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竜のいない夜に〜薬師の村娘ですが、高潔の魔術師に溺愛されています〜  作者: 幌あきら
<第1章 : 王都政権交代の裏で> 第3部: 魔術師と薬売り
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15. 隣の兄妹〜優しい幼馴染〜

「リーナ」

「あ、ベナン。畑仕事(はたけしごと)(せい)が出るわね」


 翌朝、薬草畑(やくそうばたけ)(かぶ)に一本一本支柱(しちゅう)を立てていたリーナは、(となり)の畑で作業をしている幼馴染(おさななじみ)のベナンに声をかけられた。


 ベナンの上半身(じょうはんしん)の服ははだけて、たくましい体が半分(あらわ)わになっていた。


「ちょっと、ちゃんと服着てよ。半裸(はんら)の人には近付(ちかづ)きたくない」


相変(あいか)わらず言い方きっつ。泣きそう」

 ベナンはしゅんとして服を着た。


「恥ずかしいもの、男の人の半裸(はんら)とか」

 リーナが(おこ)って言う。


「何言ってんだ。おまえ兄さんいるだろ。これくらい普通だろ」

とベナンが言い返した。


「うちのお兄様(にいさま)半裸(はんら)とかなりませんから」

とリーナも返す。


「そ? (むかし)は俺ら半裸(はんら)で村中()(まわ)って遊んでたもんだけどなあ」

「もう大人(おとな)ですけど」


「どっちがダメなの? リーナが見るのが?  シャールが見せるのが?」

 ベナンが口をとんがらせて言った。


「聞き方が変態(へんたい)っ!」

 リーナは持っていた野菜の支柱(しちゅう)をベナンの方に向けた。


「あっぶねー、そーいうの人に向けちゃダメだろ。そりゃそーと、おたく、今、イケメンの旅人(たびびと)来てる?」

 ベナンは降参(こうさん)したように一度両腕(りょううで)()げてから、ふと聞いた。


「来てる。(りゅう)から助けてもらった」

とリーナは答えた。


(りゅう)!? おまえ気をつけろよ! 隣村(となりむら)であんなんあったばっかりだろ!」

 ベナンは(あわ)てて大声を出した。


 リーナもあの日の隣村(となりむら)の、瓦礫(がれき)の下で()まみれで横たわる人々を思い出した。気が滅入(めい)った。


「あんときゃ大変だったな。おまえ、(えら)かったよ」

 ベナンがポツリと言った。


「ベナンもだよ。手伝いに一緒に来てくれて」

とリーナも言った。


「俺はただのボランティアだから。安全警備(あんぜんけいび)部隊(ぶたい)の人は、(りゅう)追い払って怪我人(けがにん)探し出したら任務終了(にんむしゅうりょう)ってとこあるじゃん?」

とベナンは言った。


「うん。それは仕方(しかた)ないけどね。家が(こわ)れたとか治療(ちりょう)とかは安全警備(あんぜんけいび)の人の仕事じゃないもの。そういう(こわ)れた家の片付(かたづ)けとか手伝って、本当ベナンは(えら)いと思ったわ」

とリーナは心から言った。


「リーナはさ、は怪我人(けがにん)手当(てあ)てしててさ、()まみれの人、(こわ)くないの?」


「んー、(こわ)いけど、そこまでじゃないかな。一応(いちおう)薬師(くすし)だしね。ベナンは(こわ)いの?」


「俺はすげー()とか(こわ)い。だからおまえを尊敬(そんけい)する」

 そこまで言って、ベナンは話が()れたことに気付き、こほんっと咳払(せきばら)いした。


「あのさ、おまえんちの旅人(たびびと)イケメンじゃん。おまえもあーゆーの好きなの?」

 ベナンは真顔(まがお)でリーナをじっと見ながら聞いた。


「そりゃ、女ですから。イケメンは好きだけど」

と言ってから、リーナはベナンがあんまり真面目(まじめ)な顔をしてるのでムッとした。

「やめてよ、ベナン。そもそも身分違(みぶんちが)うし。イケメン貴族(きぞく)美人(びじん)令嬢(れいじょう)と恋するもんでしょ」


 ベナンはやっと笑顔になった。

「そーだな、心配いらねーか」


「どーゆー意味よ」

 リーナはふくれた。


(きた)ねー村娘(むらむすめ)って言ってんだよ」

とベナンは笑った。


 リーナは自分の(ふく)(なが)めた。

「確かに」


 それからベナンを見て言った。

「でもベナンに言われたくない。さっきあんたの畑で少し病気にやられ始めた(かぶ)見つけたけど、手伝(てつだ)わないからね」


「マジで。やべ。どれ?」

 ベナンは少し(あせ)った顔をした。


「教えない。意地悪(いじわる)言う人は手伝(てつだ)わないのよ」

 リーナはそっぽを向いた。


嘘嘘(うそうそ)。リーナはキレイ。村一番可愛(かわい)い」


 それから真顔(まがお)でもう一度リーナを見つめて、

村一番(むらいちばん)可愛(かわい)いよ」

と言った。


 リーナはベナンの(ふく)みある物言(ものい)いにはさっぱり気づかず、

「よろしい。手伝(てつだ)ってあげるわ」

と笑って言った。


 ベナンは苦笑した。

「おまえ、やっす」


「早く手を打った方がいいよ。あ、グレース! 石灰(せっかい)持ってきて!」

 リーナは、納屋(なや)のそばにベナンの妹のグレースを見つけて声をかけた。


 グレースがぱっとこっちを向いた。

石灰(せっかい)?」


 グレースは急いで足元(あしもと)(ふくろ)(つか)むとこちらへ()けてきた。


 しかし、(うね)に足を取られて()けてしまった。


「あぶねーな! だいじょうぶか!?」

 (あわ)ててベナンが()けていってグレースを起こした。そしてグレースの足元の(どろ)(はら)ってやった。


「ベナン、あなたって(やさ)しいよね」

 リーナは笑って言った。リーナはシャールを思い浮かべた。口元(くちもと)がほころぶ。


 その瞬間(しゅんかん)ベナンが大声を出した。

「こらー! グレース、これ石灰(せっかい)の袋じゃねーじゃん! 堆肥(たいひ)の袋じゃん!」


「あれ? 私、(となり)のやつ持ってきちゃった?」

「どじーっ」


 リーナは相変(あいか)わらずの兄妹(きょうだい)を見て楽しそうに目を(ほそ)めた。


「そういや、今日シャールは?」

 ベナンはリーナに聞いた。


「シャールは、カレンとこ行くって言ってたかな。ベナンも同級生(どうきゅうせい)だよね」

 リーナは答えた。


 ベナンは(うなず)いた。

「そ。俺とシャールとカレン。でも、カレンはむっちゃ優等生(ゆうとうせい)タイプでさあ。俺ら芋軍団(いもぐんだん)には目もくれない感じよ」


「お兄様(にいさま)(いも)じゃないし。ベナンだけだし」

 リーナがむっとして言った。


「だから(いも)だったんだってば。おまえのお母さんとシャールのお父さんが再婚(さいこん)した(ころ)はさあ」

 ベナンがため息をついて言った。


「信じないもん」

「けっ、好きにしろ」

 ベナンは口を(とが)らせると、グレースの()わりに石灰(せっかい)の袋を取りに行った。


 そのとき、(うま)(ひずめ)の音がして、ベナンは()(かえ)った。

 金髪の魔術師の男が、リーナの薬草畑(やくそうばたけ)(おとず)れるところだった。

面白い小説を書きたいと思っています!皆様のご意見ご感想をお聞かせいただけるとありがたいです。


また、これからの励みになりますので、お手数ですが、もし少しでも面白いと思って下さった方がおられましたら、

↓ご評価☆☆☆☆☆↓よろしくお願い致します。

ほんの少しで構いません!


不躾なお願い、どうもすみません。

よろしくお願い致します!

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