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竜のいない夜に〜薬師の村娘ですが、高潔の魔術師に溺愛されています〜  作者: 幌あきら
<第1章 : 王都政権交代の裏で> 第7部: 真相と決意
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44. 竜を使い王宮を制圧する計画 ~シャールの怒り、俺は竜を駆除して回る、竜を使えると思うな!~

協力(きょうりょく)はしない”

 エドワードはロベルトがこういうとき、意思(いし)が変わることはないので、それ以上は何も言わなかった。


 ロベルトはアデルに向かって、(つめ)たい声で続けた。

「それに、(たと)えおまえの話が本当で、そして今後(こんご)クレッカー長官が(みずか)ら別の悪事(あくじ)(はたら)いたとして、おまえはどうやって王都に()り込むつもりだ? 魔術管理本部(まじゅつかんりほんぶ)からも除籍(じょせき)されているだろう。薄汚(うすぎた)いおまえらでは、とうてい王宮(おうきゅう)の中まで入っていけないぞ。しかも王都の警備兵(けいびへい)まで出てきたら、多勢(たぜい)無勢(ぶぜい)。あっという間に制圧(せいあつ)されて終わりだ」


 ロベルトの言葉にアデルは(くちびる)()んだ。


「ダミアンの時にも思ったが、おまえら実戦経験(じっせんけいけん)もあんまりないんだろう?」

とロベルトはさらに言った。


「手は考えているのだ」

 アデルは小さな声で言った。


「ほう? 言ってみろ」

 ロベルトが(つめ)たく言った。


我々(われわれ)()()す気はないんだろう? なら言えない」

とアデルも言い切った。


 ロベルトはふうっと息を吐いた。

立場(たちば)(まった)く分かってないようだな。俺たちはおまえらを(ころ)すように言われてるんだ。おまえらの価値(かち)は俺が今ここで()められるんだ」


 ロベルトの声は冷たかった。


 アデルはゾッとした。この男は“追っ手(おって)”だ。そして“協力(きょうりょく)もしない”。むしろアデルを(ころ)さない理由がない。


 アデルは覚悟(かくご)()め、

「……(りゅう)を使う」

と、言った。


(りゅう)だと?」

 ロベルトは(みみ)(うたが)い、聞き返した。


「そのために国外(こくがい)から(りゅう)()()せてきたんだ。(りゅう)大群(たいぐん)があれば、我々(われわれ)でも王宮の制圧(せいあつ)可能(かのう)だ」

とアデルは言いたくないことを、(しぼ)りだすように言った。


「おっと、私を今ここで(ころ)したところで、この計画は止まらないからな。私にもまだ仲間がいる。彼らが、きちんと計画を遂行(すいこう)してくれる」

 アデルは、急に殺気(さっき)(はな)ったロベルトを牽制(けんせい)するように言った。


「おまえらが、(りゅう)を?」

 そのとき、邪魔(じゃま)しないように部屋の(すみ)の方で話を聞くだけだったシャールが、突然(とつぜん)声を上げた。


「おまえらのせいだったのか!?」

 シャールの声は(ふる)えていた。


(りゅう)が増えて国中(くにじゅう)(たみ)(こま)っているぞ。その原因(げんいん)はおまえたちなのか? いくつも村が(おそ)われたぞ。たくさんの人が()んだぞ。たとえ命は助かっても、大怪我(おおけが)一生(いっしょう)歩けない者もいるぞ。大やけどで人目(ひとめ)()けて()らしている者もいる。いったいどれだけの人が家を失ったと思っているんだ……」

 シャールは(くや)しかった。(いか)りで()逆流(ぎゃくりゅう)するかと思った。


 それから、シャールは安全警部本部(あんぜんけいびほんぶ)のハーマン長官(ちょうかん)のやつれた顔を思い出した。村が(りゅう)(おそ)われるたびに()けずり回る警備兵(けいびへい)たちの個々(ここ)の顔も思い浮かべた。

「……どんなに(みな)が、(りゅう)から人を助けようとがんばっていることか」

 シャールは()るような目でアデルを見た。


「ああ。わかっている……」

 アデルは苦しそうに言った。


 シャールはアデルを(さえぎ)るように(さけ)んだ。

「分かっていない! 警備(けいび)の者たちが必死の思いで(りゅう)を追い払って、人々を守り、(すく)い出し……」


「そうだな。我々(われわれ)の中でも、(りゅう)を使うという(あん)が出た時に、真っ先(まっさき)(りゅう)の国民への被害(ひがい)の話が出た。一般(いっぱん)の人への影響(えいきょう)が大きすぎると。だが、他に手がなかった。そこの魔術師が言った通りだ。こんな弱い我々(われわれ)ではクレッカーと対等(たいとう)に話をするシチュエーションを作るには、(りゅう)でも何でも使うしかないのだ」

 アデルは下を向いた。


 そして()(わけ)のように

(さいわ)い、竜避(りゅうよ)けの(くすり)というものが出回(でまわ)り出した」

とアデルは言った。


 エドワードがため息を()いた。

「その竜避(りゅうよ)けの薬を作ってんのがこの兄妹(きょうだい)だ。どーやって作るか教えてやろーか? (りゅう)()(もぐ)()んで薬草(やくそう)()ってくるんだ。どんなに危険か分かるか? 初めてリーナに会ったとき、こいつ(りゅう)遭遇(そうぐう)して()にかけていたぞ。あんまり簡単に言ってくれんなよ」


 アデルは目を見開(みひら)いて、エドワードとリーナの顔を交互(こうご)に見た。


 アデルの目に(もう)(わけ)なさそうな(いろ)()かんだ。


 シャールはまだ(いか)りで手が(ふる)えていた。

「おまえたちの正義(せいぎ)とやらで、たくさんの(つみ)もない人が家や(いのち)(うしな)った。おまえたちの正義(せいぎ)は、それに(あたい)するほどの正義(せいぎ)なのか? クレッカー長官が人を(ころ)したのならそれはもちろん悪いことだが、(りゅう)(いのち)(おび)かされてまで、その悪事(あくじ)(あば)きたいなんていう一般市民(いっぱんしみん)は、俺を(ふく)めていないぞ」


 アデルは(だま)った。


大方(おおかた)、自分たちの(いのち)(ねら)われていて、こいつはそういうことまでは考えられなかったんじゃないか」

とエドワードはシャールに言った。


(つみ)もない市民には悪いことをしたな……」

 アデルは心苦しく息を()いた。


 シャールはアデルを(にら)みながら聞いた。

(りゅう)を使うって、おまえたちが作った魔術なのか?」


「ああ。正確にはダミアンが」

とアデルは答えた。


「ダミアンが……」

 シャールは茫然(ぼうぜん)とした。


 だが、すぐに気を取り直すと、

「今すぐこの村を出て行け!」

と言った。


 シャールは(いか)りがおさまらなかった。リーナは落ち着かせるようにシャールの()(うで)を回した。リーナは一瞬(いっしゅん)先日(せんじつ)のシャールのことが思い出されたが、今はそんなことどうでもよかった。


 シャールはアデルを(にら)みつけたまま、

「妹は、(りゅう)(あや)める薬を作った。(りゅう)は俺たちが駆除(くじょ)して回るからな。今後(りゅう)が思うように使えると思うなよ」

とシャールは言った。


 アデルは目を見開(みひら)いた。

(りゅう)(あや)める薬だと?」


「ああ。おまえの仲間に伝えるんだな。もう(りゅう)は使えないってな!」

 シャールはそう言い切ってしまうと部屋を出て行った。一人で考えることが山ほどあった。


 ロベルトとエドワードも

「おまえの話はよく分かった。俺らもよく考えないといけない」

とだけ言って部屋を出て行った。


「ええ、このタイミングで、私とアデルさんを二人きりにするの……」

 リーナはうんざりと(つぶや)いた。そして部屋の(すさ)んだ空気にため息をついた。


 そしてアデルの方を向くと、

「私も大方(おおかた)お兄様に賛成(さんせい)よ……。あなたも(ころ)されかけたり、仲間が(ころ)されたり、(つら)かったでしょうけど、だからといって(りゅう)の魔術のことは大目(おおめ)には見れないわ。(りゅう)のせいで大怪我(おおけが)をした人を何人も()てますからね」

と言った。


「すまないな、リーナ。おまえが怪我人(けがにん)手当(てあて)てや(りゅう)の薬を作ってるとは知らなかった」

 アデルは頭を()れた。


「そりゃ知らないでしょう。こんな村娘(むらむすめ)がまさかね。でも、私、一応(いちおう)薬師(くすし)なので。それから、まあ、あなたの体調(たいちょう)(もど)るまで、この家から追い出したりはしないわ。それは別件(べっけん)だもの。だから早く体調(たいちょう)(なお)してくださいね」

 リーナの事務的(じむてき)口調(くちょう)に、アデルは(もう)(わけ)なさそうに下を向いた。


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