1.プロローグ
「サブリナ今日から、また食費を減らさなければならない」
父が気まずそうに、5杯目をおかわり中の私に言った。
「そうなのですか、それでは今日は5杯目でやめておきます」
まだまだ、食べたりないが仕方がない。私は今おかわりした食事をペロっと食べ終え、ナイフとフォークを置き、ナプキンで口を拭った。
「すまないな、魔物の被害が増えてきて、これから益々ひどくなりそうだ。これから採れる作物にも影響が出てきそうなんだ」
父は憂鬱そうに、ため息を吐いた。食事も進んでいない……。
残すのなら、譲ってくれないだろうかと不埒な事を考えながら、腹一分にも満たないお腹をさすった。
ここ最近どの地域も、魔物の動きが活発化しており、少しずつ被害が出てきている。魔物は森に近い村の畑や家畜を襲っているらしい。
夜に人里に下りてきているので、今のところ人が襲われたなどの被害はないが、小物の魔物が集まると大物の魔物を呼び寄せてしまうので、被害がでるのは、時間の問題かもしれない。
本当は、被害が出る前に、護衛を配置するのが安全だが、うちは貧乏子爵家なので、護衛や警備隊を雇うお金がない。
お金はないが、うちの良いところは、年中温暖な気候にあり、農作物がよく育ち無駄に広いので、畜産も盛んなことだ。つまり食べるのに困らないのが大きなウリだ。
それも、魔物の被害で難しくなってきている。死活問題だ!
前までは、白いふわふわのパンを好きなだけ食べれたが、今は全粒粉の硬いパンを10個までと決められている。
まぁ、噛みごたえがあって私は好きだが、量の制限は正直かなしい。
私、サブリナ・カーターは、大食いである、幼い頃は周りの子よりも、少し食べる位だったが、年を重ねる程に、食べる量が増えてきて、今では満腹になった事がない。
止められなければ、ずっと食べれいられる。
周りからは羨ましがられるが、いくら食べても太らない体質だ。
私があまりにも大食いなので、両親が心配して、医者に診せたりもしたが、どこにも問題がなく健康体だったようで
医者からは「鋼のように頑丈な胃袋ですね」と言われた……。レディに対して、何たる言い草。
食べている時は、至福の時だがすぐにお腹が減る。
私が大食いなのは、昔からの事なのでここに住んでいる人達は理解してくれて、
父と母を筆頭に、優しく見守ってくれている。
家では、普通のことだったので、初めて貴族のお茶会に参加した時は、地獄だった。
目の前にたくさんのお茶菓子や料理が並んでいるのに、ほとんど誰も手を付けないのだ。
貧乏貴族であり、食べ物を残すという概念がない私は、駄目だと思いつつも我慢できず、食べまくってしまった。
すると、直接は言われなかったが、「卑しい」、「品がない」、「意地汚い」などなど、
扇子で口元を隠しながら、ひそひそと、私に聞こえる声で、言われてしまった。
針の筵とはこう言う事だろう。
それから、お茶会に呼ばれても、『私の食いっぷりをバカにする会』になってしまうので、参加していない。
貴族の友人が一人もいない私を心配した母は、私がお茶会を開いたらどうかと、提案してくれたが、私だけでなく家族もバカにする人達と友達にはなれない。
それに何より、これが一番重要だが、私の取り分が減るし、大好きな食べ物を目の前にして、食べずにおしゃべりするだけなど、そんな拷問に耐えられそうにない。
それに、子爵家で働く人達や村のみんなとは仲良しなので、さびしさなどは感じていない。
特に厨房で働く人達とは、かなり仲良しなので、名前や人数だけでなく、勤務日もわかるほどだ。
小さい頃から、当たり前のように、毎日厨房へ何か食べるものがないか、通っているので、子爵令嬢として育てられたが、そこそこ料理もできる。
なので後々は、今は留学中の兄がカーター子爵家を継ぐので、私はいくらかの土地をもらって、自分の食い扶持を確保しつつ、自由気ままに生活するのが、夢だ。
初投稿です。
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