表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/12

本日三回目の更新です。


 王都ドマンナカのとある路地。

 貧民街と呼ばれる場所なだけあって治安は良くない。


 そんな場所を、一人の女冒険者が走っていた。

 駆け出しらしく、安物の装備は新しい。

 彼女の後ろにはガラの悪い男が二人、追いかけていた。


「はぁ、はぁ……!」

「ひひっ、待ちなってー!」

「怖がらなくても悪いようにはしねぇからよぉ!!」


 やがて女冒険者は行き止まりへと追い込まれてしまった。

 戻ろうにも、もう男達との距離はそれほど空いていなかった。


「やっと追い詰めたぜ、ひひひ」

「げへ、ちょっと気持ちいいことするだけだからよぉ」

「ひっ……! く、来るんじゃないわよ!」


 にじり寄る二人組に気おされて、女冒険者は後ろへ下がった。

 背中が壁に押しつけられる。

 逃げ場がないことを再認識した女は、腰の短剣を抜いた。


 しかし、二人の男は全く怯まない。

 目の前の獲物をどう綾里するか、その事しか考えていない。

 何故なら、女冒険者の腕前が大したことないと、ばれてしまっているからだ。


 逃げる時も短剣を構える時も、二人の男はしっかりと動きを見ている。

 震えながら武器を構えたところで、弱さを教える以上の意味はないのだ。


「はい捕まえたー!」

「ひぃっ」


 突き出した腕を男が掴んだ。

 そのまま捻りあげられて短剣が地面に落ちる。

 唯一の心の支えを失った女冒険者の口から悲鳴が零れる。


 冒険者といえど女。

 そして駆け出しの彼女に男を振りほどく程の力は持っていなかった。


「た、助けて! 誰か――!!」

「へっ、こんなスラム街の奥に逃げておいて助けなんて来る訳ねぇだろ」

「いいや、来るさ」

「へっ?」


 ガラの悪い男の呟きに答えたのは、派手な鎧を来た男だった。

 金や銀、緑に茶色。赤があれば青もある。

 色とりどりの鎧はすごく派手だった。


 男は高い壁を乗り越えて女冒険者の隣に降り立った。

 同時に女冒険者の腕を捻りあげていたガラの悪い男が崩れ落ちる。

 派手な男のすごい早業が、一瞬にして意識を刈り取ったのだ!!


「なっ、お前、何をした!? っていうかすっげぇだせぇ!! なんだお前はよぉ!」

「俺か? 俺はタケオ。すごい冒険者だ」

「このクソがぁ!! う――」


 ガラの悪い男はナイフを手に突進した。

 タケオは一切動じない。

 すごい速さでナイフをいなして男の首筋に指を当てる。

 男は意識を失って倒れこんだ。

 

 首の神経に微弱な魔力を流し意識を刈り取る、すごく繊細な技術を要するすごい技なのだ!


「あっ、助けてくれてありがとう。助けが来るなんて思わなかったから、ほんとに助かったわ」

「気にするな。俺はすごいからな」

「あ、そう。……変な格好の割に強いのね」

「俺はすごいからな」

「アタシはエルティ、よろしくね」


 エルティは短剣を拾って腰に戻した。

 まだ真新しく、使われた様子の無い短剣だった。

 タケオの台詞に呆れ、半ば無視して名乗った。

 そんな様子をタケオはじっと見ていた。


「で、こんなところで何をしていたんだ?」

「ギルドの依頼を受けたんだけど、依頼人の家が貧民街だったのよ。そこに向かう途中でこいつらに追いかけられたってわけ」

「そうか。貧民街を出るなら送って行くが」

「有難いけど、まだ依頼も受けてないし依頼人の家に行かなくっちゃ。途中までお言葉に甘えるのはありかしら?」

「ありだな」

「じゃあそれでお願い」


 人付き合いがすごく苦手なタケオだったが、エルティは逆に誰にでも気さくにいけるタイプだった。

 ぶっきらぼうに思える言葉も、不快に思わず受け止める。

 思ったことをそのまま正直に話す。

 人によっては苦手なタイプだ。

 少なくとも、タケオにとっては話がしやすかった。



 


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ