1. 王都からの回し者の魔術師
ロベルトとエドワードは古い地方都市へとやってきた。
この二人の魔術師は良い身なりをしていたが、大きな袋を抱え、衣服も汚れていて、王都からの道のりが楽ではなかったことが見て取れた。
ジニア王国も王都となると華やかで人通りの多い賑やかな通りがいくつもあるが、地方都市ともなると石畳の道などはもはや見られない。この街に至っては教会へ続く大通りですら、踏み固められただけの土の道に、店もまばらにしかなかった。
若い二人は恨めしそうに顔を見合わせた。まだせめて賑やかな街であれば、空振りであってもいくらかは楽しめるのに。こんな田舎街では酒場もきっと一、二軒しかないだろう。
二人は王都からいくつも街を訪れながら、人を探してやってきたのだった。そして、この街に来るに前に訪れた街々は全て空振りだった。今度こそ当たりであって欲しい、と二人は強く願っていた。
「ほんと、人探しってラクじゃねーな。もう何ヶ月だよ。やってらんねー」
とエドワードが言った。金髪の長い髪をかき上げる。
「仕方がないだろう。奴らだって見つかったら殺されることを知ってるから潜んでるんだ」
とロベルトが答えた。
「国中でかくれんぼかよ! 俺たちもうずっと地方じゃん!」
とエドワードは嘆いた。
「あーそれな。とにかく片づけるまで帰ってくるなって、ずいぶん雑な命令が下ってるからな」
とロベルトもうんざりした顔で答えた。
「本当、あの時のハンドリーの顔、思い出すだけで腹立つわ……」
エドワードもゲンナリした顔で言った。
そしてエドワードは、「だいじょうぶ、だいじょうぶ、すぐ見つかるって、がんばれよ」と軽い笑顔で手を振った先輩のハンドリーをい思い返して、むしゃくしゃした。
「雑な命令に、雑な励ましだったな」
とロベルトも吐き捨てるように言った。
「だろ〜? あれから数ヶ月、だぜ。あのざっくりとした感覚、恐れ入るわ!」
とエドワードは呻いた。
「そうだな」
ロベルトも頷いた。
ロベルトの艶やかな黒髪も、伸び放題で不揃いになっていた。
「あー、王都に帰りてー!」
エドワードは空を仰いだ。
「まあそう言うな。俺たちだけじゃない。俺ら以外にも討伐隊が出てるらしい。上は、奴らの仲間は、一人たりとも生かしておきたくないんだろう」
ロベルトが淡々と言った。
エドワードは驚いた。
「マジ? どんだけの規模で捜索してんだよ。人遣い惜しげないな!」
「そうだね。通常任務も、人手が足りないだろうな。うまく、王都も回ってるか心配だよ」
とロベルトはため息をついた。
「あー、それだと、王都に残っても地獄って感じ?」
エドワードも、この八方塞がり感にため息をついた。
それからロベルトを見て言った。
「そもそもさ、これ、あんまり気持ちのいい仕事じゃねーじゃん。俺らが派遣されてんのって、あいつらが魔術師だからだろ? 魔術師ってことは魔術管理本部の同僚》のはずじゃん。それを殺れってさ」
「ああ」
とロベルトはぶっきらぼうに答えた。
「なんでヤツらは処刑されなきゃなんないんだ?」
エドワードは聞いた。
「俺が知るわけないだろう」
とロベルトはぶっきらぼうに言った。
「だが、どうせあれだろ。半年前に大臣が死んで、王都中央の体制が大きく変わった。俺たちがやってんのは、ただの旧体制派の残党狩りだろうよ」
ロベルトはため息をついた
「残党狩りって。その残党たちは叛逆でも企んでるのか?」
エドワードはうんざりした顔をした。
「さあ? 何かを、知ってるだけかもよ」
とロベルトは、心底どうでもいい、といった口調で答えた。
「何か、ねえ? 上の連中を含めて、奴らが何を知ってるって言うんだろうな、まったく」
エドワードもめんどくさそうに言った。
ロベルトはそれには何も言わなかったが、「全くだ」といった顔をした。
「長官殿、この政権交代劇で、つまらない陰謀でもかましたのかね?」
エドワードはまた恨めしそうな目に戻った。
「ああ、きっとね。でもやってる本人にしちゃ、大真面目なんじゃないか」
とロベルトは冷ややかに言った。
「それでわざわざ、俺たちみたいな新参者を使うのか。俺たちが、何も知らないと思って」
とエドワードは続けた。
いつの間にか、二人は上官への皮肉合戦になっていた。
「新参者ねえ、ロベルト・ヒアデス。おまえみたいな家系の者が、新参者としてここでやってるなんて、まさか長官殿も思ってもみないだろうな」
とロベルトはニヤリと笑った。
「おまえもだろ」
とロベルトはエドワードを軽く睨む。
エドワードは欠伸をしながら、
「は! いくら政権が変わろうと、俺たちの家系の秘密については、何も変わらないさ」
と言った。
「ああ」
ロベルトは軽く頷いた。
「にしても旧体制派の残党狩りかあ。地味だなあ。俺は中央でさくっと首謀者をやっつける方が向いてる」
とエドワードがまたぼやいた。
「俺は、自分の立場とやるべきことがあるんだ。長官殿のつまらない陰謀? 大歓迎だ。さっさと長官ごと片付けてやるさ」
とロベルトは、淡々と言った。
それから、ロベルトは、
「ま、悪かったな、おまえ巻き込んで」
と、少し申し訳なさそうに言った。
「いや、巻き込まれたとは思ってない」
とエドワードは、それだけを言った。
「でも、人殺しをしなけりゃならない。旧体制派とかいう、本来なら死ななくてもなくてもよい人間を、だ」
とロベルトは低い声で言った。
「それも、分かっての上だ」
とエドワードは無表情で答えた。
ロベルトは、エドワードの言葉に下を向いた。
俺たちは、魔術管理本部 を内側からぶっ潰すために送り込まれた。
俺たちには、ヒアデス、そしてプレアデスの家系の者として、為すべき事がある。
それから真面目な声で
「エドワード、なあ、でも、本当に、本当にこれで良かったのか?」
と訊いた。
エドワードは
「だから、さっきも言ったろ! 俺は、巻き込まれたとは思ってない」
と強い口調で言った。
それから、
「いんだよ、俺は実戦が積めれば何でも良かったんだから」
とエドワードは、わざとめんどくさそうに言った。
「そうか……。俺はとりあえず素直に従う。うまくやる」
とロベルトは言った。
エドワードはロベルトの様子に気づくと、
「そーだね。うまくやろう」
とわざと軽めに言った。
「ところでさ、こんな田舎町なら、そもそも潜伏場的なところも限られてるもんだけど、あの宿屋、怪しくないか?」
ロベルトは一軒の古びた建物を指差した。
「あー。なんか、うっすーい魔力感じるなー。例の残党さんかね? 結構いい魔力だ」
エドワードも頷いた。
二人は顔を見合わせた。
当たり、かもしれないな。
「さてどんな魔術を使う魔術師が隠れているだろうね! 骨のあるヤツだろうか。 腕が鳴るね!」
初めて小説を書きます。面白い物を書けたらいいなと思っています。すみませんが、皆様のご意見ご感想を、どうぞよろしくお願いいたします。
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