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竜のいない夜に〜薬師の村娘ですが、高潔の魔術師に溺愛されています〜  作者: 幌あきら
<第1章 : 王都政権交代の裏で> 第4部: カレン、夫の死を知る
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25. 告げ口 〜兄の怒り〜

「リーナ、昨日居候(いそうろう)さんとどっか出かけた?」

 朝、畑へ行く道が一緒になり、グレースがリーナに聞いた。


「出かけた…」

 リーナは昨日のエドワードのキスを思い出して、一瞬(いっしゅん)耳が真っ赤になったが、すぐに()(つくろ)った。


 そして

「何で?」

とリーナは聞いた。


「うちのお兄ちゃんがいつもの10倍(きん)トレしてる」


「はあ? だから何で?」

 リーナは(あき)れて聞く。


「さあ? 筋肉(きんにく)は男をあげるとか何とか言ってたかな」

 グレースもため息を()じりに答える。


「へええー。で、グレースはそんなベナン見てどーしたの?」

 リーナはグレースを()(どく)に思って聞いた。


「ほっとくよね、とりあえず」


「冷たいわね、止めてあげなよ」


「そ? ま、どのみちお兄ちゃんには元々(もともと)勝てる見込(みこ)みはないしね」

 グレースは苦笑(くしょう)しながら言った。


「どーいう意味?」


「なんでもないよー」

 グレースは笑って言った。


「それよりさ。ねー、リーナ。イケメンとどんな話すの?」

 グレースは興味津々(きょうみしんしん)といった口調(くちょう)で聞いた。


「なんだろう。私の薬のことばっかり。普通はどんな話するのかな?」

 リーナは首を(かし)げた。


「私も分かんないから知りたいのに! 好きな食べ物とか、好きな動物とか話すのかしら」

 グレースは頭を(ひね)った。


「そうなんだ! そーゆー話するのね。今度してみるよ、イケメンと」

 リーナは(まか)せて!といった顔をした。


 と言ったものの、キスしてしまってから、何の話ができるだろう、とリーナは思っていた。


 しかし、グレースは無邪気(むじゃき)

「うん、がんばって! イケメン貴族(きぞく)って普段(ふだん)何食べてんのか、私も興味(きょうみ)あるわ。教えてね」

と言った。


「うん! でもイケメンってどんな動物が好きなのかしらね」

 リーナは首を(かし)げた。


「うーん… タガメとかじゃないかしら」

とグレースは考えた(すえ)、答えた。


「ああ。タガメはカッコいいわよね。カブトムシは王道(おうどう)すぎるものね」

とリーナは(うなず)いた。


「でも貴族(きぞく)よ? もうちょっと(ちが)う生き物な気がするな」

とリーナはそれとなく言った。


 そこへ、すでに(あせ)だくになったベナンが畑にやってきた。

「何、虫の話してんだ?」


「お兄ちゃん! (きん)トレ終わったのね。ようやく働く気になってくれて(うれ)しいわ」

とグレースは言った。


「リーナ、昨日のこと聞いたぞ。気をつけろよ。男はみんなオオカミだから」

 ベナンは(けわ)しい顔をして言った。


「男の人はみんなオオカミ…? 何それ?」

 リーナはポカンとして聞いた。


 グレースがリーナの背中をさすった。

「男の人は女を見ると食べちゃうのよ」

 普段から面倒見(めんどうみ)のよい兄に守られているグレースも、いまいちよく分かっていないようだった。


 ベナンは頭を(かか)えながら、

「とにかく、アレだ、知らん男と二人でどっか出かけるなよ。シャールにもさっき会ったから伝えといたぞ」


「え!? あ、しまった。ベナンのお節介(せっかい)!」

 リーナは、シャールに(りゅう)()勝手(かって)に行くなと言われた約束(やくそく)(やぶ)ってしまったことを思い出した。


「何がしまった、だよ。シャールに(おこ)られてこい」

 ベナンはムッとして言った。


 リーナが家に帰りたくないと思いながら畑の手入(てい)れをしていると、

「リーナ」

と地に(ひび)くような重々(おもおも)しい声がした。


 シャールが仁王立(におうだ)ちで立っていた。


 (あさ)イチの村長の用事をぱぱっと片付(かたづ)けて、その足でリーナのところへ来たようだった。


「あー、お兄様(にいさま)、わざわざこんなところまで…」

 リーナは()(あせ)をかいて言った。


 シャールの顔は笑っていなかった。


「リーナ、エドワードと出かけたんだって?」

(こわ)い顔をして言った。


「あ、はい、お兄様」

 リーナは素直(すなお)(うなず)いた。


「何しに、どこへ?」

 シャールの声は(きび)しい。


「……すみません、(りゅう)()へ……」

 リーナの言葉に、シャールの顔色(かおいろ)がさっと変わった。


「おいっ」

とシャールはリーナの(うで)乱暴(らんぼう)(つか)んだ。


(りゅう)()に行くときは俺と一緒(いっしょ)だと、こないだあれほどしっかり言ったはずだぞ…!」


「あ、ごめんなさい。でも危険はなかったの…! ほら、いざとなっても、エドワードは魔術師だから(りゅう)もやっつけれるって…」

 リーナは(あやま)りながら()(わけ)した。


「そういうことだけじゃない。俺との約束(やくそく)は!?」

 シャールの目は(いか)りが(にじ)んでいた。


「あ、ああ、ごめんなさい…」

 リーナは(もう)(わけ)なさで頭を()れた。


 シャールはハッと(われ)(かえ)った。


 そして(あわ)てて強く(つか)んでいたリーナの(うで)(はな)した。


 シャールはふうっと冷静(れいせい)になるために大きくため息をついた。


 そして、そっとリーナの(ほお)に手を()ばした。

「だいじょうぶだったか、何もなかったか?」


「あ、はい、お兄様」


「…何も、されなかったか」

 リーナは急に言われてドキッとした。


「お兄様、そ、それは、い、いえ、何もないわ!」

 リーナはどぎまぎしながら答えた。


「そうか…」

 シャールは(つか)()った顔をリーナに向けた。

「リーナ、何度も言うが、(たの)むから危険なことはやめてくれ。俺の目の(はな)れたところでは……本当にやめてくれ」


「分かったわ。でも、お兄様、本当にエドワードはただ親切(しんせつ)で…。薬の材料(ざいりょう)を…」

 リーナはエドワードを(かば)った。


 シャールは一瞬(いっしゅん)悲しい目をした。


 それから(さと)すように言った。


「リーナ、気をつけないとだめだ。エドワードが親切(しんせつ)? 本当に信用(しんよう)()る男か? リーナはあいつの何を知ってるの? この村に来た目的は? なぜカレンへの伝言(でんごん)を俺たちに(たの)む? 不審(ふしん)なことが多すぎるよ。あまり信用(しんよう)しすぎるな」


 リーナは言葉が()まった。

「そんな、悪い人みたいに…」


「もちろん、お前を(りゅう)から助けてくれたことは感謝(かんしゃ)している。だがエドワードだけじゃない、ロベルトだってそうだ。あいつの背負(せお)ってる重い空気は何だよ? あいつらは尋常(じんじょう)じゃない。警戒心(けいかいしん)は持っといて(そん)はない」


 シャールはリーナの(うで)を取った。


 話の内容までは聞こえないまでも、シャールとリーナの様子を(となり)の畑で見ていたベナンは呆気(あっけ)に取られていた。

「シャール、すげー剣幕(けんまく)だな」


「あー、そういえばリーナんちには、もう一人イケメンがいたんだったわ」

 グレースは頭を(かか)えた。


「はあ? シャールってイケメンか?」

とベナンが言った。


「うん、私も見慣(みな)れすぎてて(わす)れてた」

とグレースは言った。


 ベナンは、まじか、といった顔をした。


 そしてベナンとグレースは顔を見合わせた。


 あのシャールの様子、ただの家族の心配ってわけじゃなさそうだ。


「シャールってさ、いいヤツだよね」

とグレースは言った。


「ああ。実際、この村はシャールがいてくんなきゃ(おさま)らないことがいっぱいあるよな。もはや村長の片腕(かたうで)だし」


「だよね。幸せになってもらいたいわね」

 グレースは小さな決心(けっしん)(むね)(いだ)いた。


読んでいただきありありがとうございます!


今後の励みになりますので、もし少しでも面白いなと思って下さった方がおられましたら、

下のご評価↓☆☆☆☆☆↓の方、


ほんの少しの評価でも構いませんので、


お教えいただけたらと思います!

お手数をおかけして申し訳ありませんが、どうぞよろしくお願い致します!

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