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竜のいない夜に〜薬師の村娘ですが、高潔の魔術師に溺愛されています〜  作者: 幌あきら
<第1章 : 王都政権交代の裏で> 第5部: アデルと死の魔術
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31. ロベルトとエドワードの確信 〜病気と思っていたものは〜

「ロベルト、シャール神経質(しんけいしつ)()ぎね?」

 シャールとリーナを見送ってから、エドワードはロベルトに話しかけた。


 せっかくリーナと二人きりだったのに、シャールに()(さら)われてエドワードは不機嫌だった。


「ああ。あれはどう見ても、リーナを変な男に(さわ)られたくないって感じだったな」

 ロベルトも(うなず)いた。


「変な男?」

 エドワードは不満(ふまん)げに言った。


「ってゆーか、兄妹、のはずだよな」

 エドワードは首をかしげた。


「ってゆーか、それよりリーナ、どーしたんだろーな」

 エドワードがちょっと真面目(まじめ)な顔になった。


「何かあったのか?」

 ロベルトが聞く。


「いきなり王都(おうと)流行(はや)(やまい)の話聞かれてさ」

 エドワードは意味が分からないといった様子で答えた。


流行(はや)(やまい)?」

とロベルトは()り返した。


「ああ。だからちょっと前に見た、瀕死(ひんし)の男の話をふと思い出したからさ、それ言ったら、リーナが青くなっちゃって。なんか()たような症状(しょうじょう)の人がいたのか?」

 エドワードは考えながら言った。


 ロベルトははっとして、

「あー、そういうことね」

(けわ)しい顔で言った。


 エドワードは怪訝(けげん)そうな顔をした。

「何だよ、”そーいうこと”って」


 ロベルトは一瞬(いっしゅん)躊躇(ためら)ったが、仕事と判断(はんだん)すると、はっきりとした口調(くちょう)で、最近のリーナの真夜中(まよなか)外出する(がいしゅつ)のことを説明した。


 エドワードはぎょっとした顔をした。ロベルトは(うなず)いた。


 リーナが例の関係者に接触(せっしょく)したのかもしれない。


「何その偶然(ぐうぜん)。あり()なくない? だってカレン・ホースの(けん)別件(べっけん)だろ?」

とエドワードは言った。


「いや、別件(べっけん)ってほど別件(べっけん)じゃなくないか? ダミアンは関係者だ」

とロベルトは冷静(れいせい)に言った。


「そーか? カレン・ホースの(けん)で来てる村に、別の関係者が現れる……。俺らにとっちゃカモネギシチュエーションじゃねーか!」

 エドワードは言った。


「ああ。だが、ダミアンの()を知ったお仲間が、カレン・ホースに接触(せっしょく)しようとしたんだったらアリだろ」

とロベルトは言った。


「あー、そー言われれば?」

 二人は顔を見合わせた。


「でも、えーっと、今、そのリーナが接触(せっしょく)してるヤツ、前の、クラウス・モーゼルの(けん)のときと同じ症状(しょうじょう)が出てんのか? なんか(へん)じゃね?」

とエドワードは頭を(ひね)った。


「そうだな。何だろうな、この症状(しょうじょう)偶然(ぐうぜん)かもしれないが、偶然(ぐうぜん)じゃないかもしれないな」

とロベルトも頭を抱えた。


「とりあえず、リーナにこの症状(しょうじょう)のこと聞いてみるか。俺に聞くってことは、何か感じてるってことだろ」

 エドワードは言った。


「いや、素直(すなお)に言うかな。わざわざ俺らに(かく)して、夜中(よなか)外出(がいしゅつ)するってことは」

 二人はため息をついた。


「なあ」

 エドワードが口を開いた。

「ちょっと、そもそもなこと聞くんだけど。俺らが()看取(みと)ったり、(ころ)して回ってるあいつらって何者だ? 何も聞かされてねーんだけど」


「前の魔術管理本部(まじゅつかんりほんぶ)の人間だそうだ。だから俺ら魔術師が派遣(はけん)されてる。なんでも、良くない魔術を開発したんだって、前にも言ったろ」

とロベルトは面倒(めんどう)くさそうに答えた。


「良くないってなんだよ」

とエドワードは聞いた。


「そこまでは聞いてないな」

とロベルトは答えた。


「は? 聞いてないって、誰に」

 エドワードは聞いた。


「ああ、知り合い」

 ロベルトがちょっと目を()らしたのをエドワードは見逃(みのが)さなかった。


「知り合いって誰だよ、怪しいな!」

 エドワードは食い下がる。


「だから、知り合い。そいつクレッカー長官に近いとこで働いてるっていうから、ちょっと聞いてみたんだよ。どれくらい危ない仕事かとか知りたかったし」


 ロベルトの口調(くちょう)()(わけ)じみたものを感じ、エドワードはニヤニヤした。

「へー、付き合ってんの?」


「……」


「え、マジ?おまえ彼女(カノジョ)いたの。聞いてないぞ」

 エドワードは真顔(まがお)になった。


「いや、違う、昔だ。別にお前に関係ないだろ。もう半年ほど前に別れた」

 ロベルトはそっぽを向いて言った。


 エドワードはロベルトの反応が面白(おもしろ)かった。

「次から女できたら教えろよ」


「教えねーよ!」

 ロベルトが怒鳴った。エドワードは笑った。


「それに、良くない魔術なんて建前(たてまえ)だよ。本当は別の理由さ。それはおまえが言ったんだろ」

とロベルトはぶっきらぼうに言った。


 それから二人は少し(だま)った。


 静まり返った部屋で時計(とけい)の音だけが、聞こえてきた。


「なあ、もし、リーナの見た人間が同じ症状(しょうじょう)だったとして、あれは何の病気だ?」

 エドワードはロベルトに聞いた。


「それは俺も分からない」


「なんかの感染症(かんせんしょう)か?」


「……どうだろうな。もし感染症(かんせんしょう)なら、市中(しちゅう)にも出て、今頃(いまごろ)王都(おうと)衛生管理部門(えいせいかんりほんぶ)話題(わだい)になってても良さそうだが。やつらは市中(しちゅう)(かく)れてるんだから」

とロベルトは首を()った。


「じゃー、何であいつらが、同じ病気に?」

 エドワードは()に落ちない顔をした。


「同じかは分からん。あれは(めずら)しい症状(しょうじょう)じゃないだろう。たまたま()てるだけで」

 ロベルトはエドワードを(たしな)めた。


「俺は(いや)予感(よかん)がするよ。あいつらは、良くない魔術を開発(かいはつ)して処刑(しょけい)されることになってる。そいつらがたまたま同じ病にかかってるって。なあ、あれは本当に病気か?」

 エドワードは言った。


 エドワードの言葉にロベルトははっとした。


「もしや、魔術(まじゅつ)か!?」


 二人は顔を見合わせた。


「いや、でもあんなの見たことないぞ。人を病気にさせるなんて前代未聞(ぜんだいみもん)だ」

 ロベルトは全ての魔術を知っているという自負(じふ)から、はっきりと言った。


「だな。そんな魔術作ったんなら、そいつはすげーヤツだぜ」

 そこまで言ってエドワードははっとした。


「……だが、人を病気にさせるってのは、使い方によっちゃ、ものすごく便利だ」

 ロベルトは言った。


「ああ。まったく。そーだな、暗殺(あんさつ)にはもってこいだぜ」

 エドワードも(みと)めた。


暗殺(あんさつ)する(がわ)はこの魔術が公表(こうひょう)されない方が何かと便利だな」


 それから二人はまた少し(だま)った。


 それからロベルトが

「ちょっと待て。あれが魔術って証拠(しょうこ)はないぞ。何妄想(もうそう)(ふくら)らませてんだ、俺ら」

と言った。


「でも、あの病気が魔術ってのは、俺はアリだと思うぜ。」

 エドワードが言った。


 しかしロベルトは首を横に()った。

「俺は違うと思う。魔術なら痕跡(こんせき)が残る。俺らが見た奴らからははっきりした魔術の痕跡(こんせき)はなかった」


「そうか。じゃあリーナに聞いてみようぜ。あいつも何か感じてることがあるんじゃね? それに、リーナが接触(せっしょく)したかもしれない関係者。そいつにも聞けば」

 エドワードは言った。


 ロベルトは急に(だま)った。


 (うで)を組んで考え込み、頭を整理した。


 それからエドワードに確認するように、低い声でゆっくりした声で

「それはお前、首突っ込む、ということでいいか?」

と聞いた。


 ロベルトの言葉にエドワードははっとした。

「あー確かに。余計(よけい)なこと知っちゃうと俺らもヤバいかもな」


「俺たちはこれまでうまくやってきただろう。ここで、俺たちは……」

 ロベルトは強い口調(くちょう)で言った。


 エドワードは(めずら)しくロベルトが興奮(こうふん)していることに気付くと、冷静(れいせい)に引き(もど)すようにゆっくりとロベルトの(かた)(たた)いた。


「らしくねーな、ロベルト。ここまで疑念(ぎねん)が出てて、おまえはコレだとは思ったんだろ? ロベルト、おまえの本当の目的に、俺は(したが)うよ」


 ロベルトは一瞬(いっしゅん)止まった。そして目を()せた。迷っているようだった。


 だが、ロベルトはふーっと大きく息を吐いた。


 ロベルトはエドワードの覚悟(かくご)に感謝した。


「エドワード、悪かった。間違(まちが)ってたのは俺だ。そうだな、俺は進む。だが、そうだからこそ、俺たちはうまくやらなければならない」


 エドワードは(さっ)して(あわ)てて言った。これまで、ロベルトが実家の問題で板挟(いたばさ)みになって苦労してきたことを知っていたからだ。


「すまん。悪かったよ、言いすぎた。上に(さか)らえってんじゃないだ。上に(さか)らうのはやめようぜ。おまえは本当にこれまでうまくやってきた。俺も()(いくさ)はしたくねー。うまくやろーぜ」


 ロベルトはエドワードに感謝した。ロベルトは心が軽くなった気がした。


そして

「ああ」

とロベルトは(うなず)いた。


「よし、じゃー、リーナとその接触者(せっしょくしゃ)だな」

とエドワードは言った。


「ああ。だが俺らの話はあくまでただの妄想(もうそう)だ。リーナにも(あや)しまれないよう、ちゃんと手順踏(てじゅんふ)んでいくぞ」

 ロベルトは言った。


 二人の意見は一致(いっち)した。


 その時エドワードが、ロベルトに遠慮(えんりょ)しながら

一応(いちおう)、リーナをむやみに傷つけんのはやめてね」

と言った。


 ロベルトはふっと口元(くちもと)に笑みが浮かんだが、

「それ意識すると急に難易度(なんいど)上がる」

とわざとうんざりしたような声を出して(おう)じた。


が、ロベルトは急にはっとして、

「ところで、おまえ、リーナと何かあった?」

と聞いた。



お読みくださってありがとうございます!


今後の励みになりますので、もし少しでも面白いと思ってくださった方がおられましたら、


下のご評価↓☆☆☆☆☆↓の方、


ほんの少しでも構いませんので、


どうぞよろしくお願いいたします!

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