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竜のいない夜に〜薬師の村娘ですが、高潔の魔術師に溺愛されています〜  作者: 幌あきら
<第1章 : 王都政権交代の裏で> 第4部: カレン、夫の死を知る
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23. 魔術師が暇なので、また鼠取りに行くことになりました

 リーナは家の一室に(こも)っていた。


 リーナが好きに薬草(やくそう)調合(ちょうごう)できるように、シャールが用意してくれた部屋だった。


 リーナは、先日()ってきたネズミの()少量(しょうりょう)取り調べていた。


 その様子をエドワードが特に何もするでもなく、近くの椅子(いす)(すわ)って(なが)めていた。


 この数日で、エドワードはすっかりリーナの(そば)にいるようになっていた。


「リーナ、俺退屈(たいくつ)だよ」

 エドワードが(ひま)そうに言った。


「そんな退屈(たいくつ)ならどっか遊びに行けばいいのに」


「俺、一人遊(ひとりあそ)びできない(むずか)しいヤツなのよ」


「知らないわよ。じゃあ、(あたら)しい魔術の(ひと)つでも(おぼ)えたら? エドワード、あなた魔術師でしょ?」


「あー、そのへんはロベルトに(まか)せてるんで」


「は? (なま)(もの)か?」


(うそ)! 得意(とくい)なのは新しいの出たらすぐ(おぼ)えてるよ」


苦手(にがて)なのは?」


「よっぽど実戦(じっせん)で使えそうなヤツだけかな。中途半端(ちゅうとはんぱ)はどーせ実戦(じっせん)で使えねーし」


「エドワードって真面目(まじめ)なのか不不真面目(ふまじめ)なのか分かんないわね」


真面目(まじめ)なのはロベルトだ。あいつは開発(かいはつ)されたのはたいてい使える。なんか信念(しんねん)みたいなんがあるんだろーな」

 エドワードがポツリと言った。


(あたら)しく開発(かいはつ)された魔術ってすぐ(みな)共有(きょうゆう)されるの?」

 リーナは聞いた。


「ああ。今の体制(たいせい)になってから、ちゃんと通知(つうち)が来る。便利(べんり)だ」


「へー。魔術ってしっかり管理(かんり)されてるのね」


(むかし)(ちが)ったよ。でも今は(たし)かに()くなったな。まー、今、本部(ほんぶ)開発部門(かいはつぶもん)機能(きのう)してねーから、新しいのも出てねーけど」


 エドワードは(うで)()ばしてリーナの頭をわしわし()でた。


「ちょっとやめてよ、エドワード! 私、犬じゃないし」


「何かおまえって、犬みてー」

 エドワードは至福(しふく)の顔をしていた。


「で、おまえのそれ、いい感じなのか?」

 エドワードは急に話題(わだい)を変えた。


「すごいわよ。リュウシソウの成分がむっちゃ濃縮(のうしゅく)されてる上に、少し性質(せいしつ)が変わってる」

 リーナは少し興奮気味(こうふんぎみ)に言った。


「すごいの、それ?」


「うん。このネズミ、(りゅう)に食べられないように、リュウシソウ()べて血中(けっちゅう)成分濃縮(せいぶんのうしゅく)してるみたい」


「へー、そりゃ(かしこ)いな」


「でしょ? しかも、リュウシソウでは揮発性(きはつせい)だったけど、このネズミはリュウシソウの成分を少し変えて、血中(けっちゅう)()けやすくしてるっぽい。しかも毒性(どくせい)もちょっと上がってる」


「へー。このネズミも、生きるために色々改良(かいりょう)してるってわけだな」

 エドワードは感心(かんしん)した。


 それから、リーナの()()きとした顔を見て、エドワードは微笑(ほほえ)んだ。

「好きなんだなー、こーゆーの」


「え、何?」


「何でもねー」

 エドワードは首を横に()った。


「で、おまえは今は何やってんだ?」


「さらに毒性(どくせい)(つよ)めらんないかなーと思って、色々やってるとこ。少し火を入れたり、(べつ)成分(せいぶん)()ぜてみたり」


「ふーん?」

 途端(とたん)にエドワードは退屈(たいくつ)そうな顔をした。


 しばらくリーナの手元(てもと)(なが)めていたが、大きくため息をついた。


「なあ、ずっとここにいてもつまんねーし、リーナ、そのネズミいっぱい取ってこよーぜ。()はいっぱいあった方がいんだろ?」

 エドワードが提案(ていあん)した。


「私はつまんなくないけど」


「俺はつまんねー」


 エドワードがうずうずして立ち上がったので、リーナも仕方(しかた)なく立ち上がった。

「分かったわ。付き合う」


「ちげーだろ! 俺がおまえに付き合ってやってんの! ネズミなんか興味(きょうみ)ねーよ!」


「めんどくさいヤツ」

 リーナは(つぶや)いた。


「あ? 何か言ったか?」


「いいえ、何も…」

 リーナはため息をついた。


「よし。じゃ、行こうぜ」

 エドワードは嬉々(きき)としてリーナの手を引くと、(うまや)一目散(いちもくさん)に歩いて行った。


 リーナの顔が(くも)った。

「え、また馬?」


「何だよ」


「いや、(こわ)いし」


「うるせー、乗れ。遠いだろうが。俺にしがみついときゃいいだろ」


「だって…」


「何だよ。もしかして前くっつき過ぎて俺のこと意識(いしき)したのか?」


「ち、(ちが)うわよ」


「じゃあいーじゃん」

 エドワードはリーナをひょいと(かつ)いで馬の()に乗せた。


 リーナの頭にシャールの顔が()かんだ。(りゅう)()には勝手(かって)に行くなと言われていた。


 しかし、リーナは頭を()った。


 今更(いまさら)だ、どうせ前回も勝手(かって)に行ってしまったのだ。


 それに、シャールの話では「(あぶ)ないから」とのことだった。


 今回もエドワードがいるから、(りゅう)(おそ)われてもきっとだいじょうぶだろう。


(みょう)におとなしくなったな。よっぽど馬の上が(こわ)いか?」

 何も知らないエドワードが笑って言い、リーナの(うし)ろに(またが)った。


 エドワードは今回はゆっくりと馬を走らせた。


 気分転換(きぶんてんかん)乗馬(じょうば)()ねているようだった。


 初めはエドワードの(むね)にしがみついていたリーナも、徐々(じょじょ)()れてきて、エドワードから体を(はな)せるようになった。


「ねえ、(りゅう)とか(こわ)くないの?」

とリーナは聞いた。


(こわ)いさ。(りゅう)だけじゃない。俺に危害(きがい)を加えようとするヤツは何だって(こわ)い」


「でもエドワードはやっつけるじゃない」


「うん、(だれ)(そば)にいたら(たたか)えるんだ。ロベルトとか。まあ、おまえとか。そいつのためなら体が動く。俺はいつもちょっと背伸(せの)びして(たたか)ってんだよ」


「そっか、エドワードは(やさ)しいんだね」

 リーナは(つぶや)いた。


 リーナの言葉にエドワードは(だま)った。


 それから

「そんなこと軽々(かるがる)しく言っちゃいけない」

とポツリと言った。


「え? なんで?」


「…なんでも、だ」

 エドワードはふうっと息を()いた。


 俺は殺人者(さつじんしゃ)だから。とっくに(ひと)(みち)()(はず)してる。


 エドワードはリーナの体を()()せようとしていた手を止めた。


 エドワードが(だま)ってしまったので、リーナも気後(きおく)れして(だま)った。


 馬の(ひずめ)の音やあたりの(かぜ)の音が耳に(ひび)いた。


しばらくすると

()いた」

と、エドワードが言った。


 前回と同じ(りゅう)営巣地(えいそうち)だった。エドワードはひらりと馬から()りると、リーナを(かか)えて下ろした。


 二人は(おそ)(おそ)(りゅう)()(のぞ)いた。


 またしても、運良(うんよ)(りゅう)はいなかった。もちろん、(りゅう)遠出(とおで)の時間を(ねら)って来たというのもある。


「よかった。(りゅう)がいたら引き返さなくちゃいけないものね」


「そうだな。よかった」

 エドワードも言った。


「ネズミたくさんいるかしら」


「いなきゃ(べつ)営巣地(えいそうち)行くだけだ」


「あ! いたわよ! 行きましょ! (つか)まえて!」

 リーナは遠目(とおめ)にも一瞬(いっしゅん)でネズミを見つけると(さけ)んだ。


「リーナ、相変(あいか)わらず、モノを前にすると性格(せいかく)変わるねー」

 エドワードは(あき)れた。


「ちょっと、早く!」

 リーナが(すご)(いきお)いでエドワードを手招(てまね)きした。


「あーそっか、ネズミ(つか)まえるんだから、全部(ぜんぶ)俺の仕事(しごと)か…」

 エドワードは苦笑(くしょう)した。


「うん、魔術って便利(べんり)ね!」


「こんなに便利遣(べんりづか)いされることはマジなかったわ。はじめての経験(けいけん)。俺って、(やす)いなー」


 エドワードはひょいっと(かぜ)()こして草むらのネズミの位置を把握(はあく)すると、前と同じように魔術で次々(つぎつぎ)とネズミを拘束(こうそく)していった。

お読みくださってありがとうございます!とてもありがたいです!


面白い小説を書きたいと思っています。

今後の励みになりますので、もし少しでも面白いと思ってくださった方がおられましたら、


下のご評価↓☆☆☆☆☆↓の方もよろしくお願いいたします。


もちろん、ほんの少しでも構いません!


お手数をおかけして申し訳ありませんが、どうぞよろしくお願い致します。

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