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竜のいない夜に〜薬師の村娘ですが、高潔の魔術師に溺愛されています〜  作者: 幌あきら
<第1章 : 王都政権交代の裏で> 第1部: 追う者と追われる者
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4. 最後の伝言〜同僚の嘘〜

 アデルはベッドと机しかないな殺風景(さっぷうけい)部屋で、先程(さきほど)のダミアンの紙を食い入るように見つめていた。


 ダミアンは要点(ようてん)だけ、と言っていた。だが十分だった。アデルはダミアンのアイデアが分かった。


 深く深くイメージする。明日ダミアンがもう少し説明してくれれば私も使えるようになるだろう。アデルは深呼吸(しんこきゅう)した。


 その時、アデルの部屋に羽虫(はむし)が入り()んできた。


 一瞬鬱陶(いっしゅんうっとう)しいなと思ったが、うっすらと魔力を感じ、何か悪いものの予感がした。


 アデルはこれを一度見たことがあったような気がした。


 すぐにピンときて、片方(かたほう)(てのひら)を差し出すと、羽虫(はむし)はアデルの(てのひら)の上にふらふらと()り立ち、そのままパチンと光を(はな)って消えた。


 アデルの(てのひら)の上に文字が浮かび上がった。


 ()() ()()()()()()()() ()()()()()宿()()()()()


 急にアデルの動悸(どうき)がドクンドクンと(はげ)しくなった。


「ダミアン……!」

 アデルは頭を()きむしって(うめ)いた。


 アデルの脳裏(のうり)にダミアンの(おだ)やかな顔が浮かんだ。(むね)がぎゅっと()め付けられ、アデルの(ほお)(なみだ)(つた)った。


 まさか。


 まさか。


 だが、これに(かん)しては信じるべきだと思った。ダミアンは()危険(きけん)を感じてこれを送ったのだ。


 間違(まちが)いであれば明日ダミアンが自分から顔を出すだけだ。アデルは、とりあえずダミアンのメッセージを信じて行動するだけだ。


 アデルはダミアンの羽虫(はむし)のメッセージをもう一度(なが)めた。


 アデルは気丈(きじょう)()()おうと思ったが、足が(ふる)えて動けなかった。


 ダミアンの様々な表情(ひょうじょう)や、アデルに向けられたたくさんの言葉が思い出された。もう彼には会えないのだ。


「おまえのこと女と思ったことはねーよ」と、今日、つい(せん)だってダミアンは言った。


(うそ)つき」

とアデルは(つぶや)いた。


 まだ二人がもう少し若く、夢中(むちゅう)魔術(まじゅつ)開発(かいはつ)していた(ころ)、アデルは職場(しょくば)()(てっ)して本と格闘(かくとう)しながらつい眠り込んでしまった。


 よもや眠ってしまったか、どれだけ()ったかと、はっと目覚めると、ダミアンの顔がすぐ(となり)にあった。


 ダミアンは「こんなところで眠りこけるおまえが悪いんだからな」と言って、アデルの手の指に自分の指を(から)ませると、アデルの(かちびる)に思い切り自分の(くちびる)(かさ)ねたのだった。


 アデルはその時、あまりのことで気が動転(どうてん)して「無礼(ぶれい)だぞ!」と(さけ)んでダミアンを()()ばした。


「あの時は、私は魔術開発(まじゅつかいはつ)ばかりに青春(せいしゅん)(ささ)げて、私はおまえの気持ちが分からなかったんだ、ダミアン」


とアデルは思い出に(ひた)りながら(つぶや)いた。


 あの日ダミアンを拒否したことを後悔(こうかい)したことはない。私はそうして生きてきたから。


 ダミアンもあの日以来(いらい)(けっ)してアデルを女扱(おんなあつか)いしなかった。


 だが、今もダミアンの魔術の(のこ)()が、まだアデルの(てのひら)の上にかすかに残っていたので、アデルは()しむように()()くしていた。


 ダミアン、おまえは(いのち)をかけて私を助けてくれたのだな。それは、あの()(つづ)きなのかもしれない。


伝言(でんごん)感謝(かんしゃ)する」

 アデルは(つぶや)いた。


「ダミアン、おまえは、実は、私にとって、特別な男、だったのかもしれない」

 アデルは一言一言を大事そうに(つぶや)いた。

 (むね)の苦しさは(おさま)気配(けはい)がなかった。


(ゆる)さない、クレッカー! おまえがこの魔術師を取り巻く状況(じょうきょう)に何を(のぞ)もうと、私から仲間を(うば)っていい理由にはならない!」


 アデルは目を()じて首を()った。強く、何度も自分に言い聞かせた。


 ああ。


 そうだ。


 ふと、アデルはぼんやりとダミアンの(つま)と子のことを思った。


 危険ではないだろうか。いや、妻は魔術師ではないから、だいじょうぶなはずだ。


 だが、ダミアンの()(おし)えなければと思った。


 ただでさえ子供が()まれる前に(おっと)が急に消えたのだ。心細(こころぼそ)かったろう。


 今となってはもう(かな)しみや(いか)りを(とお)()して、(おっと)のことなど(わすれ)れてしまったかもしれないが。


 アデルはかつてのダミアンの(つま)のことを思った。彼女が頭を下げてダミアンと一緒(いっしょ)になりたいと言ってきた時のことを。


 なぜダミアンの(つま)がわざわざアデルに(ことわ)りを()れにきたのかは分からない。


 だがあの時の彼女の真剣(しんけん)表情(ひょうじょう)は今も(わす)れられなかった。


 もし真相(しんそう)を知りたいと(つま)(ねが)うなら、私には説明する義務(ぎむ)があるのかもしれない。


 なぜか分からないが、アデルはぼんやりと思った。


 どれくらい()()くしていただろうか。()っ立っていた足と、ダミアンの魔術の(のこ)()を受け止めていた手が(いた)くなって、ようやくアデルは(われ)に返った。


「ああ、そうだ、早く皆に知らせなければならない」


 だが、ダミアンのことだから連絡は(みな)()ばしていることだろう。


 アデルは、もう片方(かたほう)の手をぎゅっと(にぎ)った。


 そこにはダミアンが先程(さきほど)アデルに(にぎ)らせた紙片(しへん)が入っていた。


 これこそは(みな)に知らせなければならないものだ。私がしっかりしなくてどうする。


 アデルは冷静(れいせい)さを()(もど)し、目をしっかりと開いた。


 そして外套(がいとう)羽織(はお)ると部屋を出て、仲間の元へと出かけた。


 手にはダミアンが今日(わた)してくれた紙がある。


 そこには人を捕食(ほしょく)する(りゅう)(あつ)める魔術の原理(げんり)が書いてある。私たちはダミアンの残したこれを完成(かんせい)させて、()すべきことをするだけだ。


 この国の(りゅう)はどんどん増えるぞ。被害(ひがい)甚大(じんだい)なものになるかもしれない。

 だが、もはや、我々(われわれ)も、今更(いまさら)手段(しゅだん)(えら)んではいられないのだ。


(ゆる)さない、クレッカー。 私は必ずおまえに報復(ほうふく)する」

皆様に面白いと思ってもらえる作品を書きたいです。ご感想などよろしくお願いいたします。


また、励みになりますので、


お手数をおかけして申し訳ありませんが、


もし少しでも面白いと思っていただけたら


↓ご評価☆☆☆☆☆↓の方、


ほんの少しで構いませんので、


ぜひぜひよろしくお願い致します!

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