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本日三回目の更新です


 時折襲ってくるモンスターを蹴散らしながら、二人は探索を続ける。

 棍棒兎と角兎が複数で現れても二人は狼狽えない。

 お互いの信頼感はその程度のことでは揺るがないのだ。


「ミュール、お願い!」

「任せて! 弱い闇魔法!」


 ミュールの持つ初心者用の杖から闇が放たれる。

 先程と違って塊ではない。

 薄く広く、網のように広がった闇は、三匹の角兎と二匹の棍棒兎を絡め取った。


 弱い闇魔法でも使い方次第で複数の足止めも可能だ。

 しかし、これは経験の少ない冒険者では中々出来る者はいない。

 経験が少なくとも、ミュールは確かな才能を持っていた。


「ピィ!」

「ピー!」

「ピギギ!」

「むむー、後はお願い!」

「任された!」


 兎達は闇の網を引き千切ろうと暴れる。

 ところどころ解れそうになるが、ミュールは魔力を込めて補修する。

 ミュールは網を維持するだけで精一杯だ。


 ミュールから後を託されたエルティが張り切って飛び出していく。

 動きの鈍った兎達では、軽戦士であるエルティの動きに対応することは出来ない。

 一匹、また一匹と仕留められていく。


 勿論素早く倒せる訳ではない。

 黒い塊よりも拘束力の弱い闇の網では、動きを完全には抑え込めない。

 そして、自前の魔法を使って威力を上げても暴れる兎を素早く倒すことは、駆け出しのエルティにはまだ難しい。

 一匹につき何度も何度も刺してようやく倒す。


 ミュールの踏ん張りで、全ての兎を安全に倒すことが出来た。


「ふぅー、ちょっと疲れちゃった」

「ありがとね、ミュールのお陰で無様に逃げなくって済むわ。ほら、少し休みましょ」

「うん」

「警戒は任せてちょうだい」


 魔力のほとんどを使い切ったミュールが息を吐く。

 少し開けた場所へ移動した後、エルティが休みを提案し、二人揃って座り込む。

 エルティは弱い風魔法を唱える。

 使える魔法はそう多くない。


 武器に風の魔法を纏わせて攻撃の威力と射程を少しだけ伸ばす≪風刃≫。

 周囲の敵の接近を知らせる≪風の囁き≫。

 この二種だけだ。

 魔力もそう多くないため、普段はあまり使わない。

 ここぞという時だけだ。


 ミュールをしっかり休ませる為に、エルティは≪風の囁き≫を発動した。

 しかし、当のミュールは周囲の様子を窺っている。

 エルティは気を遣ってしまう自分の相方を見てつい笑ってしまった。


「え、どうしたの?」

「もう、いつも言ってるでしょ。魔力が回復するまで休むのが貴女の仕事だって」

「で、でも、私ばっかり休むのも悪い気がして」

「はぁ、アンタも頑固ね。アタシ一人じゃあの数相手に安全に戦えないわ。だからしっかり誇ってしっかり休みなさい」

「でもやっぱり」

「い、い、か、ら、休みなさい! 助かってるし感謝してるんだからね。その分働かないとアタシが納得いかないのよ」

「うん、分かった。ありがとうエルティちゃん!」

「どういたしまして? 何か違う気がするわ……」


 二人の駆け出し冒険者は和やかに談笑する。

 魔力を回復するには、ざっくり分けると二つの方法が挙げられる。

 休むか、アイテムを使用する。

 

 お金に乏しい駆け出し冒険者にそんな余裕はない。

 魔力を使い過ぎた時は休憩をするのが二人の日課である。

 エルティの魔法の範囲はそこまで広くない。

 しかし、この森に出るモンスター程度であれば充分に有用だ。

 お陰で二人は和やかに休むことが出来る。


 しかし、その魔法が二人に迫る脅威を伝えた。


「っ!?」

「エルティちゃん? どうしたの?」


 エルティは突然の感覚に立ち上がった。

 ≪風の囁き≫が運んできたのは初めての威圧感だった。


「何か来る」

「兎じゃないの?」

「この感じは多分違う――、移動するわよ!」

「う、うん!」


 エルティの慌てた様子に、呑気なミュールも何かを察した。

 素直に立ち上がる。

 二人は念の為、いつでも移動出来るように備えていた。

 立ち上がればそのまま走り出すことができる。


「っ、まさか、早すぎる!?」

「えっ」

「ミュール、こっち!」

「うん!」


 バキバキバキィ!!


 草木を突き破って飛び出してきたのは≪ツヨイグリズリーベア≫だ!

 普段は森の奥深くに潜むと言われている凶暴なモンスターが、更に進化した上位種だ。

 微かに漂う血の興奮した姿はまさにモンスター!

 駆け出しの冒険者が敵う相手ではない!



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