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竜のいない夜に〜薬師の村娘ですが、高潔の魔術師に溺愛されています〜  作者: 幌あきら
<第1章 : 王都政権交代の裏で> 第4部: カレン、夫の死を知る
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20. カレンの記憶 〜カレンから見た王都の政権交代劇〜

 数年前(すうねんまえ)王都(おうと)にいた(ころ)、カレンはいつも流行(はやり)を少し取り入れた服を着ていた。


 メイクはナチュラルに清潔感(せいけつかん)(たも)つために(ほどこ)し、(かみ)もきっちりとしながらも適度(てきど)(ゆる)くセットして、仕事に出た。


 女の()だしなみというものは、言葉(ことば)よりもよっぽど雄弁(ゆうべん)にその人となりを(あらわ)すようだ。


 実際(じっさい)、カレンの仕事ぶりは主人(しゅじん)によく(みと)められていた。


 仕事はたいていグレゴリー大臣(だいじん)大臣夫人(だいじんふじん)の手紙を(はこ)ぶもので、その相手(あいて)多岐(たき)(わた)った。


 抹籍(まっせき)秘書官(ひしょかん)のようなものである。


 しかし、正式(せいしき)秘書官(ひしょかん)(ちが)い、カレンはプライベートよりの手紙の伝達(でんたつ)が多かった。


 そこで、よりグレゴリー大臣(だいじん)大臣夫人(だいじんふじん)の、(なま)(かお)反映(はんえい)するものであるから、カレンはその()なりや所作(しょさ)には()(つか)うものがあった。


 手紙の(とど)け先の中でも、カレンは、まだ一魔術師(いちまじゅつし)でしかなかったクレッカーのことを、よく(おぼ)えていた。


 クレッカーは堅物(かたぶつ)で、あまり人と()れ合うことをせず、冗談(じょうだん)なども言わない男だった。


 そこで、正直(しょうじき)人に緊張感(きんちょうかん)(あた)えることが多かった。


 しかし、クラッカーはカレンに、いつもたいへん丁寧(ていねい)対応(たいおう)してくれた。


 まるでカレンを大臣夫人(だいじんふじん)そのものかのように(あつか)い、(けっ)してぞんざいな態度(たいど)は見せなかった。


 (これに(かん)しては、(のち)ほど、ちゃんと(べつ)理由(りゆう)があることが分かったのだが。)


 自然(しぜん)とカレンもクレッカーに好意(こうい)を持った。


 たびたびグレゴリー大臣夫人(だいじんふじん)に、クレッカーがいかに素晴(すば)らしい心配(こころくば)りの()(ぬし)かということを披露(ひろう)することもあった。


 グレゴリー大臣夫人(だいじんふじん)も、徐々(じょじょ)にクレッカーに対する態度(たいど)が、多少(たしょう)(やわ)らかくなった気がする。


 そのことは、グレゴリー大臣夫人(だいじんふじん)からの便(たよ)りにも(あらわ)れていたようだった。


 クレッカーはたまにカレンに、「あなたが、大臣夫人(だいじんふじん)に私のことを少し()く話してくださったんですね」と感謝(かんしゃ)の言葉を口にすることがあった。


 カレンは(ひと)(ひと)との(こころ)(つな)仕事(しごと)ができたように感じ、自分の仕事とその成果(せいか)を、ささやかながら(ほこ)りに思ったものだった。


 そうすると、カレンはますます仕事に(せい)を出すようになり、カレンは善意(ぜんい)(のり)のように、人と人との関係(かんけい)をくっつけて回った。


 カレンはグレゴリー大臣夫人(だいじんふじん)(まわ)りで、少し評判(ひょうばん)になったのである。


 しかし、グレゴリー大臣夫人(だいじんふじん)とクレッカーの(あいだ)はうまくいっても、グレゴリー大臣とクレッカーの(あいだ)のやりとりは、どうも険悪(けんあく)なものになっていったようだった。


 クレッカーは終始(しゅうし)カレンに丁寧(ていねい)(おだ)やかだったが、(とき)にグレゴリー大臣は、クレッカーからの(しょ)をカレンから()ったくるように()()げて()んだり、()みながら舌打(したう)ちすることがあった。


 グレゴリー大臣はもちろん、クレッカーのことは何一(なにひと)つカレンに言わなかった。


 しかし、グレゴリー大臣のただならぬ様子(ようす)を見るにつけ、クレッカーがグレゴリー大臣にとって(なに)()くないことを言ってきていることは、カレンにも容易(ようい)想像(そうぞう)できた。


 カレンはだんだんグレゴリー大臣の機嫌(きげん)(わる)さの原因(げんいん)が自分にあるかのように錯覚(さっかく)した。


 錯覚(さっかく)、した。


 それはひどくカレンの(こころ)(みだ)した。


 グレゴリー大臣に()ばれると緊張(きんちょう)が走るようになった。


 と同時に、(つよ)責任感(せきにんかん)()まれていた。


 カレンは、なぜか()()してはいけないように感じたのである。


 実際(じっさい)には、


 グレゴリー大臣とクレッカーのやり()りは正式(せいしき)秘書官(ひしょかん)()()つものではなかったので、非公式(ひこうしき)なやり()りだった。


 そしてらクレッカーはその時まだ何者(なにもの)でもなく、一介(いっかい)魔術師(まじゅつし)()ぎなかった、のに。


 カレンが、なぜか仕事に(つよ)(こころ)(しば)られていた時、地元(じもと)では(ちち)(はは)順番(じゅんばん)()くなった。


 初めは母から連絡が、次はシャールから連絡がきた。


 しかし、一人娘(ひとりむすめ)なのにカレンは村に帰らなかった。


 帰れる、と思わなかった。


 もちろんグレゴリー大臣(だいじん)大臣夫人(だいじんふじん)も、言えばカレンに(やす)みをくれただろう。


 (やす)みどころか、見舞金(みまいきん)も。


 しかし、カレンは緊迫(きんぱく)した毎日の中、父母(ふぼ)のことが言えない気持ちになっていた。


 結局(けっきょく)葬儀(そうぎ)はシャールが手伝(てつだ)い、村で父母が親しくしてくれた人々に見送られて、無事(おこな)われたらしい。


 村の人に(した)われ、皆の面倒(めんどう)をよく見てくれるシャールに、カレンは心から感謝(かんしゃ)した。


 グレゴリー大臣とクレッカーのやりとりはだいぶ(なが)いこと(つづ)いていたが、やがてグレゴリー大臣がカレンに最後(さいご)仕事(しごと)(たの)んだ。


 グレゴリー大臣は、クレッカーとのやり()りの中、未知(みち)死病(しびょう)という大病(たいびょう)(わずら)ってしまったのだった。


 グレゴリー大臣の最後(さいご)仕事(しごと)は、クレッカーを病室(びょうしつ)()びつけることだった。


 カレンはその時、病室(びょうしつ)(ひか)えることはなかったので、グレゴリー大臣とクレッカーがどんな言葉(ことば)()わしたか分からない。


 ただ、


「俺が()んで本望(ほんもう)か。後釜(あとがま)はもうケイマンに()まっているそうだな。おまえはヤツと懇意(こんい)にしている。俺が()んで、おまえはさぞやりやすくなるだろうな!」


というグレゴリー大臣の声だけが、()まり(ぎわ)病室(びょうしつ)(とびら)から()()こえた。


 やがて数日(すうじつ)のうちにグレゴリー大臣が()くなった。


 (もう)()わせがあったかのように、すぐに後任(こうにん)大臣(だいじん)就任(しゅうにん)し、クレッカーは魔術管理本部(まじゅつかんりほんぶ)長官(ちょうかん)になった。


 これが今から一年くらい前のことだ。


 体制(たいせい)が大きく変わり、新しい大臣とクレッカー長官を中心(ちゅうしん)王都(おうと)(まわ)っているような感じがした。


 カレンはクレッカーに好意(こうい)を持っていたが、生前(せいぜん)のグレゴリー大臣のことを思うと、クレッカー長官になぜだか分からない不愉快(ふゆかい)さを感じるようになっていた。


 クレッカー長官は相変(あいか)わらずグレゴリー元大臣夫人(もとだいじんふじん)見舞(みま)いの便(たよ)りを寄越(よこ)していた。


 政治上(せいじじょう)対立(たいりつ)はあれど、公式(こうしき)秘書官(ひしょかん)を使った表立(おもてだ)ったものではなかったし、グレゴリー夫人(ふじん)自体も政治とプライベートは別と考えているようだった。


 グレゴリー夫人(ふじん)はクレッカー長官の見舞(みま)いを好意的(こういてき)に受け止めているようだった。


 カレンは、生前(せいぜん)のグレゴリー大臣を(くる)しめた(もの)複雑(ふくざつ)な思いはないのかと、グレゴリー夫人(ふじん)にはいささか不思議(ふしぎ)を感じたものだった。


お読みくださってありがとうございます!


これからも面白い小説にしていきたいと思います。皆様のご意見、ご感想をお聞かせいただけると大変ありがたいです! よろしくお願い致します。


またお手数おかけして申し訳ありませんが、今後の励みになりますので、よろしければ、


↓ご評価↓☆☆☆☆☆↓の方もどうぞよろしくお願い致します。


もちろん、評価の方はほんの少しでも構いません!!

今後の励みになります!

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