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本日一回目の投稿です。
今日と明日で完結まで行きます。
夜。
王都ドマンナカの、とある酒場。
冒険者が集うその場所に、一人の男がいた。
赤に青に金と銀。≪カラフル≫という概念をそのまま鎧にしたようなものを着こんでいる。
すごく派手だ。
他の冒険者は遠巻きに男を見ては視線を逸らす。
男は有名人だった。
誰も彼もがこう噂する。
≪すごい冒険者≫だ、と。
ただ、この場では本物かどうかを静かに囁き合っていた。
バーン!!
扉が勢いよく開いた。
一人の小太りの男が酒場へ飛び込んで来た。
息も絶え絶えで汗もすごい。
必死に走ってきたのは誰の眼にも明らかだった。
「はっ、はぁっ、大変だ! ホネダラケ墓地から大量のアンデッドが溢れ出したらしい!」
小太りの男の言葉に酒場が騒然とする。
ホネダラケ墓地は王都で8割のシェアを誇る最大級の墓地だ。
勿論、アンデッドが発生しないよう強力な結界が幾重にも施されている。
そんな場所からアンデッドが発生するとなればただごとではない。
「はぁ、んぐっ、今墓守の生き残りがギルドの方に駆け込んできたんだ! 討伐の緊急クエストが発行される筈だ! 頼む、皆来てくれ!」
続く言葉に、冒険者達は慌てて支度を始めた。
討伐に参加するにしても逃げるにしても、のんびりしている場合ではない。
その中で、すごく派手な男は一人酒を飲んでいた。
「諸君、集まってもらって感謝する! アンデッド共はまだ墓地に留まっているが時間が無い、手短に説明するぞ!」
ギルドマスターは集まった冒険者へ状況の説明を行った。
それは、すごく悪い内容だった。
「スケルトンとツヨイスケルトンが二万以上!?」
「ツヨイリッチも数千いて、スケルトンキングやデスロードの姿も確認された!?」
「そんなのどうにかなるのかよ!!」
冒険者は皆絶望していた。
数が多いだけじゃなく、強力なモンスターも多数確認されたからだ。
しかも、この情報を得る為だけに、ギルド側が把握している今王都に滞在している中で最高ランクの冒険者パーティーが犠牲になった。
偵察に送り出して斥候だけが瀕死で帰りついたのだ。
しかも、情報を渡した後すぐに力尽きている。
その事実も、冒険者達を恐怖させるには充分だった。
「あの≪雷鳴の剣≫が偵察に行って全滅するような場所に行けるか!」
「ここも終わりだな。ずらかろうぜ!」
冒険者達は我先にと逃げ出そうとした。
しかし、入口からやってきた男を見て足を止めた。
自然と避けて道が出来上がる。
その男はすごく派手な鎧を来た冒険者、タケオ・スッゲーゼだった。
「俺が行こう」
遂にアンデッドの軍勢が進軍を開始した。
膨れ上がった規模は総数四万にも及んでいた。
正に死の軍勢。
立ち向かうは騎士と冒険者の連合軍。
向かってくる死を前に、誰もが怯えていた。
もう魔法の届く距離にまでスケルトンが迫っている。
しかし、誰も動かない。否、動けない。
指揮するはずの騎士団長ですら、襲い来る恐怖から逃げ出さないようにするだけで精一杯だった。
タケオが颯爽と前へ出る。
「あの程度のアンデッドなど、恐れることはない! 魔法部隊、放て!」
タケオの号令により、魔法が放たれる。
タケオのすごい精神力は死の軍勢を前にしても少しも揺らがない。
連合軍の魔法がアンデッドの群れに着弾する。
風が舞い、炎が巻き上がるが後続は途切れない。
タケオのすごい魔法が解き放たれた。
それはすごい威力で、直径100mの範囲のアンデッドを消滅させた。
「すごい、なんだあの威力は!」
「これが伝説の冒険者の力・・・なんてすごいんだ!!」
ドンドンドンド!!
次々に魔法が放たれていく。
ドンドンドンドンドン!!
見る見るうちにアンデッドの数が減っていく。
タケオのすごい魔法でアンデッドの隊列はもう穴だらけだった。
隙間だらけのスケルトンの隙間から、半透明の襤褸切れを纏った何かが無数に現れた。
ツヨイリッチだ!
ツヨイリッチはリッチが強くなった上位種だ。
得意の魔法がもっと得意になって、その威力は強い。
ツヨイリッチ達が一斉に魔法を放つ。
炎や雷撃が連合軍を襲う。
「うわああああああああああ……あれ?」
「――なんともないぞ?」
「あ、あれを見ろ!」
タケオが、迫る魔法の全てを一本の剣で叩き落としていた。
すごい反射速度とすごい身体能力が合わされば、防げない攻撃はない。
それどころか、魔法を防ぐ合間にすごい魔法を放っていく。
「「「ギイヤアアアアアアアアアア……」」」
魔法の得意なツヨイリッチでも、タケオのすごい魔法を食らってはひとたまりもなかった。
すごい勢いで吹き飛んで、すごい勢いで減っていく。
「すごい! すごすぎる!」
「なんて強さだ! あれが≪すごい≫の二つ名を持つSSSランク冒険者、スッゲーゼか!」




