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竜のいない夜に〜薬師の村娘ですが、高潔の魔術師に溺愛されています〜  作者: 幌あきら
<第1章 : 王都政権交代の裏で> 第4部: カレン、夫の死を知る
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22. カレンの記憶 〜ダミアンは私のものになった、のに〜

 カレンはダミアンとたびたび会うようになった。

初めはお(れい)


 それからクレッカーの(もと)(おとず)れるたびにダミアンと立ち話をするようになり、今度お(ちゃ)しよう、今度食事(しょくじ)に行こうと、とんとんと話が進んだ。


 やがてダミアンはカレンの部屋にも遊びに来るようになった。


「ふふ、全然女の子の部屋って感じじゃないでしょ? 田舎者(いなかもの)でね、あんまり部屋を(かざ)ることを、知らないの」


とカレンが言うと、ダミアンは「そうか?」と(つぶや)き、(たな)唯一(ゆいいつ)(かざ)ってあったカレンの両親の写真を手に取った。

親御(おやご)さん?」


「そう。でも、もう、ね」

 カレンは(さび)しそうに言った。


 ダミアンはその写真を()せて()いた。


 そして自分のシャツの袖口(そでぐち)のボタンを(はず)しながら、カレンの方を向いた。


 カレンが「え」と思う間もなく、ダミアンはカレンを()きしめ深くくちづけをした。


 カレンは一瞬(いっしゅん)戸惑(とまど)ったものの、ダミアンの()に手を回し、ぎゅっと抱きしめた。


 ダミアンはそのまま(いき)つく()もないようにカレンの(くちびる)(はな)さず、二人はベッドに(たお)れ込んだ。


 その日から、カレンはダミアンが自分のものになったと思った。


 アデルはダミアンが言った通り、人全般(ひとぜんぱん)無関心(むかんしん)で、特にカレンが心配することは何もなかった。


 ただ、クレッカーの職場(しょくば)(おとず)れるたび、ダミアンがアデルの(うで)(つか)んで話をしていたり、(かた)(つか)んで話をしていたりした。


 知らぬ人が見れば、この二人はよほど親密(しんみつ)関係(かんけい)なのかと思うだろう。


 グレゴリー大臣(だいじん)とクレッカーの剣呑(けんのん)なやり取りに心を(むしば)まれていたカレンは余計(よけい)なことを考えられず、ただダミアンを(しん)じて、あれはそういうものだと思っていた。


 カレンはアデルがいようとも、ダミアンにそばにいてほしいと思った。ダミアンが、カレンの(こころ)(ささ)えだった。


 ある(とき)カレンは勇気(ゆうき)を出して、休憩時間(きゅうけいじかん)なのに作業(さぎょう)の手を(やす)めないアデルに話しかけた。


 アデルは一瞬(いっしゅん)()(かえ)ってキョロキョロとしたが、気を取り直してまた自分の作業(さぎょう)(もど)ろうとした。


 カレンは(あわ)ててアデルの(うで)を取った。


 やっとアデルはカレンの顔を見た。

「どうかしたか?」

 カレンの(おも)()めた顔を見てアデルは聞いた。


「あの」


「うん?」


「私も何でこんなことアデルさんに言うのか分からないんですけど……」


 アデルはカレンの意図(いと)が分からず、無表情(むひょうじょう)でカレンを(なが)めていた。


 カレンはアデルが無反応(むはんのう)なので一瞬(いっしゅん)(ひる)んだが、勇気(ゆうき)を出して

「ダミアンと一緒(いっしょ)になりたいです」

と言った。


 アデルは顔色(かおいろ)一つ変えずに

「いいんじゃないか」

と言った。


「それで?」

 アデルは聞く。


「えっと……」


 カレンは、アデルの口から、ダミアンをどう思っているのか、カレンがダミアンと結婚(けっこん)してうまくいきそうかなどを、何となくでも聞けるかと期待(きたい)していたのだが、アデルが無機質(むきしつ)な目で特に何も言わないので、(あきら)めて口をつぐんだ。


「いえ、何でもないです……」


 カレンは居心地(いごこち)が悪くなってペコリと頭を下げるとアデルの(うで)(はな)した。


 アデルは軽く微笑(ほほえ)んで、自分の作業(さぎょう)(もど)った。


 カレンは何も手応(てごた)えがないように感じたのだが、しかし、アデルはそのままそのことをダミアンに(つた)えたらしい。


 その日の夜、血相(けっそう)を変えたダミアンがカレンの部屋に来て、「結婚(けっこん)してください」と言った。


 カレンは(うれ)しくなった。


 そして、この話はすぐに魔術開発(まじゅつかいはつ)部門(ぶもん)に広まり、クレッカーもカレンに「おめでとう」と言った。


 カレンは闇夜(やみよ)(そこ)なし(ぬま)の中で、ようやく(ひかり)が見えた気がした。


 それからしばらくして、グレゴリー大臣が(やまい)()くなり失意(しつい)(ふち)に落ちていた(ころ)、カレンの妊娠(にんしん)が分かった。


 ダミアンは子供のことを喜んだ。


 ダミアンはあれを食べろ、重いものを持つな、とあれこれカレンを気遣(きづか)った。


 そして、そんな矢先(やさき)突然(とつぜん)ダミアンが()えた。


 ダミアンだけではなくアデルやダミアンの元同僚(もとどうりょう)の者たちは、みな()えてしまった。


 唯一(ゆいいつ)理由を知っていそうなクレッカーは、いきなり魔術管理本部(まじゅつかんりほんぶ)長官(ちょうかん)になっていた。


 グレゴリー元大臣夫人(もとだいじんふじん)とクレッカー長官の便(たよ)りは(つづ)いていたので、カレンもクレッカー長官に会う機会(きかい)はたびたびあったが、ダミアンのことを気軽(きがる)に聞ける雰囲気(ふんいき)ではなかった。


 また、クレッカー長官の方も話したくなさそうだった。


 何度勇気(ゆうき)を出して聞こうかと思ったが、その(たび)聞けずに、そしていつか子供が生まれたのを()にカレンは地元(じもと)に帰ることになった。


 ダミアンのことはついぞ聞けずじまいだった。

お読みくださってありがとうございます!


申し訳ありませんが、今後の励みになりますので、

もし少しでも面白いと思ってくださった方がおられましたら、

下のご評価↓☆☆☆☆☆↓の方も、低評価でも構いませんので!!

お教えいただけるとたいへんありがたいです!

今後の参考にさせていただきたいです!


すみませんが、ぜひぜひよろしくお願いします!

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