12. 薬売りと魔術師の再会〜まさか妹さんだったとはー
村に着くと、魔術師たちはリーナを馬から降ろした。
リーナを抱えていた金髪の魔術師は、リーナがまだ震えているのに気づいた。
「大丈夫ですか?」
「はい、ありがとうございます。あの、本当に死ぬところでした。本当に、本当にすみません、ありがとうございました」
リーナはまだ動悸の治まらぬ胸を押さえ礼を言った。
「何でおまえあんなところにいたんだ?」
金髪の魔術師が言った。
「すみません。薬作るのに必要な草を取りに行ってたんです。ちょっと色々夢中になっちゃって」
「薬に必要な草?」
「はい。これ、って、あれ?」
リーナは篭がないのに気づいた。
あのとき必死の状況だったのだから、きっと落としたのだろう。
リーナは咄嗟に体に擦り付けた時に付いた草の端をつまんで、二人に見せた。
「これです。私はリュウシソウって呼んでるんですけど。本当の名前は知りません。この草は竜の営巣地の際にだけ群生で生えてるんです」
「君は薬師さんなの?」
「はい。リーナと言います。お二人は魔術師様ですよね?」
「ええ。私はロベルトといいます。こちらはエドワード。それより、その服、草でだいぶ汚れているけど」
「あ、これ……。とっさだったから。少しでも効くかなと思って」
「効く?」
「はい、竜避けの効果が……」
リーナが言いかけると、ロベルトがはっとした。
「あ、もしかして、竜避けの薬ですか? それなら、王都で君のお兄さんに会ったかもしれない」
「え、兄に会ったんですか?」
リーナも驚いた。エドワードも頷いた。
「あー、なんか俺たちの幼馴染がおまえのお兄さんのことが好きみたいでさ。なんかそれ繋がりで」
「えーっと、お兄様のことが好きな女の子?」
「ん? どーした?」
「あ、いえ、別に」
「竜の駆除が足りてねーって話したかな。その後あいつの妹を竜から助けるとか、すげーできた話だな」
エドワードは、にかっと笑った。
「てか、その草が身体中に擦り付いてるのってそういうことか。そんで竜も迂闊に手ェ出せなかったんだな」
「はい。でも竜が嫌がるだけなんで、あのまま時間がたっていたら、殺されていたと思います。本当に命の恩人です」
リーナはもう一度深くお辞儀をした。
そこへ
「おーい! リーナ! 何かあったか?」
と、シャールが真っ青になって走ってくるのか見えた。
「あ、兄です」
と、リーナが言いかけた時、
「あれ、あなた方は……」
とシャールがロベルトとエドワードに気づいた。
リーナがシャールに訳を話すと、シャールは飛び上がって、ロベルトとエドワードに深くお辞儀をした。
「すみません、妹を助けていただいてありがとうございます! このお礼は何と言ったらよいか」
「いや、助けられてよかったですよ」
ロベルトは笑顔で返した。
「でもシャール、王都では先に逃げたよね」
エドワードは嫌味な笑顔を作った。
「お兄様が逃げた……?」
リーナは怪訝そうな顔をした。
「こいつ、王都で女の人に囲まれたとき、俺らを置き去りにして一人だけ逃げたんだ」
「ちょっと、エドワード様、やめてくださいよ」
シャールは慌てて手を振ってエドワードを止めた。
「女の人に囲まれ……? お兄様、いったい王都で何してるの?」
「何もしてないよ! あ、いや、仕事はしてるけど!」
リーナの不審そうな顔に、シャールは必死で弁明した。ロベルトとエドワードは、すっきりした笑顔になった。
「……ところで、なぜお二人がうちの村の近くまでいらしてるんですか?」
シャールはふと聞いた。
ロベルトは
「この辺で、ちょっと仕事があって」
と言った。
次の瞬間、ロベルトに考えが浮かんだ。
「あ、では、お礼もしたいので、ぜひうちに滞在されませんか?」
とシャールが言った。
「それはありがたい! なあエドワード」
ロベルトは即答した。
「あ、そうだね。助かるー! 宿探すのとかめんどーだったんだ」
エドワードは屈託のない笑顔で、浮かれた声を出した。
ロベルトは無邪気なエドワードをチラリと見た。おまえのために、この兄妹を、利用しようではないか。
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