9 落下
さて、どうするか。明日の出発を阻止できれば暗殺を阻止できるか。頭に浮かんだ作戦は3つ。1、馬を連れ去る? もし迎えの人が来た場合意味がないな。
2、無理矢理この館にいてもらう。ジュッキス星人になって脅す。それだと悪者になってしまうな。後々面倒なことになるかも。となると3、石橋の破壊。これだな。
翌日。また全員が食堂に集まったのを見計らって石橋の近くへ。さあ、一気にやるぞ。
大きく飛び上がる。雲に触れるくらいまで。そして落下、この勢いで石橋の中心に突進。大きな破壊音とともに石橋は崖の下へ。うまく立ち回り見つからずに石橋の破壊をすることが出来た。
館の屋根へ。食堂の場所に戻る。すると口論が聞こえてきた。
「石橋が!? 冗談じゃない! これから街へ行かないといけないのに!」
「申し訳ありません。しかし、あの頑強な石橋が壊れるとは」
「貴様はまさか私達を閉じ込めて殺そうと考えているのではないだろうな!」
「そんな無茶なことは……」
「こんなところに居られるか! 部屋にこもらせてもらおう!」
怒り心頭のダウップさんは、無茶苦茶なことを言いながら部屋へと。肩を落として泣きそうな館主さん。ごめんなさい、でも人の命がかかっているんだ。
ああ、でも心配だな。おかしなことをしなければいいけど。そうだ、ちょっと確認しに行くか。それに出来れば一つの場所に皆が居てもらったほうが良い。ダウップさんの部屋に行くことに。
(ちっ、このままでは暗殺失敗だ。まあ、儂が部屋に引きこもるってのが合図。じき館主がこの部屋へ来る。そして相談し計画を立て直す。くくく、やつがこちら側だからな、どうとでもなるか。んん、ベッドで寝ていると少々心配ではある。もしかしたらルズエストが気がついて暗殺返しを考えた可能性も。そうだ、このクローゼットの中へっと、ふふ、これでいい。儂をおかしなヤツ、変態と噂する者がいるがこの用心深さが今までこの政治闘争に生き残った強さの根源なのだ。くく、必ず殺してやるぞ、ルズエスト。そして俺が!)
外から中を慎重に覗き見る。あれー? 誰もいないな。時間がない。仕方がないな、そのまま侵入してっと。
(む、何者かが侵入してきた。見ろ! 大当たりだ。これでまた山場を……、嫌な音がする。な、何だーあの化け物は!? ヒッ、ま、前に。扉の取っ手に手をかけた!? みつかったら殺され、ゴプゥ)
はは、こんなところにいるわけ無いよね。取ってから手を話し離れる。うーん、居ないな。一旦食堂に戻ろう。
食堂へ。皆いたが、館主さんは移動しようとしていた。ダウップさんのところへか。ところで、ダウップさんはどこに?
屋根を少し移動したとき、その時屋根の柔らかい部分を踏んでしまい、屋根を突き抜け落下してしまった。
テーブルの真中に落下した俺。
「ギャー!」
「ば、化け物! むぐぅ」
「化け物め!」
護衛長以外皆失神。あちゃー、やってしまった。そして、すぐにまた屋根へ。館から一旦逃げる。結局「2」になってしまったか。まあいい、後は遠くから彼らの動向を見ていればいいだけ。
後日。彼らが館を脱出できたのは3日後の昼。臨時の橋を作ってようやく脱出。それまでは皆広間にひとかたまりになり息を潜めてその場に。監視は楽だったけど悪い事しちゃったな。恐怖で全員顔がひきつっていた。トイレも付添ありで。
なんと暗殺のことが明るみに。しかも首謀者はダウップさんだったとか。そんな悪いことをする人には見えなかったけどな。館主さんも仲間だったとか。人は見かけによらない、か。
それから化け物こと、俺の件だが、護衛長以外は一瞬で失神したからどんな化け物化覚えていない、唯一起きていた彼も恐怖でしっかり俺のことを見ることが出来ていなかったためどんな姿かわからない、といった話をしているとのこと。
誰も俺の姿かたちを覚えていないようだ。ただ化け物が現れたと。あやふやなため、噂話が浮上。変なものでも食べた、館主がなにかやったのではと有耶無耶にできそうな状況になった。本人たちも現在「そうだったかも」といった状態らしい。放っておいても問題無さそうだ。