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竜のいない夜に〜薬師の村娘ですが、高潔の魔術師に溺愛されています〜  作者: 幌あきら
<第1章 : 王都政権交代の裏で> 第3部: 魔術師と薬売り
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10. 恩ある先輩からの人でなしな頼まれごと

 ロベルトとエドワードは王都(おうと)から少し(はな)れた小さな村に来ていた。そして村の中央(ちゅうおう)にある大きな家の前まで来た。


 (もん)(つく)りはしっかりしていたし、屋根(やね)丁寧(ていねい)()いてあって、裕福(ゆうふく)そうな家に見えた。


 しかしなんとなく人の出入りが少ない(さび)しい感じがした。


「ここっぽいな。」


 ロベルトはそう言うと広い敷地(しきち)を見渡した。


 エドワードは()に落ちない顔をしていた。


「あーあ、やな仕事。何でこんなことなってんだっけ?」


仕方(しかた)ないだろう。先輩(せんぱい)大怪我(おおけが)


「いや、そーゆーことじゃなくてさ。何で ()() が!?」


「他にいなかったから」


「だから、そーゆーことじゃなくてさ。俺らがあの女のダンナを()ってんだぜ!?」


「うん。でも彼女に伝えることが、絶対(ぜったい)要件(ようけん)だとのことだから」


「……。おまえ平気(へいき)なのかよ。おまえのその、とりあえずうまくやるってとこ、本当尊敬(そんけい)するわ」


 エドワードは首を()った。


 ロベルトはむっとしたが、エドワードの言うことももっともなので言葉がなかった。


 公務(こうむ)(あし)(うしな)大怪我(おおけが)をしたハンドリーの病室を見舞(みま)ったときのことが思い()かんだ。


 あれはダミアンの()から半年(はんとし)ほど()った(ころ)だった。


 ハンドリーは(もう)(わけ)なさそうなかすれ声で、ダミアンの()をダミアンの(つま)に伝えてくれと言った。


 ロベルトとエドワードはぎょっとして耳を(うたが)った。


 ハンドリーは時間がかかったが、何とかダミアンの(つま)を見つけたこと、 


 別の人にも(かた)(ぱし)から当たったが、(みな)(いそが)しくて(ことわ)られたこと、


 クレッカー長官(ちょうかん)の思い()めた様子などから、大事(だいじ)命令(めいれい)だと思われること、などを心苦(こころぐる)しそうに話した。


 絶対(ぜったい)にロベルトとエドワードには(たの)みたくなかったが、もうおまえたち二人(ふたり)しかいないと頭を下げられた。


 ロベルトとエドワードは自分たちの新人時代(しんじんじだい)に、何度もハンドリーが危険から(かば)ってくれたのを思い出した。


「若いおまえたちにゃさせられねーよ」と(よご)れ仕事も率先(そっせん)してやってくれた。


 そのハンドリーが頭を下げている。


 ロベルトとエドワードは、いつも世話(せわ)になっている先輩(せんぱい)のここまでの(たの)みを(ことわ)ることはできなかったのだった。


 その時、家の中から女が子供を()きながら出てきた。


 続いて出てきた使用人にテキパキと指示を出す様子は、彼女が王都時代(おうとじだい)にキビキビと(はたら)いていた(かん)(のこ)っているように見えた。


 責任感強(せきにんかんつよ)めの表情をしていたが、昔は(つや)やかだった髪は無造作(むぞうさ)に後ろで(たば)ねられ、やつれた顔をしていた。


「いや、ダメだわ、絶対。うまくやるってレベルじゃねーよ。鬼畜(きちく)レベルだ。おたくの(おっと)()にましたって、夫殺(おっところ)した人間に言われるのとか、ありえねえ」


 エドワードは頭を()れた。


「そうだな。こういうシチュエーションって普通謝罪(しゃざい)するときだよな」


謝罪(しゃざい)するか?」


「おまえ、謝罪(しゃざい)も何も、俺たちこの(けん)のこと実際(じっさい)何も聞かされてないだろ」


 ロベルトとエドワードはその女性を呆然(ぼうぜん)(なが)めた。


「何でハンドリーに言われたとき、いける気になって()()っちゃったんだろう。俺たちが(ころ)したって(だま)ってりゃ気付かれないとか、ハンドリーも適当(てきとう)すぎる。そーいう問題じゃねーよ」


 エドワードは髪を()きむしった。


 その時、その女性がふと何気(なにげ)ない目でこちらを見た。そしてその目は一瞬(いっしゅん)(うたが)いの色が浮かんだ。


「しまった」


 二人は(あわ)てて目を()らし、顔を隠すようにしてその場を離れた。


 女の視線(しせん)が背中に()()さるのを感じた。


「エドワード、俺たち一番ダメな感じになってる」


「もう、絶対だめだよな。王都に戻って、ハンドリーに謝ろう。俺らができることじゃねーよ」


 だがロベルトは王都のハンドリーを思い浮かべると、ハンドリーが()(どく)になった。


「……いや、でも、ハンドリーに(あやま)ったってどうしようもない。クレッカー長官の命令は、ダミアンが()んだことをあの人に伝えるってことだよな」


「どーゆー意味」


「ハンドリーも言ってたじゃないか、俺たちが殺したこと気づかれなければいいじゃないか」


「だから、それが鬼畜(きちく)だっつってんだろ!」


「おまえ、(ひと)(ころ)しといて、今更(いまさら)その貞操観念(ていそうかんねん)は何!?」


 ロベルトの言葉にエドワードは言葉が()まった。


「……えっと、ほら、人殺(ひとごろ)しにもあんだろ、いろいろ」


「ないよ、ただの人殺(ひとごろ)しだよ」


「……でもさ、俺らが殺したのは罪人(ざいにん)だろ。あの女は何も悪いことしてない。俺は気が引けるよ」


 エドワードは矛盾(むじゅん)に頭を(かか)えながら、自分の中のわだかまりを整理(せいり)するように(つぶや)いた。


「ロベルト、とりあえず、出直(でなお)させてよ。ちょっと今は気持ちの整理(せいり)がついてないから」


 ロベルトはエドワードのぐちゃぐちゃな胸中(きょうちゅう)を思って、うん、と(うなず)いた。


 こういうのは、エドワードは苦手(にがて)だ。なんとかしなきゃね、とロベルトは思った。

すみません、面白い物語を書きたいと思っています!もしよろしければ、皆様のご感想などよろしくお願いします!!


あと、少しでも面白いと思って下さった方は、お手数をおかけしますが

↓ご評価☆☆☆☆☆↓ の方、ほんの少しで構いませんので!

どうぞよろしくお願いいたします!!


今後の励みになりますので、どうぞよろしくお願いいたします!!

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