4 仕事
人間に変身してベッドに入る。この身体でいるととても疲れる。
トラブルもたくさんあったしね。今日はよく眠れそうだ。目を閉じるとあっという間に夢の世界へ。
朝起き朝食を済ませた後、ギルドへ。中は騒々しかった。やはりというか、昨日の件でちょっとした騒ぎになっているようだった。
「どうしたんです?」
「ええ、昨日ギルドに侵入者が。検査機を使ったくらいで何も取られてはいないようですけど」
悪いことをしたな。すみませんと心のなかで彼らに謝った。
さて。気持ちを切り替えてお仕事を。あった、依頼書掲示板。依頼書には仕事の内容が書かれている。ここから好きな仕事を選んで、受付に持っていくと仕事を開始できる。仕事の難易度は1~10、そこから更にC、B、A、Sと難易度がわかれている。10のSが最高難度になる。
とりあえず簡単そうなやつから。1のC。「ヤトト草の入手。アンホム草原に自生している」、よし、これを。受付に持っていき手続きを。ヤトト草はどんなものか絵を見せてくれた。アンホム草原は街のすぐ近くにある草原。魔物も殆ど出ないとか。こうして手続き終了。依頼を受けた。
「初めての依頼でしたね。頑張ってください」
「はい」
応援されると嬉しいものだ。一段と気合が入った。奥から受付の彼女を呼ぶ声が。昨日の件か。本当に申し訳ない。俺はギルドを後にした。
「検査機は治ったんですか?」
「ああ、すぐにな。上限値を超えていただけらしい」
「上限値を!? そんなことがありえるのですか」
「普通はありえない。この検査機で9999まで測ることが出来る。現在最強とされる勇者で500程。人間に限らず最高記録で2000だったかな。まあ、故障だろう。だから侵入者も居なかったのではという話も出ている。なのでこれからしばらくの間、冒険者には検査機を使って異様な数字が出た場合は報告するようにと言っておいてくれ」
「わかりました」
ヤトト草はすぐにみつかった。しかし、一箇所で得られる量は非常に少なかった。
これでは何箇所かで採集しないといけないな。思ったよりも時間がかかりそうだ。ふむ、一番簡単といっても仕事は仕事。お金を得るというのは大変なことなのです。
ヤトト草を探しながら、草原をさまよっていると耳が長く目付きの悪いうさぎのような魔物に遭遇。確か「デッドアイ」という名前だったな。有無を言わさず襲いかかってくるデッドアイ。盾で攻撃を受け、剣で斬ったりして難なく勝利。この辺りで、いや世界一番弱いといっていたな。それから解体すると良いお金になるとか。街には解体所もある。ヤトト草は後少し、よし、コイツは持ち帰るか。
草を集め終え街に戻り解体所へ。
「いらっしゃい。デッドアイの解体だね、お金は取るよ。あんた初心者冒険者かい、簡単だから覚えちまいな。その場で解体は冒険者の基本みたいなもんだ」
解体法を学ぶ。ふむ、簡単だ。「どうせなら他の魔物も見ろ」と言うのでまた後で見に来ることに。
ギルドへ。ヤトト草を受付に提出、見事依頼を達成。まだお昼前、もう1つ受けようかと思ったが解体見学の話を思い出し、依頼は受けずに再度解体所へ。
他の魔物の解体の仕方を見せてもらった。途中昼食を挟んでずっと解体を見ていた。この辺りの魔物なら一通り解体できそうだ。
外に出るとすでに夜。宿へと向かう。
夕食後、部屋に入りお金を勘定する。一番下の依頼でも、宿代とその日の食事代くらいは稼げた。魔物の解体品を売って更に儲かっている。でもそうだな、魔物が襲ってくるからな、危険だから妥当なのかもね。
翌日ギルドへ行くと、ベテラン冒険者が俺に声をかけてきた。
「おう、新人。今日飲みにいかねえか」
「いやぁ、お金がなくて」
「馬鹿言うな、俺がおごるに決まっているだろう。本当は昨日誘おうと思ってたんだけどな、見つからなくてよ」
お言葉に甘えて一緒にお酒を飲むことに。今日は2つ依頼をこなす。終わったのは夕刻時。丁度いいくらいだ。
ベテラン冒険者に声をかける。彼はすでに出来上がっていた。移動中は千鳥足、見ているとハラハラした。他数名の冒険者達と料理屋へ。テーブルに付きお酒が出てきた。
「えー、新人君の初仕事成功を祝って、かんぱーい!」
乾杯をしてお酒をいただく。そうだ、お酒は初体験。あまり飲みすぎるとよくなかったな。とりあえずちびりと飲む。うまい。おぉー、人間はこんなにもうまい飲み物を飲んでいたのか。これでは飲みすぎてしまう人間が居ても仕方がないな。
「踊ります!」
「歌います!」
どんちゃん騒ぎ。冒険者は陽気な人が多いようだ。しかし、こういった雰囲気は好きではある。はは、冒険者になってよかった。
意識を保てるくらいまで飲んで宿に帰宅。今日はとても楽しかった。