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竜のいない夜に〜薬師の村娘ですが、高潔の魔術師に溺愛されています〜  作者: 幌あきら
<第1章 : 王都政権交代の裏で> 第7部: 真相と決意
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46. 袂を分かつ ~アデルを殺すのか、生かしておくのか?~

 ロベルトとエドワードは自室(じしつ)に戻るとベッドに腰掛(こしか)け、向かい合って顔を(なが)めた。


 アデル・コーエンから色々(いろいろ)聞けた。では次に自分たちのとるべき行動を決めねばならない。


 先に口を開いたのはエドワードだった。

「俺たちは、ずっとクレッカー長官(ちょうかん)の下で働いてきただろー? アデル・コーエンの話が本当だとしたら、それでもおまえはまだクレッカー長官の下で働く気か?」


「そうだな、アデル・コーエンの言ってることが本当なら、クレッカー長官は(さき)大臣(だいじん)()ってる政治犯(せいじはん)だ」

 ロベルトも考え込みながら言った。


 クレッカー長官は直属(ちょくぞく)上司(じょうし)で、これまで彼の仕事を手伝ってきたが、今後も彼の悪事(あくじ)に手を()すのかどうかというのは大事な話だった。


「おい。まさに今回のことは(わたり)(ふね)じゃねーのか? クレッカー長官を政治犯(せいじはん)失脚(しっきゃく)させるのは、()()()()()()()()都合(つごう)がいーじゃねーか」

 エドワードは率直(そっちょく)に言った。


 ロベルトは一瞬(いっしゅん)(だま)った。脳裏(のうり)に父と兄の顔がちらついた。彼らは()っている。


 それなので、

「ああ。全くだ」

と答えた。


「じゃあ、いいんだな? これに関係したところで()()()ってことで」

 エドワードは(ねん)()した。


 これは、2人に取って今のところ一番大事な確認事項(かくにんじこう)だった。


「ああ」

 ロベルトも覚悟(かくご)を決めて(うなず)いた。


 エドワードはそんなロベルトを見て微笑(ほほえ)んだ。ついにロベルトも動き出す。王都が変わるかもしれない。


 エドワードは武者振(むしゃぶ)るいした。


 しかしそのとき、エドワードにはふと先程(さきほど)のアデルとのやりとりが思い出された。

「アデル・コーエンとは利害関係(りがいかんけい)一致(いっち)するはずだった。なんでおまえは、アデル・コーエンには味方(みかた)しねーって決めたんだ?」


 エドワードは、ロベルトに(さか)らう気はないが、理由くらいは知りたいと思った。


 エドワードはニヤリとした。

「あーゆーの、タイプじゃねえって?」


「アホか」

ロベルトは苦笑(くしょう)した。


「そりゃ、アデル・コーエンたちが、あんまりふわふわしてっからだろ。あんなのに(いのち)(あずけ)けられるかよ、マジないわ」

とロベルトは言った。


「ああーそゆことね。それは同感。違いねえー」

 エドワードは大きく(うなず)いた。


「確かにな。俺も()にたくねーし、やるならうまくやりてーわ。基本(きほん)、最初は大々的(だいだいてき)には動けねーしな」

 エドワードは納得(なっとく)口調(くちょう)だった。


 ロベルトも続ける。

「アデル・コーエンたちの話はだいぶ参考(さんこう)になったが、残念(ざんねん)ながら、今のところクレッカー長官を断罪(だんざい)できるほどの証拠(しょうこ)はないよな。そこが問題だ」


「ああ、ぶっちゃけ使えねーな」

 エドワードも愚痴(ぐち)を言った。


「まあ、そう言うな。アイツらも()われながら、必死(ひっし)にできることをやってんだろうから」

 ロベルトは(たしな)めた。


「そりゃ分かってるさ、アイツらが動きにくいってことは。ただ、今のこの状況(じょうきょう)じゃ、何も確実(かくじつ)証拠(しょうこ)がねーから、クレッカー長官を断罪(だんざい)するなら、俺たちが結局(けっきょく)(イチ)から証拠集(しょうこあつ)めしなきゃいけないってことだろ。それが、めんどくせーなーと思ってさ」

 エドワードはうんざりと言った。


 ただ、

「まあ、(りゅう)? (りゅう)には使うってのはちょいとびっくりしたな」

とエドワードと苦笑(にがわら)いした。


 ロベルトも(うなず)いた。

「ああ。俺も(おどろ)いた」

 そして急に(けわ)しい顔になると、

「だが、あの(りゅう)の魔術とやらは、()()()()()くんだろうか?」

と言った。


 エドワードははっとした。

「それは、おまえ……。まあ、何かありゃ分かるだろ」


 二人は懸念事項(けねんじこう)が増えて、大きくため息をついた。


「でも、シャールとリーナが、(りゅう)、全部駆除(くじょ)するわ、あの感じ」

とエドワードは少し面白(おもしろ)そうに言った。


「シャールもアデルにはブチ切れだったな」

 ロベルトも笑った。


「まあ、なー。あいつ、安全警備本部(あんぜんけいびほんぶ)のハーマン長官(ちょうかん)のところで、(りゅう)には苦労(くろう)かけられっぱなしだったろうしなー」

 エドワードは少しシャールの気持ちが分かる気がした。


間違(まちが)いないね」

とロベルトも(うなず)く。


「この状況(じょうきょう)じゃ、シャールとリーナも、アデル・コーエンには味方(みかた)するのはあり()なさそーだな」

 エドワードは(つぶや)いた。


「ま、とにかく、俺たちは状況(じょうきょう)がどう(ころ)んでもいいように、あくまで水面下(すいめんか)で活動するぞ。俺たちの目的とか、(だれ)にも(さと)らせるな」

 ロベルトは(うで)を組んで言った。


「ほい。りょーかい」

とエドワードは意義(いぎ)なし、といった顔をした。


 そしてふと、確認しなければならないことを思い出した。

「ところで、、アデル・コーエンは、どーする? 命令通(めいれいどお)(ころ)すか?」


 ロベルトも同じことを考えていたが、

(ころ)した方がいいんだけどなあ。リーナが(いや)がるんじゃないか?」

と少しげんなりした顔をしながら言った。


「ああー。それは、なー」

 エドワードも同意(どうい)口調(くちょう)(うなず)いた。


「色々事情(じじょう)を知ってるから、いずれ何かに使えるかもしれんってことで……。保留……?」

 ロベルトは(まよ)いながら言った。


「ってことは、泳がすか。いや、それで、いーんじゃね?」

とエドワードは賛同(さんどう)した。


「そうか」

 ロベルトはやっと決断(けつだん)したように大きく(うなず)いた。


 だが、次の瞬間、エドワードは少し心配そうな顔をした。

「あ! でも、一つ、大事なこと。ぶっちゃけ俺らの知らん暗殺者(あんさつしゃ)がいるだろ。アデル・コーエンに例の魔術をかけたヤツ。そいつは、クレッカー長官の直属(ちょくぞく)と見て間違(まちが)い無いだろう? 俺らがアデル・コーエンにかけられてた魔術を()いちゃった(けん)は、魔術管理本部(まじゅつかんりほんぶ)にはどーやって誤魔化(ごまか)す?」


 エドワードの言葉にロベルトは頭をかいた。

「あー、それな。バリバリ()いちゃったもんなー。アデル・コーエンはとっくに()んでるはずなのに()きてるってなったら、クレッカー長官も何事(なにごと)だってなるよな。(だれ)が何をした?って。あんまり俺がこの魔術消せるヤツ使えることも知られたくないんだよな……」


 二人は少し(だま)った。


 そろときエドワードがポンと手を打った。

「あ、例の魔術掛けた魔術師の失敗(しっぱい)!ってことでいんじゃね?」


 ロベルトも笑った。

「あー、いいなそれ。俺らがアデル・コーエン見つけた時は(べつ)に元気でしたよ、みたいな」


 しかし、そう言ってからロベルトはまた(むずか)しい顔に(もど)った。

「いや、全然だめだろ。アデル・コーエンが何かの拍子(ひょうし)にクレッカー長官の仲間に(つか)まって、その時に、俺らに(こま)かい話聞かれた上に、魔術()してもらって、さらに解放(かいほう)してもらいました、なんて供述(きょうじゅつ)してみろよ」


「うわー、俺ら挙動不審(きょどうふしん)すぎる。一気(いっき)にクレッカー長官の中で重要(じゅうよう)参考人(さんこうにん)(あつか)いだね」

とエドワードは苦笑した。


 そして、

「俺らが首突っ込(くびつっこ)もうとしてんの大バレじゃん。知りすぎっつって、まじ俺らも始末(しまつ)されんじゃねーの」

とエドワードが続けた。


 ロベルトはため息をついた。

「もー、あれでいこう。俺らはアデル・コーエンをわざと泳がせて、(いも)づる(しき)(ねら)ってます、的な()(わけ)?」


「それしかねーかな。じゃあ、そういうことにしよう」

 二人は(もう)()わせた。


と、その時、エドワードはふと(いや)なことに気付いたように言った。

「つーか、俺らの存在(そんざい)こそがクレッカー長官の(つみ)(あかし)だよな」


 ロベルトはゆっくりとエドワードの顔を見た。


 エドワードは続けた。

「クレッカー長官が俺たちを使って、正当(せいとう)な理由なく魔術師暗殺(あんさつ)してたってなりゃ、問題じゃね?」


 ロベルトは(にが)い顔をした。

「しがない抹籍(まっせき)された魔術師(ごろ)しだ。長官殿(ちょうかんどの)ともなれば、理由も適当(てきとう)につけるだろ。余罪(よざい)でグレゴリー元大臣まで引っ張(ひっぱ)り出せる気はしない」


「ああ、そうだった。今のところ、アデル・コーエンの証言(しょうげん)しかないんだしな。(きび)しいわ」

 エドワードが(ちゅう)(にら)んだ。


「おい。さっきから、話が堂々巡(どうどうめぐ)ってる」

 ロベルトがため息をついた。


「そうだな。建設的(けんせつてき)な話をしよう」

とエドワードも賛成(さんせい)した。


「まあ、アレだ。クレッカー長官はアデル・コーエンの仲間を一人も()かしておくつもりはないんだろ? じゃあ、今後まだまだ、アデル・コーエンやその仲間が、(いのち)(ねら)われるってことだ。少なくともヤツらは(おとり)に使える」

とエドワードは言った。


「まあ、その周辺(しゅうへん)から、ちまちま証拠(しょうこ)でも集めていくか。とりあえず、ケイマン大臣とクレッカー長官には()めてもらいたいって兄がうるさいからな」

とロベルトが言った。


お読みくださってありがとうございます!


もし少しでも面白いと思ってくださった方がおられましたら、

ブックマークや、下のご評価☆☆☆☆☆↓の方も、

どうぞよろしくお願い致します!


とりあえず、残りあと2話で、第一章は完結し、第二章に、進んでいく予定です。

どうぞよろしくお願い致します!

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