表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
竜のいない夜に〜薬師の村娘ですが、高潔の魔術師に溺愛されています〜  作者: 幌あきら
<第1章 : 王都政権交代の裏で> 第3部: 魔術師と薬売り
11/73

11. 竜の巣へ薬草を採りに〜魔術師に助けられた少女〜

 シャールの妹、薬師(くすし)のリーナは朝早(あさはや)くから村を(はな)れて、村の(はず)れの(がけ)に続く細道(ほそみち)早足(はやあし)で行った。


 (がけ)(とお)く、(いそ)がねば日が()れてしまう。


 もうここまで来ると人家(じんか)はなく、家畜(かちく)草場(くさば)が広がっているだけだ。この日は雲ひとつない快晴(かいせい)


 普段のリーナなら気分良く羊飼(ひつじか)いの歌でも口ずさむところだが、今日はそんな気分にはなれなかった。


 目的が(りゅう)()だったからだ。


 (がけ)に着くとリーナの顔にさらに緊張(きんちょう)が走った。その下は(りゅう)営巣地(えいそうち)だったからだ。


 リーナは(おそ)(おそ)る下を見下(みお)ろしたが、この日は(りゅう)姿(すがた)(みと)めず、リーナはほっとため息をついた。


 ()りにでも行っているのだろうか。(りゅう)のいる日は残念(ざんねん)ながら(あきら)めて、来た道を(もど)らなければならない。


 リーナは手慣(てな)れた様子でロープを()り、(がけ)の下に降りた。


 そこはもう(くさ)はまばらだ。(りゅう)物理的(ぶつりてき)(くさ)()(つぶ)すし、火を()いて()やしてしまうからだ。


 がここに、目的(もくてき)薬草(やくそう)、リュウシソウが()えている。


 リーナは(あた)りに注意(ちゅうい)しながら、リュウシソウの()(かぶ)()なない程度(ていど)にむしっては、次々と手に()げた(かご)に入れていった。


 その時リーナは、リュウシソウの群生(ぐんせい)の中に、(ちが)植物(しょうぶつ)()ざっているのを見つけた。


 ()の色や背丈(せたけ)の高さはリュウシソウと同じくらいで、本当によく見ないと分からない。でも()(かたち)がわずかに(ちが)った。他の場所では見たことがない草だった。


 リーナは(となり)群生(群生)も見に行った。やはりリュウシソウの中に少しだけその草が()ざっていた。


 リーナはいっぺんに興味(きょうみ)()かれてしまった。そして(いそ)いでいたことをすっかり(わす)れてしまった。


 この草はなぜリュウシソウに()ざって()えているのかしら? 


 リュウシソウの出す(にお)いを(きら)って、(りゅう)はここに近づき()ぎることはない。ある意味(いみ)、この(りゅう)営巣地(えいそうち)でリュウシソウの周辺(しゅうへん)だけが唯一(ゆいいつ)草の()えられる場所だ。


 他の場所では()てない草が、ここでなら細々(ほそぼそ)()えることができたのかしら?


 リーナはどうやらこの新しい発見(はっけん)夢中(むちゅう)になりすぎたようだ。


 空を()(りゅう)(つばさ)が太陽の光を(さえぎ)りリーナに(かげ)を落とすまで、リーナは(りゅう)に気がつかなかっ(かく)た。


「あ、まずい」


 この(ひら)けた(りゅう)営巣地(えいそうち)姿(すがた)をす場所はない。


 リーナは(わら)にもすがる気持ちで()んだリュウシソウを体に(こす)り付けた。

 

 ばさっ、どすん、と大きな音がして、一匹(いっぴき)(りゅう)が近くに()り立ち、(するど)い目でリーナを見下(みおろ)ろした。


 真っ赤な目は()れたように光り、目の前の獲物(えもの)(おど)すように()め付けた。


 ただ、リュウシソウの(にお)いのせいか、近寄(ちかよ)りあぐねているように見えた。


 とはいえ、村や森と違って、(かく)れる場所のないここで、どうやったら逃げられるだろう。


 膠着(こうちゃく)した状況(じょうきょう)で、時間はゆっくりと流れ、あまりの緊迫感(きんぱくかん)にリーナは目眩(めまい)がしてきた。


 と、そこへ二人の男が飛び出した。


 黒髪の男はリーナの(かた)をかき(いだ)呪文(じゅもん)き、を(とな)えながら飛び上がった。


 空間(くうかん)(ゆが)み、次の瞬間(しゅんかん)リーナは(がけ)の上にいた。リーナは、ああ魔術師(まじゅつし)が助けてくれたのだ、と思った。


 もう一人の金髪の魔術師は、呪文(じゅもん)(とな)えながら(けん)()りかぶった。


 どんな(けん)でも(りゅう)(かた)(うろこ)(きず)つけられないが、魔術(まじゅつ)物質(ぶっしつ)(かた)さを変化(へんか)させながら(けん)()りかかれば、(りゅう)にも致命傷(ちめいしょう)(あた)えることができる。


 (りゅう)も火を()応戦(おうせん)した。同時に金髪の魔術師の男も(じゅつ)を使った。


 魔術(まじゅつ)()性質(せいしつ)()えられる。


 火は金髪の魔術師に(とど)寸前(すんぜん)で小さな水の(つぶ)になって霧散(むさん)した。 


 しかし(りゅう)は金髪の魔術師に突進(とっしん)しながら、長い首を()らし、(うえ)から(よこ)から火を()(つづ)けた。


 (じゅつ)を使い続ける金髪の魔術師の(ひたい)に汗が(にじ)みはじめた。


 ()めるように全ての角度(かくど)から(おそ)ってくる(りゅう)の動きを()いながら、正確(せいかく)(じゅつ)を使う。


 しかし(りゅう)はついに金髪の魔術師の(うし)ろへと(まわ)()み、口から()き出す火力(かりょく)を上げて(ほのお)(かべ)を作った。


 金髪の魔術師は一瞬(いっしゅん)体勢(たいせい)(くず)して「おっと」と(つぶや)いたが、また()()いしばり、(ほのお)(かべ)(うで)()()んでかき(みだ)すと、(ほのお)(けむり)になり金髪の魔術師の姿を(かく)した。


 (りゅう)は目的の者を見失(みうしな)って戸惑(とまど)った。


 金髪の魔術師の(とな)える低い声だけが聞こえ、(あた)一面(いちめん)どんどん白い(けむり)(おお)われてゆく。


 (りゅう)()ばたいて(けむり)を風で蹴散(けち)らそうとしたとき、突然(とつぜん)金髪の魔術師の(けん)(けむり)から(あらわ)れ、(りゅう)の首をずどんと落とした。


 金髪の魔術師はすぐに(がけ)の上の黒髪の魔術師とリーナに合流(ごうりゅう)し、二人(ふたり)の魔術師はリーナを()かして近くの草場(くさば)に走り、()たせていた馬にリーナを(かか)えて()()ると、一目散(いちもくさん)にその場を(はな)れた。


「しっかり(つか)まっていろ!」


 リーナは馬の上で、金髪の魔術師にしがみついた。リーナを(かか)えた男の手に力がこもった。全速力(ぜんそくりょく)で馬を()けると、やがて遠くに村が見えた。

面白い小説を書きたいと思っています!!

皆様のご感想をよろしくお願いいたします!!


励みになりますので、もし、少しでも面白いと思ってくださった方は、お手数をおかけしますが、

↓ご評価☆☆☆☆☆↓ よろしくお願いいたします!


評価の方はほんの少しで構いません!

ぜひぜひよろしくお願い致します!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ