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竜のいない夜に〜薬師の村娘ですが、高潔の魔術師に溺愛されています〜  作者: 幌あきら
<第1章 : 王都政権交代の裏で> 第2部: 竜の被害と薬売りの兄妹
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7. 薬売りと魔術師との出会い

「シャール様! お会いしたかったわ!」

 シャールが青い顔をしながら安全警備本部(あんぜんけいびほんぶ)の建物から出ると、突如(とつじょ)として声をかけられた。


「これは、エミリア様。このような所に。何か御用(ごよう)がございましたか?」

 シャールは(うやうや)しく頭を下げた。

 エミリアという令嬢はずっと外で待っていたらしい。


御用(ごよう)ってわけじゃないのよ。あなたがいらしてるって聞いて()けつけたの」


 エミリアは、大きな(ひとみ)でシャールを見上げて微笑(ほほえ)んだ。シャール様は素敵(すてき)。かっこいいし、(さわ)やかな笑顔をお持ちだし、礼儀(れいぎ)正しいもの。


(りゅう)(くすり)をお売りにいらしたんでしょう?」


「ええ、納品(のうひん)(まい)りました」

 シャールは弱々しく微笑(ほほえ)んで見せた。


 エミリアはすぐに何かを感じ取ったようだった。手を()ばし、シャールの少し長めの茶色い髪に()れた。


「シャール様、何か問題でもございましたの?」


「また(りゅう)被害(ひがい)が出ているようでして」


「え、また?」


「ええ。私も急いで戻って薬玉(くすりだま)増産(ぞうさん)せねばなりません」


「まあ…… そうですか。私も何かシャール様のお役に立てたら良いのに」

 エミリアはそう言って、シャールの手を取った。


「いえいえ、私はただの薬売りですから。エミリア様にそう言っていただけるなんてもったいないです」

 シャールは丁寧(ていねい)に言った。


 そのときふとシャールは、エミリアの父が魔術管理本部(まじゅつかんりほんぶ)の者だったことに気付いた。


「エミリア様のお父上は魔術管理本部(まじゅつかんりほんぶ)でございましたね。最近お(いそが)しくされているのでしょうか」


 シャールのその言葉を聞いて、エミリアは、はっと顔を(くも)らせた。心のうちで、彼女は最近の父のことを心配しているようだった。


「父は、(いそが)しそうですわ。ちょっと前に魔術管理(まじゅつかんり)体制(たいせい)が変わりましたでしょ? 父は人事系(じんじけい)部署(ぶしょ)()きましたが、何せ大改革(だいかいかく)ですので全部が手探(てさぐ)りで、神経(しんけい)を使うようですわ。あんまり私には(むずか)しいことは分かりませんが」


「そうですか。お(いそが)しいようですとお体が心配ですね」


 シャールはこないだの魔術管理本部(まじゅつかんりほんぶ)改革(かいかく)を思い出した。


 これまでさまざまな部署(ぶしょ)所属(しょぞく)していた魔術師たちが、魔術管理本部(まじゅつかんりほんぶ)一括(いっかつ)で管理されるようになったという。


 ハーマン長官の愚痴(ぐち)もこれに起因(きいん)する。


 それまで安全警備本部(あんぜんけいびほんぶ)部署付(ぶしょつ)きの魔術師で対処(たいしょ)していたものが、魔術師の所属(しょぞく)魔術管理本部(まじゅつかんりほんぶ)一本化(いっぽんか)されたため、魔術師を使いたければ魔術管理本部(まじゅつかんりほんぶ)要請(ようせい)せねばならなくなったのだ。


 自然と魔術管理本部(まじゅつかんりほんぶ)の発言力や魔術師の地位が上がったのだが、(りゅう)被害(ひがい)というような個別の案件(あんけん)に、迅速(じんそく)適切(てきせつ)対処(たいしょ)できているかというと、そうでもなかった。


 問題は根深(ねぶか)そうだ、とシャールはため息をついた。


 そこへ二人の魔術師風情(ふぜい)の男がやってきた。


 二人の身なりは立派で貴族(きぞく)子息(しそく)と見受けられたが、いかんせん薄汚(うすよご)れていて遠方(えんぽう)からの旅帰りにのように見えた。


「あ、エミリアじゃねーか! 誰だそのイケメン、彼氏?」


 金髪が言った。エミリアは顔を赤らめて、そうなのよ、そうなのよと(うなず)いた。


(ちが)います!」


 (あわ)ててシャールはかぶりを()った。


 エミリアはちょっとがっかりした顔をしたが、若い男の知り合いが話しかけてくる状況(じょうきょう)が、シャールに誤解(ごかい)を与えてはいけないと、(あわ)てて二人を紹介した。


「シャール様、こちらはロベルト様とエドワード様ですわ。父と同じ魔術管理の者ですの」


「そうですか、初めまして。私は薬売りのシャールと申します」

 シャールは(うやうや)しく頭を下げた。


「ロベルト様にエドワード様、また一段(いちだん)と汚い格好(かっこう)をされてますのね。遠いところに行ってらしたの?」


「ええ。国境(こっきょう)の方の地方都市に」


「仕事は順調(じゅんちょう)ですの?」


「今回の件は、まずまずと言ったところでしょうか」

「そ、やっと休暇(きゅうか)もらえたぜー。王都に戻って来れてサイコー」

 ロベルトとエドワードは笑顔で言った。


「それは良かったですわ。あ……」

 エミリアはシャールを()(かえ)った。

「ロベルト様、エドワード様。(りゅう)被害(ひがい)がすごいって、今シャール様が」


 シャールは

「はい、私は安全警備本部(あんぜんけいびほんぶ)の方に顔を出しておりまして。今しがたも(りゅう)被害(ひがい)の報告がございましたから」

と言った。


 ロベルトはああと暗い顔をした。そして(もう)(わけ)なさそうな顔をした。


(りゅう)の問題は聞いています。私も(こころ)(いた)めている。本来なら私もそちらに派遣(はけん)されたい。ですが、少々魔術関係者(まじゅつかんけいしゃ)の中で問題がありまして、そちらにの対応(たいおう)()われています」


 エドワードも「(りゅう)か」と忌々(いまいま)しげに(つぶや)いた。軽そうな風貌(ふうぼう)(わり)真面目(まじめ)な目つきだった。


 なるほど、とシャールは思った。


 この二人は遠方の都市にいた。そして魔術関係者(まじゅつかんけいしゃ)の問題。魔術管理本部(まじゅつかわりほんぶ)の中で()めているようだ。


 魔術管理本部(まじゅつかんりほんぶ)は今は外に目を向ける余裕(よゆう)がないのかもしれない。


「シャール様は竜避(りゅうよ)けの薬を作ってくださってるの」

 エミリアが言った。


 ロベルトとエドワードの目に(おどろ)きが(あらわ)れた。

竜避(りゅうよ)けの薬の(うわさ)は聞いています。あなたが作ったのですか」


「いえ、作ってるのは私の妹です。私は売りに来ているだけです」

 シャールは答えた。


「そうですか。あれは今とても役に立つ薬です。シャールさん、お会いできて光栄(こうえい)です」

 ロベルトは頭を下げた。


「ははは、すげーな。エミリアが熱上(ねつあ)げんのも何となく分かったわー」

 エドワードは笑った。


「もう、エドワード様ったら!」

 エミリアは顔を赤らめながら、チラリとシャールを見た。


「とんでもございません、私なんて」

 シャールが笑っていなすので、エミリアは心の中でぷうっとふくれた。もう、シャール様はいつも本気にしてくださらない。


 その時、きゃあきゃあと歓声(かんせい)が聞こえてきて、たくさんのご令嬢(れいじょう)()けつけてきた。


「シャール様とロベルト様とエドワード様よ! すごいわ、この三人が一緒にいらっしゃるなんて!」


「ぎゃあああ、なんか(とおと)すぎるわ!」


「エミリア? あなた、()()けは(ゆる)さないわよ!」


 ロベルトとエドワードは、しまった、面倒(めんどう)ごとに()き込まれた、という顔をした。


「ちょっと、邪魔(じゃま)しないで!」

 エミリアが(むら)がろうとするご令嬢(れいじょう)たちに立ちはだかるように抗議(こうぎ)した。


 しかし、ご令嬢(れいじょう)たちはエミリアの抗議(こうぎ)など気にも()めず、シャールとロベルトとエドワードを取り囲んだ。


 エミリアはすっかり()から()め出されてしまった。


「シャール様、私不整脈(ふせいみゃく)かしら、手を(にぎ)って調べてくださらない?」


「ロベルト様、疲れてそうね、私が(いや)やして()し上げるわ!」


「エドワード様、私に冒険(ぼうけん)のお話聞かせて!」


 シャールは(あと)ずさりした。

「すみません、ちょっとこのあと市場(いちば)の方へ()らないといけないので」


「あ、こら、お前だけ逃げるな!」


「そうだぞ! 友達だろ!?」


 ロベルトとエドワードが(あわ)ててシャールの服を(つか)もうとしたが、シャールは(もう)(わけ)なさそうにペコッと頭を下げた。友達? いつの間に?


「ええ〜ちょっとぉ〜」

「まあいいわ、まだロベルト様とエドワード様がいるわ!」


 ご令嬢(れいじょう)たちの苦情(くじょう)を後にシャールは荷車(にぐるま)を押して王宮を後にした。


 この(あと)は、大事(だいじ)な、妹のお(つか)いが()っている……

面白い小説を書きたいと思っています!もしよろしければ、皆さんのご感想、ご意見、よろしくお願いします!


またお手数ですが、

↓評価☆☆☆☆☆↓の方も入れてくださるとたいへんありがたいです!


評価はほんの少しでも構いません!

とても励みになります!


すみませんが、どうぞよろしくお願い致します。

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