の距離感を保っていた。
魔物が人が住む場所に現れることは、ほとんどなかったし、人が魔物に襲われるなどの被害も、人が魔物の縄張りに入ってしまったことが原因だったので、縄張りにさえ入らなければ、安全だった。
同じ世界にいるのに、どこか遠い存在。それが、私の知る魔物だ。
私も実際にジャイアントボアを見たのは初めてだ。森の中とはいえ、あんな場所まで、下りてきているとは。何か今までにない事態を感じながら、私は自分の身体を抱きしめながら、目を閉じた。
◆◇◆
『おじいさま、ご本よんで』
『いいよ、こちらにおいで』
おじい様の低く通る声が小さな私を呼び寄せ、おじい様はいつものように膝の上にのせてくれた。
私はおじい様に本を読んでもらうのが、大好きだった。
その本の題名は『魔物図鑑』魔物の生態や姿が詳しく描かれた、おじい様が書いた本だ。
おじい様は元々絵描きになりたかったそうで、とても絵が上手だった。
しかし、おじい様が若いころは、魔物の被害が今以上にひどくて、若い者達は国から半ば強制的に、魔物の討伐が義務付けられていたそうだ。
つねに穏やかなおじい様からは想像出来ないが、おじい様は戦士としての才能があったようで、とても強かったそうだ。
元々、平民だったおじい様がいつの間にか英雄と称えられ、その功績から今の爵位と領地を王様から賜ったのだから、かなりのものだ。
本当は王都に残り、王様の護衛になるよう強く薦められたそうだが、田舎暮らしが性にあっていたおじい様は、それを断り地元へ戻り、晩年まで領民達と一緒に仲良く畑など耕しながら、悠々自適な生活を送っていた。
そして、絵を描くことが好きだったおじい様が、今まで出会った魔物を書いたのが、『魔物図鑑』だ。おじい様の冒険記とともに、語られる話が大好きで、よく読んでもらっていたのである。
私は、懐かしい夢から覚めると、勢いよく起き上がった。
「魔物図鑑は、魔物の弱点なんかも書かれていなかったかしら!」
私はベッドから抜け出し、大事なものを入れているチェストの中をあさった。
「あった!」
おじい様からもらった『魔物図鑑』はすぐに見つかった。
私はパラパラと本をめくった。
うぅん、これは・・・・・・、幼い頃は、普段見たことのない、魔物の絵が描かれているのが面白くて見ていたが、よくよく読んでみると、魔物の弱点どころか、生態や倒し方なども書いてある。
「これは・・・・・・、もしかして私でもいけるのでは?」
私の頭の中は次の図が出てきた。
魔物が畑の作物や家畜を食べる=私が食べるものが減る。
私が魔物を狩って食べる+作物や家畜はそのまま=私が食べるものが増える!!
これは、一石二鳥だ!!
度重なる、食事制限でストレスがたまっていた私は、それが一番の解決策に思えた。
マッシュミツ茸を食べられた恨みと、先程みた魔物がイノシシに似ていたのも、よくなかったかもしれない。
私の頭の中は魔物を食べることにシフトチェンジしていた。
そうと決まれば、私の行動は早かった。
夕食もしっかり食べた後、『魔物図鑑』からジャイアントボアについて、夜遅くまで調べて、作戦を練ることにした。
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