表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
家族内ランクE~とある乙女ゲー悪役令嬢、市民堕ちで逃亡します~  作者: うるいあ
3章 平民の実習期間

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

57/60

56 今後の予定と急

「総教会に戻るのは明後日にしよう。

 僕達の仕事は一段落ついたよ。ドリムイ様に報告しないといけない。

 サラさんは、名付けの儀式、魔力の再測定、今後の受け入れ先の確認ってところだね」


ヨーイ君たちに割り当てられた部屋で、今後の予定を告げられた。


「了解しました」


び、と敬礼の形をとる。

外は暗く、部屋の明かりも最低限だ。とはいえ、台所と違って白い光が隅々まで渡っている。魔石を使っているんだ。


「にしても、サラさんに魔力があったなんてね」

「私も驚きました」

「教会の選定の儀式には参加したんだよね?」


頷く。

しましたとも。そこで「魔力なし」の判定受けて朝に冷たい水かけられたり、食事制限されたり、一晩中女神様に祈るために部屋に閉じ込められたりしたよ、総教会で。

今はしてないんだよね、あれは虐待だと思うから、その方がいい。


「年齢を経て発露、って言う可能性もあるのか……」

「いいえ。あの頃から私の魔力は変わっていないと思います」


母親の精霊の加護と言う名の束縛から逃れて、確かにスムーズにはなったけれど、その前から初級の魔法は使えました。

言い切ったら、微妙な沈黙が流れる。ヨーイ君、スタ君、テル君、みんな苦い顔をしている。

私の主張は、「教会が間違えたんじゃないですかね?」ということだから、修道士三人組が苦い顔をするのは当たり前だろう。


「五歳の頃、半年ほど教会で身を清める生活を送りました」

「――ふうん。

 その時、どういう人が対応したか覚えてる?」


スタ君の、少年故に高い声が低く響く。丁寧に聞くその様子がちょっと怖い。


「白髪のお年を召した女の方、だったのは憶えていますけれど……名前までは」


ふう、とため息の後、スタ君は顎をつき、ヨーイ君は頭を抱えた。


「嫌な予感が……」

「俺も」


テル君はテーブルを見つめている。


「テル?」


会話に参加しないままのテル君を訝しがって、ヨーイ君が声をかけた。


「なんで、かばったんだ?」


目も合わさないまま、そう急に言われて理解できなかった。

かばった? ――私誰か、かばったっけ? テルくんの目の前で?


「ネネル……ちゃん?」


午前中の図書館の時だろうか。

思い当たることがそれしかないけれど、なぜ、と理由を求められることじゃない。戸惑って他の二人を見るけれど、二人も困惑してテル君を見ている。


「……獣人、だろ」


低くて重い声。

その言葉にカチンとくる。


「それがなんだって言うの。

 あんな言い方酷いわ。

 テル君だって、傍にいたら同じことをしたでしょう」


と、同時に図書館の職員に警吏を呼ぶよう連絡したはずだ。


「それは……そう、だけど」


テル君は、テーブルを見たまま目を泳がせる。ふるふると首を小さく振るので、ふわふわの癖っ毛が揺れた。眼鏡に光が反射する。


「獣人については、書籍や講義でしか触れたことはなかったから、意識しなかったけれど、『差別』が根強いのね。ネネルちゃんと仲のいい子どもたちですら、時々特徴をからかうもの」


私の周囲にいたのは獣人オネエの最低野郎だし、――もう一人っていうかグループの人たちは、何も言わなかった。きっと、無意識で繰り返した私の無礼を許してくれたんだろう。孤児院の訪問で出会わなかったのは、今思えば隠されていたのかもしれない。


「あんなことしても、好きな子の気は引けないのに」


よくよく見ていると、からかっている子どもたちは、ネネルちゃんのこと気にかけてるんだよね。ネネルちゃんは外見はまんま獣人だけど、お母さんは人族だったらしい。本来、獣人は筋力・体力に秀でているはずなんだけど、ネネルちゃんはまだ、なのか本来、なのか人族の要素が強いのかあまり運動が得意じゃないという。洗濯物が持てなかったり、皆で一声作業の時もひとり遅かったりする。そういう時に、絶対フォローに入ってくれはするんだよね、で、照れ隠しにからかっちゃう、って感じ。


「暴言を」


ぽつり、テル君の口が動いた。


「深淵の森の領主に、暴言を、言ったって」



『やだぁ、そんなに怒ると皺だらけになっちゃうわよぉ』



深淵の森の領主は、攻略対象の一人だ。

女の子たちに囲まれて、おしゃれ談義に花を咲かせる。キャットファイトの仲裁をしては、耳をピンとさせてニコニコと微笑んで――獣人で、オネエのあいつ。茶色に黄色メッシュ、金色の目の、ルジェルガ。

思い出すだけで腹が立つ。

と、同時にそれが筋違いだとも、今は思っている。


「もしあいつが」


少女の中に、見知った顔を思い出す。

戸惑って、それでも最後には優しく微笑んだ。

泣きはらして、倒れ込んだあの子。


『ユーフェミア様、私――私は、どうすればよいのでしょう。

どうすれば』


消え入りそうに、それでも前を向いたあの子。


「アレが、人族でも、婚約者でも、教師でも、――王様だって、私は許さないわ」


絶対に、許さない。

誰に許されても――あの子が、私を裏切ることで、何を得たとしても。



『貴方は最低の人間よ、獣だわ』



憤りにまかせて睨みつけて叫んだ。落ち着けばそんな言葉言わなかったのかもしれない。でも色々うまく行っていない中で、起こったことだったから。


「言ったことは取り消さないわ」


全ては秘密になったんだろう。

当事者同士が納得した以上、私はもう何も言わない。そもそも言う資格があったのかもわからない。

ただ、あいつへの憤りだけは、ちゃんと胸に持っていく。

それが私の、決着の付け方だ。




「テル君は、私が何を言ったか知っているのね」


びく、と体が動いた。

ま、なんだかんだ浸透しつつある『爆誕平民の星アリアたんとうつくしの王子様――スパイスは悪役令嬢』だからね。ここ一週間は、子どもたちのままごとにも取り入れられている。悪役令嬢役も、もちろんルーティーンで回ってくる。とりあえず地響きを起こして『ワタクシを倒すなら、奥義・回転真技を身に着けてからにしていらっしゃい!』とか言ってチャンバラごっこに移行させてたら、悪役令嬢が魔王っていう独自の設定が加わってしまった。冒険に出たり、アリア役の子が不治の病に陥ったりして大筋からズレにズレて、私もダメージを受けることなく、楽しく参加してます。ありがとう教会の子どもたち。

そもそも最初に会った時の『童話の魔女』の発言からしても、テル君をはじめ総教会の人には状況が漏れていたみたいだし、テル君が学園内の私の言動を知っているのは仕方がない。

ユーフェミアの言葉や、行動の一部分を切り取れば――そしてアリアを擁護するために物語を作り上げるつもりならば――立派に悪役になる要素を持っている。

そういう意味で、私に敵意を向けてたのかな、と思うと悲しい。でも、今のテル君は私の荷物も持ってくれるし、心配してくれる。なら、嬉しい。

それでいいかな、とのんきに納得して笑顔を向けると。


「ごめんなさい」


急にテル君が謝った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ