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竜のいない夜に〜薬師の村娘ですが、高潔の魔術師に溺愛されています〜  作者: 幌あきら
<第1章 : 王都政権交代の裏で> 第4部: カレン、夫の死を知る
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24. 魔術師が不意にキスしました

「ほい、とりあえず、ネズミ10匹」

 エドワードはポンポンと魔術で拘束(こうそく)したネズミをリーナの(かご)に入れていった。


「うん、ありがとう!」


「とりすぎても良くないんだよな?」

とエドワードは聞く。


「うん、これくらいにしとく」


「よし。(りゅう)がいなきゃ本当簡単(かんたん)な仕事だな。いい気分転換(きぶんてんかん)になったわー」

 エドワードは満足(まんぞく)そうに()びをして、笑顔になった。


「うん、じゃ、帰りましょ。このネズミ()えるかしら。いろいろやることありそうね」

 リーナはワクワクが()まらない顔をして言った。


と、そのとき、拘束(こうそく)(あま)かったネズミがリーナの(かご)から飛び出した。


 (あわ)てて追いかけて(つか)まえようとしたリーナに、興奮(こうふん)したネズミは背中(せなか)(じゅう)()逆立(さかだ)たせ、()みつこうとした。


 (けっ)して小さいネズミではない。小さなうさぎくらいの大きさはある。


「あぶね!」

エドワードは咄嗟(とっさ)にリーナを(つか)むと(うし)ろに引き戻した。


 そのとたん、ネズミが飛びかかりエドワードの、(かた)()み付いた。


 齧歯類(げっしるい)(するど)()


 ネズミの()はエドワードの(にく)(えぐ)った。


 ()割合(わりあい)(はや)いスピードでエドワードの服に(にじ)(はじ)めた。


「いってーっ! やりやがったな、もう」


 エドワードは(かた)()さえながら、めんどくさそうにもう一度拘束(こうそく)の魔術を使ってネズミを確保(かくほ)した。


「だいじょうぶ!?」

リーナが(さけ)んだ。


「だいじょうぶ。そもそも俺の魔術(まじゅつ)失敗(しっぱい)。リーナは気にすんな」


「そういうわけには!」

 リーナはエドワードの(かた)(のぞ)()んだ。


「おい、やめろ。服(よご)れるぞ」


「そんなのどーでもいーわよ! エドワード、怪我(けが)すごい! きっとネズミも渾身(こんしん)の力で()んだのね。手当(てあ)てするから! 傷口(きずぐち)からくる(ねつ)など出しては明日に(さわ)ります」


 リーナは手持ちの軟膏(なんこう)など、いくつかの応急処置(おうきゅうしょち)用の(くすり)を取り出した。


手当(てあ)てなんていーって。ただのネズミだし。あとで自分で処置(しょち)すっから」


「だめ! 傷口(きずぐち)からの感染症(かんせんしょう)(いのち)()とすものが多くいるわ。特にこれは野生(やせい)のネズミ」

 リーナは(すご)剣幕(けんまく)で言った。


「私の薬は感染症(かんせんしょう)(おさ)えることができます。(しん)じなくとも結構(けっこう)ですが、この薬、()らないより絶対(ぜったい)()った方がいいわ。断言(だんげん)する」


 リーナの必死(ひっし)な目にエドワードは気圧(けお)された。


「あ、う、うん。わかった、(まか)せるよ」

とエドワードは言った。


「うん。本当にごめんね。ありがとう」

 リーナはエドワードの上半身(じょうはんしん)の衣服を()がせ、(かた)()(きず)()た。


特殊(とくしゅ)なところにしか()まないネズミなのが、不幸中(ふこうちゅう)(さいわ)いだけど、(ぎゃく)に何の感染症(かんせんしょう)持ってるか分からないところが(こわ)いわね」

 リーナは考え込んでぶつぶつと(ひと)(ごと)を言った。


 そして、エドワードの(かた)()(きず)()(ぐすり)()り込んでいった。独特(どくとく)(にお)いがした。


「つっ」

 リーナが(きず)圧迫(あっぱく)したのでエドワードが顔を(しか)めた。


「あ、ごめん、だいじょうぶ!? すみません。でも我慢(がまん)して下さい。()れると(いた)いからと中途半端(ちゅうとはんぱ)処置(しょち)をしていては予後(よご)が悪くなるわ」

 エドワードの(かた)に手を当てた姿勢(しせい)でリーナが言った。


 その真摯(しんし)眼差(まなざ)しにエドワードは大人(おとな)しく(したが)った。


「終わりました。手持ちの薬はこれだけなの。家に帰ったらもう一度ちゃんとするわね。でも、絶対(ぜったい)()った方がいい薬なんだからね。信じてね。」

 リーナはエドワードの(かた)包帯(ほうたい)()き、エドワードに衣服(いふく)を付けさせながら言った。


 リーナが()を乗り出し、エドワードの襟元(えりもと)(ただ)しているときだった。


 リーナはエドワードの(かた)()れぬよう変な姿勢(しせい)をとっていたのだが、リーナは急にバランスを(くず)し、「あっ」と(つぶや)いて(たおれ)れそうになった。


「おっと」

 エドワードが咄嗟(とっさ)にリーナの(こし)に手を回した。


「あ……すみませ……」

 リーナが顔色(かおいろ)を変えて(あやま)ろうとした時、エドワードが急に(くちびる)でリーナの口を(ふさ)いだ。


 エドワードは強い力でリーナの体を()(いだ)いた。


 エドワードの金色の髪の毛がリーナの(ほお)()れた。


 (はげ)しいキスだった。


 エドワードの手はリーナの手を(にぎ)った。


 時間が長く感じられた。


 エドワードが(くちびる)(はな)すとリーナは真っ赤になって(うつむ)いた。


「あ……あの……」


 エドワードはもう一度リーナの体を()()せると、リーナの顔を自分の(むね)()()てた。


 そして真面目(まじめ)な顔で

「すまなかった」

と言った。


 リーナは顔を真っ赤にして「いえ」と答えた。


「そんな顔すんなよ、もう一回()(たお)したくなる」

 エドワードはリーナをじっと見ながら言った。


 そらからエドワードはふーっとため息をついた。


「ここ、(りゅう)営巣地(えいそうち)だったよな。何やってんだか。帰らねーとな」

とエドワードは普通のトーンに(もど)って言った。


 やっとリーナは頭が回り出した。

「あ、ああ、そうね、(りゅう)が帰ってきたら大変だわ」


 しかし、そこまで言ったあと、またエドワードと馬に乗るのかと思った。


 またエドワードの(うで)の中だ。


 先程(さきほど)のキスが思い出されて、顔が赤くなった。


「さ、帰ろ」

 エドワードは(とく)に気にしたそぶりは見せず、馬の場所までリーナを連れて行くと、リーナを(かか)えて馬に乗り、村へと馬を走らせた。


 エドワードは、王都(おうと)貴族(きぞく)の、子息(しそく)。私は(きたな)村娘(むらむすめ)。エドワードの、さっきのキスは何だったのだろう?


 リーナはエドワードの(うで)の中で、エドワードの(むね)のすぐそばで、どんな顔をしたら良いのかずっと分からず、ただ目を()じていた。


読んでいただきましてどうもありがとうございます!


今後の励みになりますので、もし少しでも面白いと思ってくださった方がおられましたら、


下のご評価↓☆☆☆☆☆↓の方、


ほんの少しでも構いませんので!

少しでも評価していただけるとありがたいです。


すみませんが、よろしくお願い致します!!



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