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本日二回目の更新です。


 タケオがミュールの呪いを解いてから二日後、エルティはミュールとパーティーを組んでいた。

 大事をとって丸一日寝て過ごして復帰したミュールを、エルティが見つけて誘ったのだ。

 恩を感じていたミュールは快諾。

 年も近く性別も同じ。

 性格も上手くかみ合ったことで、すぐに仲良くなった。

 一週間が過ぎる頃には、親友のようになっていた。


「こっちこっち!」

「待ってよエルティちゃん、早いよー!」

「ミュールが遅いのよ。キリキリ歩きなさい!」


 いつも通りギルドで待ち合わせて、依頼を確認する。

 エルティが軽戦士でミュールは魔法使い。

 バランスとしては悪くは無い。

 が、駆け出し冒険者の二人にまだそこまで気にする必要はない。


「今日はどの依頼にしよっか」

「そうね……そろそろ落し物を探す依頼は飽きてきたわ」

「そうだね。でも私達で受けられる依頼あるかなぁ」


 冒険者とは、なんでも屋である。

 モンスターを討伐したり、危険なダンジョンを探索したり。

 そういう依頼も勿論ある。

 しかし、ついでとばかりに様々な依頼が持ち込まれる場所でもあるのだ。

 素材の採取はまだ良い方で、子供のお世話や部屋の掃除等多岐に渡る。


 駆け出し冒険者は基本的に難度の低い依頼からこなしていくことになる。

 危険のある依頼はある程度経験のある冒険者しか受けることが出来ないのだ。


「ミュールがホネダラケ墓地に行きたがらないからじゃないの。これだけはいつも貼ってあるのに」

「だって、タケオさんが行かない方がいいって言った……ような気がして」

「気のせいじゃないの? もうすっかり身体の調子は良いんでしょ?」

「うーん……うん、身体はすっかり元気だよ! タケオさんとエルティちゃんのおかげで!」

「別に、アタシは何もしてないわよ。ってちょっと、こんなところでくっつかないでよ、こらっ」


 ミュールが嬉しそうにエルティの腕に抱き着く。

 エルティは口では拒絶しながらも、強引に引きはがそうとはしない。

 顔も綻んでいる。

 内心、喜んでいるし照れてもいるだけである。


 二人の少女のやりとりに、周囲の冒険者は少し心が和らいだ。

 王都の冒険者ギルドでは、駆け出し冒険者は守り育てていくものだという方針を打ち出している。

 冒険者もマナーが良く、駆け出しに絡むようなことはしない。

 あまりに理不尽なことをすると粛清されてしまうのだ。


「あ、これなんてどうかな。満月草の採取だって」

「確かに良さそうね。メノマエノ森ならモンスターも弱いし。それじゃあ行きましょう!」

「ああっ、エルティちゃん置いていかないでー!」


 エルエィは意気揚々と街の外へ向かう。

 足取りは軽くテンポも早い。

 ミュールは慌てて追いかける。


 メノマエノ森は王都ドマンナカにほど近い。

 獣はいるが、危険なモンスターはそう多くない。

 角を向けて突っ込んでくる≪角兎≫、棍棒を持って迫ってくる≪棍棒兎≫が主なモンスターである。

 この二種はそこまで強くない。

 駆け出し冒険者が一対一で戦ってもそう負けることはない。


 奥地に潜むという≪グリズリーベア≫はそれなりに強いが、ほとんど表へ出てこない。


「着いたわ! さぁ、ちゃきちゃき採るわよ!」

「エルティちゃん早すぎるよ~!」

「依頼は待ってくれないのよ! さぁ早く!」

「満月草は逃げないよー」


 この森にはそれなりに素材となる植物が生えている。

 戦闘力の全く無い研究者達は自分で採りに行くことが出来ない為、安く済む駆け出し冒険者を狙って依頼を出す。

 その為、駆け出し冒険者達はそれなりに助かっている。

 勿論、ホネダラケ墓地よりもタイミングは限られるのだが。


 ガサガサ。


「ミュール、何かいるわ!」

「うん!」


 満月草を探す二人の前に、棍棒を持った一匹の兎が現れた。

 二足歩行する、可愛らしい兎だ。

 荒く切り出した太い木の棒を持った、可愛い兎だ!


「あいっかわらず可愛くないわね。やるわよ!」

「任せて!」


 二人の連携は、組んで一週間にしては悪くない。

 駆け出し冒険者が苦戦しないモンスター程度では苦戦しない。

 エルティが棍棒を弾き上げて、一度距離を取る。


「弱い闇魔法!」

「ピィ!?」

「ナイス! いくわよ!」


 ミュールの放った黒い塊が棍棒兎に纏わりつく。

 驚きの声をあげて兎の動きが止まる。

 隙をついてエルティが飛び掛かる。

 もがく棍棒兎のがら空きの胴体へエルティの短剣が突き刺さった。


「ピギィ!!」

「もう一発!」


 エルティは短剣を引き抜いて、もう一度突き出した。

 痛みと身動きの出来ない状況に混乱していた棍棒兎に防ぐ術はない。

 喉に刺さった短剣は、棍棒兎の命を奪い去った。

 


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