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本日一回目の更新です。
エルティを貧民街の入り口まで送ったタケオは、一人でホネダラケ墓地へと向かった。
タケオはとある依頼でこの街を訪れていたのだ。
それは、ホネダラケ墓地で不審な死に方をした冒険者がいたという事件を調べる依頼だ。
特に指名された訳でもないが、タケオの持つすごい勘が、受けるべきだと言ったのだ。
そして街に到着したタケオだったが、濃密な死の気配を感じて貧民街に向かったところで、エルティと出会った。
そして行き着いたミュールには、強い死の呪いがかかっていた。
魔力的な抵抗の強い者でも即座に殺してしまうだけの、強い呪いである。
タケオは、ミュールが呪いにかかったのは事故ではないと考えていた。
あの呪いにかかっても死なずに二日も生きていたというのは、耐性が高いか、相性が良いかのどちらかだとタケオは考えたのだ。
そうしてホネダラケ墓地へとやって来たのだが、至って普通の墓地だった。
確かに死の気配を感じてはいたが、王都最大の墓地だ。
死の気配が相応に濃いのは当然のことだった。
しかし、タケオの感知能力はすごい。
隠れている怪しい者の気配を逃しはしない。
真っ直ぐ奥へ向かうと、幾本もの槍のようなものが墓から放たれた。
タケオが通り過ぎ、背中を向けた瞬間にだ!
キキキキン!!
タケオは剣をすごい速さで振るい、全ての槍を弾き落とした。
それは鋭く尖った骨だった。
タケオは視線を正面から逸らさない。
ただ真っ直ぐ睨みつける。
「まさか私の居場所がばれるとは死ねい!!」
ドパン!!
それは罠だった!
タケオの踏みしめる地面から無数の骨が飛び出した!
突如出現した地獄の檻は、タケオの肉体を貫いて絡め取る地獄の檻となる。
はずがない!!
――パキ、ビキビキビキ!!
「なにぃ!? 馬鹿な、何故砕ける!?」
カルシウム満天強度バツグンのはずの骨はタケオの一歩に合わせて砕け散った。
タケオのすごい筋力の前ではこの程度の骨など骨粗鬆症も同然である!!
勿論、タケオにダメージなど≪あぶみ骨≫の欠片程も存在しない!!
「し、しかも無傷だとぉ!? 何故だぁ!?」
墓場に潜んでいた死霊使いホラースキーは狼狽えた。
自慢の骨が全く通用しない相手など、想定していなかったのだ。
タケオはゆっくりと歩みながら剣を構えた。
「俺は、すごいからな」
その剣に乗るのは殺気。
タケオは正義の味方ではない。
悪人を捌く者ではない。
大義名分などない。
ただ、自分の中の正義を守る為に戦う。
具体的には、誰もが上手い飯が食える世界。
それだけである!!
「ふんっ、私は≪すごい≫魔法を二つ習得している。貴様なんぞに負ける筈がない!」
ホラースキーの全身から暗黒のオーラが立ち上る。
それは≪すごい死霊魔法≫の余波だった。
常人なら触れただけで死ぬ波動が墓場に満ちる。
しかし、タケオから迸る光が闇を掻き消した!!
「な、何ぃ!? 私の闇が、何故!?」
「俺は≪すごくすごい≫魔法を使える」
「まさか!? あの、≪すごくすごい≫魔法を!?」
≪すごくすごい≫魔法とは、すごくすごい魔法である。
すごい魔法の上位に位置するすごくすごい魔法は、すごくすごい。
どれくらい凄いかと言うと、すごくすごい!!
「負ける筈がない! 死ねぇ!」
「さらばだ」
「げぶにぁふっ!?」
すごい死霊魔法ごと、タケオのすごくすごい時空魔法がホラースキーを次元の彼方へ葬り去った。
ホラースキーが上位アンデッドと化しており、不死の特性を持つことに気付いたタケオは、無限の時の牢獄へと放り込んだのだ。
タケオはホラースキーのいなくなった墓場を探索した。
すぐに発見した拠点には、様々な資料や実験に使われたもの達が散乱していた。
行方不明になっている冒険者のものと思われる装備も転がっていた。
タケオはあまり賢くはない。
詳しい調査はギルドに任せることにして、ホラースキーの手が入った危険物の処理だけを片づけていく。
広大なホネダラケ墓地の各所に設置された怪しい魔道具と、手なづけられたアンデッド。
その全てを短時間で全て破壊した!!
ついでに結界を更に強力なものへ上書きしようとしたが、止めた。
墓地の管理者に、維持が出来ないからやめてくれと言われてしまったのだ。
原因は排除したから問題ない。そう判断したタケオは言う通りにした。
会話をするのが苦手なだけで、協調性を大事にしているタケオは人の意見にも素直に頷くことが出来る。
しかし、タケオはすごいうっかりでもあった。
大事な場面で大事なものを見落とす事が多々あった。
うっかりで世界が滅びかけたことも、何度かある。
その度に自分で尻拭いが出来るからこそ、タケオはすごい!!
そもそも、タケオ程すごいからこそ、うっかりすると世界が滅ぶような案件に関わっているのだから。




