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竜のいない夜に〜薬師の村娘ですが、高潔の魔術師に溺愛されています〜  作者: 幌あきら
<第1章 : 王都政権交代の裏で> 第2部: 竜の被害と薬売りの兄妹
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8. 市場の店主〜義理の妹のお遣い〜

 シャールはなんとか、ご令嬢(れいじょう)たちの()()け出し、妹のリーナに頼まれたものを調達(ちょうたつ)しに市場(いちば)()ると、馴染(なじ)みの店主(てんしゅ)調子良(ちょうしよ)く声をかけてきた。


「シャール、(れい)(りゅう)(くすり)(もう)かってるか?」


「ええ、まあこのご時世(じせい)ですから。まあ、今はあんまりお(かね)()らないようにしています」


「まだリーナは開発(かいはつ)もやってんのか?」


「ええ。もちろん。しょっちゅう変な薬を開発(かいはつ)してますね。たまにこうして役に立ったりもするんですけど」


「いいねえ。ちゃんと育てた甲斐(かい)があったねえ。俺もそんな可愛(かわい)くて(かね)になる妹が欲しいよ」


「ははは、やめてください、(かね)になるから()いてるんじゃないですよ」


「でも、結果大金持(おおがね)ちだ」

 シャールは苦笑(にがわら)いした。


 シャールだって、この薬がこんなに売れるとは思っていなかった。


 リーナがこの薬を作った時は、(りゅう)は人の生活圏(せいかつけん)(おびや)かすほど数は多くなかった。


 ただ、村の近くに(りゅう)営巣地(えいそうち)があり、リーナがそこにしか()えない(くさ)を見つけて興味(きょうみ)を持っただけだった。たまたま見つけた効能(こうのう)だった。リーナは薬玉(くすりだま)として使いやすく調合(ちょうごう)した。


 そして今、ほぼ全て役人(やくにん)が買い取ってくれるようになった。


 もちろん、(りゅう)被害(ひがい)(さら)されているというのは国にとっては良くないことだったが、二人にとっては生活の(かて)となっていた。


 父も母も()くなり、二人でなんとか()らしていかねばならなかったから。シャールには特に何か(さい)があるわけではなく、リーナの薬を売ることしか思いつかなかった。


 リーナはリーナで、自分の興味(きょうみ)のあることだけに夢中(むちゅう)だった。食べるものや着るものにも無頓着(むとんちゃく)で、(かね)勘定(かんじょう)ができるタイプではなかった。 


 シャールは何とか薬売(くすりう)りとして家を(ささ)えていた。


(まず)しかった(ころ)はリーナにイライラしたこともあったけど。こんな薬を作ったよ! と楽しそうにしているリーナ見てたら、不思議(ふしぎ)不幸感(ふこうかん)が無くなるんです。しあわせな人がそばに()るのは良いことですね」


(ちが)いねえ。金持ちだろうが(まず)しかろうが、おまえらは幸せモンだ。だが、お前もいい(とし)になった。金も持ってる、見た目も悪くねえ。そろそろ(よめ)探してもいい(ころ)だ。(うわさ)じゃあちこちの御令嬢(ごれいじょう)に言い()られてるそうじゃねえか」


「またその話? 身分(みぶん)(ちが)いますよ。それに、私はまだいいんです」


「村にいるのか、いいのが」


「いませんよ。だってリーナがやばいでしょ。あんなの一人(ひとり)にしたら」


 シャールの()(わけ)に、店主てんしゅ(かた)をすくめた。


「どうしようもないねえ」

(つぶや)くと、次々リーナの入り用リストを見ながら在庫(ざいこ)を出してきた。


 リーナのお(つか)いはいつも膨大(ぼうだい)だ。シャールの空の木箱(きばこ)は次々に購入品(こうにゅうひん)()()くされていった。


 店主(てんしゅ)は、リーナのリストを見ながら、

ニ、三年前(にさんねんまえ)にリーナがここに来た時にさ、外国(がいこく)(めずら)しい生き物の標本(ひょうほん)入荷(にゅうか)してたんだ」

と話しはじめた。


「ただの虫さ。だがマイナス30℃とかの極地(きょくち)でも平気(へいき)な生き物だとかで、(からだ)組織(そしき)(こお)らせないために全身に特殊(とくしゅ)な物質持ってるんだと。それをリーナが欲しがってね」


「ああ…… なんかリーナが欲しがりそうなやつですね」

 シャールは(あき)れながら(うなず)いた。


「でもそん時、別のお客さんが入ってきて、その虫を一目(ひとめ)見て、リーナが何か言う前に代金(だいきん)置いて持ってっちまったんた」


「え…… リーナ以外にもそんなの欲しがる人がいるんですね……理解(りかい)できない」


「その人、今の魔術管理本部(まじゅつかんりほんぶ)長官(ちょうかん)なんだが」


「は?」


「ちなみにその人、この虫が寒さに合わせて体の水やエネルギーの代謝(たいしゃ)調節(ちょうせつ)もしてるかもってのを聞いて、それ魔術(まじゅつ)応用(おうよう)できないかって言ってた。(きた)ねーなりして、目ばっかりギョロギョロでさ。そんな感じで変なやつはたまにいるんだがな」


 シャールはリーナの服に無頓着(むとんちゃく)姿(すがた)(おも)()かんだ。

「ええ、分かります」


「まあそれはいいとして、リーナは(いま)だにその生き物が欲しいみたいでさ。ははは、(いま)だにさ、毎回リストにそれ書いてんだあ」

 店主(てんしゅ)はリストの最後の一行を指差(ゆびさ)した。

「ははは、毎回入荷(にゅうか)なんてねえんだけどよ」


「それ、リーナのただの趣味(しゅみ)だから、別に無くても(こま)りません」

 シャールは、きっぱりと言った。


「ああ、そうだろう。でもかわいいじゃねえか」

 店主(てんしゅ)は言った。

「あんな妹がいたら、(ほか)(おんな)には目がいかなくなるかもなあ」


 シャールは顔を赤らめた。

「ちょっと、何言ってるんですか」


()(つな)がってないもんな。だけどお前はお兄さんでしかねえだろ」

 店主の言葉にシャールは下を向いた。 


 そんなことは分かっている。どんなにリーナのことを思っても、リーナにとって、まだ自分は兄でしかない。


 店主はその様子をチラリと見てため息をついた。

「どうしようもねえな」

 店主は同じ言葉を()(かえ)した。


「まあいいや。妹によろしくな。うちも(もう)けさせてもらってるから」

 そして店主(てんしゅ)(たな)から小さな(つつ)みを出し「リーナに」と言った。


「何ですかこれ。変な虫でも入ってるんですか?」


「さすがに(ちが)わあ。髪の毛くくるやつよ。作業(さぎょう)する時(かみ)()邪魔(じゃま)だろ」


 こんなに愛されて、とシャールは思った。リーナが大事にされるとシャールは少し(ほこ)らしい気持ちになった。


 シャールは微笑(ほほえ)んだ。


「ありがとうございます、またよろしくお願いします」

とシャールは頭を下げた。


 店主(てんしゅ)は少し(まよ)った顔をしたが、()れくさそうに、

「同じ家に住んでて、気持ちを(こら)えきれんときもあんだろ。たいへんだな、シャール。だが、リーナは言葉で言わなきゃ分かんねーだろーよ。」

と彼なりの助言をした。

すみません、面白い物語を書きたいと思っています!!

皆様のご感想よろしくお願いします!


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評価はほんの少しでも構いません!!


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どうぞよろしくお願い致します。

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