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竜のいない夜に〜薬師の村娘ですが、高潔の魔術師に溺愛されています〜  作者: 幌あきら
<第1章 : 王都政権交代の裏で> 第3部: 魔術師と薬売り
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13. 心からの説諭、伝えられない気持ちと

 家に着くと、シャールはロベルトとエドワードを客間(きゃくま)に案内した。


 そしてリーナを部屋に送ると、シャールは急に真面目(まじめ)な顔をしてリーナの方を向いた。リーナはドキッとして緊張(きんちょう)がはしった。


 シャールは(ふる)える(うで)()ばし、リーナの(かた)()れた。


 ひどくほっとしたような(おこ)っているような顔だった。


「リーナ、無事(ぶじ)で良かった」


「お兄様、心配かけてごめんなさい……」


 シャールはそのままリーナを(むね)の中に抱きしめた。確かな(ぬく)もりを感じ、シャールは(ちぢ)み上がっていた心が少しほぐれた気がした。


 そして

竜避(りゅうよ)けの薬草(やくそう)がそんな危険なところにあるなんて」

と強い口調(くちょう)で言った。


 しまった、とリーナは思った。


 話の流れでそこはスルーしてもらえたと思っていた。(あわ)ててシャールを()退()けた。


「ごめんなさい、お兄様。だから言えなくて」


「だから、じゃない。なぜ言ってくれなかった。分かっていたら行かせなかった」


 シャールの口調(くちょう)()るぎなかった。


「お兄様。それでは(くすり)ができないわ」


「かまわない。それよりリーナの()(まん)(いち)のことがあったら、そっちの方が心配だ」


 どうしたらリーナは俺の気持ちを分かってくれる? 何よりリーナが大事なのだと言うことを。おまえを(うしな)うことがどれどけ(こわ)いかということを。


 だが、責任感(せきにんかん)のあるリーナは、人を助けることが何よりで、俺の心配など理解(りかい)してくれないだろう。


「だめよ。(だれ)かが()りに行かなければいけないのよ、私が行く」


 (あん)(じょう)リーナは覚悟(かくご)を決めた強い顔で言った。


 シャールは首を横に()った。


「俺が行くなり、他の者に行かせるなり、なんとかする」


 (たの)むから。(たの)むから。最悪(さいあく)事態(じたい)を想像すると胸が(いた)む、()()がする。


「お兄様、だめだってば。危険だからこそ人に(まか)せられないし。そもそも()り方とかあるし」


 リーナは兄の気持ちなど微塵(みじん)も気付かず、強く言い返し、シャールの(うで)(すが)りついた。


 シャールの(うで)(つか)むリーナの手。リーナを抱きしめたい激情(げきじょう)が走った。


 シャールは(たま)らなくなって、リーナの(かた)(つか)み強く()きしめようとした。


 しかし、一瞬(いっしゅん)理性(りせい)が彼を()めた。


 どんなに自分がリーナを()しいと思っても、まだ、リーナにとって自分はただの兄でしかない。


 シャールは深呼吸(しんこきゅう)をした。


 今(のぞ)む事はただ、リーナが安全に自分の(かたわら)にいてくれる事。そしてシャールは懇願(こんがん)するようにリーナをじっと見つめた。


 しかしリーナは強い信念(しんねん)を持った目ででシャールを見返した。


 シャールは根負(こんま)けしたようにふうっと息を()いた。


「ならば、次からは俺がついて行く。リーナが危ないところに行くのに、俺は一人で家で待ってるわけにはいかない。帰ってこなかったらと思うと冷静(れいせい)でいられる自信(じしん)がない」


 シャールのまっすぐな(ひとみ)にリーナはそれ以上は言うことができなかった。


「分かったわ……」

 リーナは下を向いた。


 シャールはリーナの(かた)から手を(はな)し、リーナの(うで)を取った。リュウシソウの(くさ)(あと)がこびりついていた。


 シャールはそっと(こす)ってみたが簡単(かんたん)には落ちなかった。


「お兄様?」


「あ、すまん、(うで)のこれ、()らしたら落ちるかな。それと服を着替(きが)えないとな」


「はい」

 リーナは確かにこんな格好(かっこう)では何の説得力(せっとくりょく)もないと、しおらしく答えた。


「リーナ、あのさ。本当に(たの)むから、俺に心配かけさせないでくれ」


 シャールは(ねん)()すように言った。リーナは首を横に()った。


「お兄様。今のこの国の(りゅう)生息数(せいそくすう)では、王都にでも住まない限り、どこも安全じゃないわ。何が起こってるんでしょうね」


「それでもおまえには笑顔でずっと側にいてもらいたいんだよ」

 シャールは(つた)わらない(おも)いを弱々しく言った。


「あの二人は何か知ってるかしら」

 リーナは兄の気持ちにはたいして気付かず、ぽんと手を打って言った。


 リーナはただ、(めずら)しいお客さんにはしゃいでいるようにも見えた。

すみません、面白い小説を書きたいと思っています!皆様のご意見、ご感想等、よろしければよろしくお願い致します!

また、励みになりますので、少しでも面白いと思って下さった方がおられましたら、お手数ですが、

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